無題

人口よりも「つながり」が大切。「関係人口」について考える。

本日は、「観光以上、移住未満」がキャッチフレーズになっている「関係人口」について、お話をしたいと思います。夫は2年半ほど前に、福井県鯖江市が実験的に行った「ゆるい移住」プロジェクトに参加しました。

このプロジェクトの特徴は「目的がない」ことです。従来の移住促進事業は、農業や地場産業へ従事するなどの、何かしらの目的があるものでした。その背景には、人口が減って困っている、田舎に働き手がほしいという想いがあるからでしょう。

しかし、ゆるい移住には、そのような目的がなく、市内にある住宅(約75㎡ 3LDK × 2戸)を半年間家賃無料で貸し出すので、好きなようにしてくださいというプロジェクトでした。一見すると魅力的なプロジェクトに思えますが、参加するとなると話は別です。何しろ、わざわざ鯖江に行く目的がないのですから。都市で不自由なく生活しているほうが快適です。

それにも関わらず、このプロジェクトには男女17名が参加、滞在期間や日数もゆるかったので、鯖江にいる期間は「1カ月だけ」「週末だけ」などバラバラで、ゆるい移住後も7名が鯖江に残りました。夫も移住こそしませんでしたが、いまでも「第二のふるさと(ゆるさと)」として、定期的に鯖江を訪れる関係ができました。まさに「関係人口」になったわけです。

ゆるい移住に関しては、ブロガーのしおりんさんが参加者目線でブログ(ゆるブロ)を書いていますので、ぜひ読んでみてください。都会女子の目線に映った、地方の良さ・悪さを発見できる素直なブログです。商売でやっている記者さんには書けません(笑)

○「ソトコト」で満足してはいけない。

鯖江にいるときには「地方創生」が叫ばれており、よくテレビや新聞の取材を受けました。福井県のテレビは2ちゃんねるしかないんですね(笑)表ちゃんねるが「福井テレビ」で、裏ちゃんねるが「NHK」だと教えてもらいました。それ以外は、「ジャミジャミ」といって砂嵐なわけです(笑)

実際には、CATVが普及していたりして、不自由なく生活しているのですが、2ちゃんねるしかないテレビに、何かノスタルジックな親しみを感じました。最近、妻から「不便益」という言葉を教えてもらいました。なるほど、あの時感じたのは不便益だったのだなと、気づきました。

おもしろかったのは、取材を受けたことがテレビで流れると、当事者は全員そろって、「なんでやねん!」ってなるんですね(笑)そして、友人や家族からガンガン電話がかかってくる(笑)

「夕食のときに放送されたから、茶、吹いたわ!
 なんで、鯖江におるねん。」
「なんでやろ。よくわからん。なんとなく楽しいから?」

テレビで放送されることと、実際の鯖江での生活することは違う。テレビで放送されることには嘘がある。そう思える。真実ではない。でも、「ソトコト」を読むと、そこに書いてあることは、真実のように思えてくる。

都市で暮らしていると、いつでもどこでもインターネットにつながり、ソーシャルネットワークで友人とつながり、森羅万象はググれば出てくると思えてくる。しかし、それは幻想に過ぎない。第三者の立場で眺めているだけではアカンのです。自らフィールドに立って、見て、聞いて、感じなければ、何もはじまらない。フィールドはこの世界です。

○観光以上、移住未満。移住ではなく、「つながり」を目的にする。

ちょっとヒートアップし過ぎました(笑)
文字にすると、どうも人間の本性のようなものが出てしまいますね。
ホワイトボードの端っこには、「玲瓏」と書いて戒めているのですが(笑)

関係人口の話に戻ります。総務省によると、「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者と定義されてます。ソトコトの「観光以上、移住未満」のほうが、シンプルでわかりやすいですね。http://www.soumu.go.jp/main_content/000548030.pdf

どなたが言い出した言葉なのか、ググってもわからないのですが、島根県で、ローカルジャーナリストとして活躍されている田中輝美さんが、「関係人口をつくるー定住でも交流でもないローカルイノベーション 」という本を書いていまして、この本がきっかけで関係人口という言葉が広がったようです。来週、大阪の心斎橋で田中さんのトークショーがあるので、聞きに行ってみようと思います。

