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2031年の民主主義

首長たるもの、現在の民主主義の問題点の発見とそのソリューションとなり得る「22世紀の民主主義」(成田悠輔)なる本を読み
まずは新旧民主主義に関する知見を深めなくてはいけない。

*首長になろうとする男が1冊目に読む本としては
もしかすると適していない可能性があるということは重々承知である。

著者は何者かというのは言わずと知られているので、深くは語らない。
イェール大学の助教授で「データサイエンスやeconomy」を専門としている研究者だ。
学歴も凄まじく、東大卒→MITでドクター取得という恐ろしい経歴の持ち主。

変なメガネや歯に衣着せぬ物言いで一躍有名になり
近頃メディアへの露出が増えているのは言うまでもない。

今回はそんな彼の著書「22世紀の民主主義」から得た学びと
2030年に新たな民主主義を目指す私の私見を述べる。


まず、現代の民主主義は壊れているという主張から始まる。

民主主義が強い国家ほど
リーマンショック・コロナによりGDPが低下しているとのこと。

また、SNS・メディア等の過剰な拡散機能により
ポピュリズム(民衆に寄り添うなどと謳い、中身がスカスカな主義)の加速
効果が短期的にプラスに見える政策しか取れなくなる。

とのことだ。

さらに、本来は資本主義と民主主義で良いバランスが取れていた
(富を増やす資本主義と分配する民主主義)が、
民主主義の故障により、社会がいびつなバランスに。
民主主義というブレーキを失った資本主義が暴走し、
民主主義を飲み込んでいく(格差が広がり続ける)
。との主張。

非常に納得できる。
行き過ぎた資本主義により(既得権益)、政治家の身動きがとれなくなる→分配の役割を持っているはずだった民主主義は資本の奴隷になり
富の権益の独占を試み続ける。


そして上記の問題を解決するには、2つの方法があると続く。
①闘争
②逃走

①闘争
民主主義の仕組みを変えようとする闘いに臨もうという話である。
この章には、新しい民主主義の形に関する様々なアイデアがある。

(1)政治家のルールと闘う
-政治家の定年制
-政治家の給料を成果報酬型にする(ガバメントガバナンス)

(2)メディアと闘う
-メディアの情報統制

(3)選挙制度と闘う
-余命投票、ネット投票

(1)、(3)は上述した通り
民主主義の故障により、政治家という生命維持装置に繋がれているマジョリティを占める老人たちに、死を宣告するような制度の変更はとても受け入れられ難い。
(死の淵から回復して強くなるサイヤ人的なことであればすべておまかせしたいところだが。)

唯一実現可能性がありそうなのは、メディアの情報統制だと考える。

メディアの情報に課金するみたいなことをすると積極的に情報を得ようとしなくなる。
→情報の流れが遅くなり、大量の同時同調・熱狂のようなものが起きにくい。
→短期的なメリットだけを追求しなくなるので、中長期の政策が取りやすくなる。

(各政党も選挙に負けるわけにはいかないので、情報の速度が速いと一見短期的に効果がありそうな政策を取らざるを得なくなるという背景。)

SNSや各メディアは民間なので
政府が補助金を出すなら、喜んで情報統制してくれるのではないか。

「情弱課金」みたいなネーミングだといい。
そして、導入の目的は扇動行為やフェイクニュース拡散防止とすると良いのではないか。
要は税みたいなものだが、税と聞くと理由もなく反対をする
「パブロフの犬」達がいるのでそれとなく導入するが吉。

他にも、現実味があるのは余命投票だろう。

実際の選挙のデータをもとにシミュレーションをして、余命投票を導入したらどうなっていたかというのを公表するみたいな試みから始めるというのであればすぐ実施可能だろう。


②逃走
もういっそこの腐敗した民主主義から逃げだしてしまおうという話である。

(1)ゼロから逃げ場を作る
最後にユートピアになりそうなのは、各国の主権が及ばない公海での建国だ。
タックスヘイブンがあるように、デモクラシーヘイブンがあってもおかしくないという主張。

(2)あるものを乗っ取る
東京の主要区でも区長への投票数が1万票以下なので、示し合わせた1万人に住民票を取らせることができれば、理論上は余裕で区長になれてしまう。

私の感想としては、以下の通り。
(1) 現状富裕層のみにチャンスが与えられているので、現実味が薄い。
(2)は賛同者さえ集まれば、実現可能だ。非常に面白いと思う。


最後の章に成田氏の考える「22世紀の民主主義」が描かれている。

ざっくり言うと、人間のあらゆる無意識なデータ(表情や行動、バイタル)を取り、それを使って政策決定をするアルゴリズムに民主主義を任せる
「無意識な民主主義」が22世紀に到来してもいいんじゃないかという話だ。

実現可能かどうかでいうと、中国の監視社会・韓国のID管理など身近なアジアでも様々な活用できそうなデータがある。

あとはランダムな様々なデータにどう意味付けをして、政策決定アルゴリズムを作るかというところだ。

属人性を排していくのは賛同できるが、
彼が見ている景色とのギャップがありすぎて現実味がどうしても沸かない。

私が目指すのは、22世紀の民主主義を支える2030年からの民主主義だ
このような先鋭的で面白いアイデアをたくさん学べたことは
未来の無意識民主主義の萌芽となり得るかもしれない。


最後に全体の感想を述べて終えたいと思う。

文字だと彼のことばが生き生きとしていて
飽きずにさらっと読んでしまった。

発言や行動は瞬く間に拡散されるが、
長いテキスト情報はそこまで拡散性がない
表現の自由があるので心地よいことも学んだ気がする。

皆さんも是非読んでみてはいかがでしょうか?

「22世紀の民主主義」-成田悠輔著


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