くぼしん

経済学史を専門とする大学教員。神戸在住でビール好き。

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マガジン

  • マルサス『初版人口論』輪読ノート

    • 19本

    とある大学の経済学部のゼミで、マルサス『人口論』(光文社古典新訳文庫、斉藤悦則訳、2011)を輪読しています。このマガジンはその記録です。なお、写真は、マルサスが学んだイギリスはケンブリッジ大学の風景(コロナ禍前の2019年に撮影)です。

最近の記事

第02章

第2章では著者は、人口は等比級数、生活物資は等差級数的であるとした前提を検証し、その抑制方法を考察している。 人口と食糧の増加率の違い(pp.33-38) 早婚によるデメリットが一切なく、早婚が全く抑制されない国はない。つまりどんな国も人口が増加する事を野放しに許容していたわけではない。反対に抑制がなされなければ今までの増加率を超えて増加し続けるとしている。そして人口に影響を及ぼす悪徳[→不倫、と言っても現代的な意味での不倫ではなく、婚前の性交渉を含む]が殆ど存在しない社

    • 第01章

      第1章では、意見の対立する二つの立場の解説と筆者の主張の概要が述べられている。 意見対立のせいで問題の解決が難しいこと(pp.23-25) 人類は変化の時期[具体的に?→フランス革命]に差し掛かっているが、その中で大きな問題で意見の対立がある。1つ目は、人間はこれから無限の改善に向かって進歩するだろうというもの、2つ目は、幸せと不幸せの間を無限に往復するのが世の定めであり、どんなに努力してもゴールへはたどり着けないというものである。 皆苦しくて現状の解消を求めているが、

      • 序文

        序文で作者は本書を書くこととなった経緯と願いを書いている。 本書はマルサス自身の考えを友人と語り合っていた時に表現しきれなかった部分を紙にまとめて伝えようとしたのが経緯である。 本書では人口は常に生活物資の水準に押しとどめられると述べている。しかし、その生活物資の水準をとどめる方法は研究されてこなかった。マルサスはそこに着目し、その難しい問題への見解が将来の有能な人の目に留まり、たとえ自らの論理が覆されようと、社会が改善する事を願うものになっている。 以上

        • 『初版人口論』訳文について

          マルサスの『初版人口論』(1798)には、いくつかの訳があるが、入手のしやすさと訳文の平明さから、輪読では『人口論』(斉藤悦則訳、光文社古典試訳文庫、2011)を使用する。個人的には、『初版 人口の原理』(高野岩三郎・大内兵衛訳、岩波文庫、1962)の硬質な訳文も好きだが、品切れである。中公文庫の『人口論』(永井義雄訳、2019、未見)は、1973年版の「改版」だそうだが、後者はさらに『世界の名著シリーズ』に収められたものである。 英文は『マルサス全集』(_The Work

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