島根県には、6年前から島根県とソトコト、シーズ総研の藤原啓社長が中心となり始まった「しまコトアカデミー」というプロジェクトがあるらしくて、移住を求めた地方創生に対して、はじめから移住ではなく、「つながり」を目的とした活動をしていたらしい。

「しまコトアカデミー」には、幅広い年齢・考えの方が参加しているらしいのですが、比較的多感で、社会そのものを面白いと感じている若い年齢層が多いそうです。夫の参加した「ゆるい移住」も同じですが、やはり若い人の感性のほうが、研ぎ澄まされている気がしますね。

いま人口減少が問題になっていますが、もっとも深刻になってくるのは、地方都市ではないかと思っています。元々自由を求めて地方から大都市に出てきた若者が、より自由な場所を求めて、元気のある地方に移っています。しかし、地方都市には、家から近いという理由で流れてきた人が多いので、現状維持が正義としてまかりとおる。気づけば、高齢化が進み、にっちもさっちもいかなくなる。夫の周りのコミュニティは、ほとんどが高齢化しています。夫も含めて。40歳近いのに、いまだに若いと言われたりする(笑)

そもそも、コミュニティという言葉からして古いのかもしれません。じぶんたちより上の世代の人は、引退まで逃げ切ればハッピーリタイア?が待っていますし、若い人たちは新しい生き方を模索しています。同世代のひとたちが、その間をうろうろしている気がします。

そんなことを考えているときに、「関係人口」という言葉に出会いました。
「観光以上、移住未満」 なるほど。いいとこどりの日本人にぴったりの言葉です。この切り口なら、都市と田舎をつなげる循環が生まれるかもしれない。鯖江や、丹波や、加西のような、じぶんに関係のある土地やヒトも増えている。じぶん自身がモデルケースになる。このつながりを生かして何かできないか。

右肩上がりで増えるものは、人間の精神衛生的にいいよ、という言葉を聞いたことがあります。戦略とは、追いかけるべき指標です。人口は増やすことはできないけど、関係人口なら増やすことができる。人口よりも、ヒトのつながりが大切。これからの日本が目指すべき、良い指標となると思うのです。

○なぜ、生まれ故郷ではないのだろう?

夫の生まれは兵庫県高砂市です。結婚式の「高砂」の発祥地です。江戸時代までは、漁業や物流の拠点だったのですが、明治時代に三菱製紙や三菱重工、神戸製鋼などの大規模工場がつくられ、いまは播磨臨海工業地域に属する近代工業の街です。播州秋祭りシリーズで知られるお祭りの盛んな地域で、名物は「にくてん」と呼ばれるお好み焼きと「焼き穴子」です。「石の宝殿」という巨大な岩が浮いている神社が観光スポットでして、最近は、江戸時代の海運業に大きな発展をもたらした幻の帆布「松右衛門帆」のブランド化に力を入れております。

高砂市役所の職員さんが言いそうなセリフが、すらすらと出てきます(笑)でも、これはググれば出てくる情報なのですね。何か足りない。グッとくるものがないのです。生まれ故郷の高砂市のことなのに…。

不思議なことに、これが鯖江市の説明になると、随分と話し方が変わるのですよ。「知ってますよ。メガネの鯖江でしょ?」と言われても、「違うんですよ。ゆるい移住というのがありましてね。(うんたらかんたら)」と、聞かれてもいないのに、ここがおもしろい、ここの飯がうまい、この人の生き方が素晴らしいと、ついつい語ってしまうのです(笑)鯖江に限らず、神戸でも、丹波でも、加西でも同じなのです。

結局のところ、じぶんの街の良さは、じぶんたちにはわからない。しあわせの青い鳥は、家にいるのでしょうが、それに気づかない。外に出ると、そのことがわかります。最近、少し高砂の良さがわかってきました。鯖江で高砂の話をするときは、「高砂は、晴れの日が多くてね。いつもポカポカのお布団で寝ているのですよ。」と紹介しています(笑)

いかがだったでしょうか。皆さん(妻)は、どう思われますか。

○本日のおすすめ本

SOTOKOTO(ソトコト) 2018年2月号[関係人口入門]
出版社: 木楽舎 (2018/1/5)


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