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満を持して書く弟のこと。(ある意味私より被害者)その28

 私が渋っていると、
「自分の身内にチケットを融通できるルートがあるっていうのに、これを利用しない手はないじゃない?」
 とさらに。
 利用・・・。
 ひどい言い草。
 父、母、弟の3人は、言葉の選び方が下手すぎる。いくら何でも「利用」はないだろう。
 けれど、この家族においてそこに言及すると、
「利用は利用でしょうが。事実を言って何が悪い!?」
 というような展開になるので、よけいに嫌な気分にさせられる。
 そして、
「そんなこと考える方が、ひねくれている」
 と落とされる。
 晴信に言ったところで同じ反応が返ってくるだけだと思ったので、黙っていた。


 しかたなく妥協案を提示する。
「私が電話して頼んだ後、チケットが届いたら自分で取りに行くのなら良いよ」
 その時期は、バブルが弾ける直前で本当に忙しく、昼と夜用にお弁当を2つ持って会社に行っていたので、その方法しか思いつかなかった。
 晴信は。
 社交的ではない部分を、父から色濃く受け継いでいるようで、この提案は不満だったようだ。なぜなら、知らない人の所へ受け取りに行かなくてはならないから。
 けれども、背に腹は代えられない。欲しいチケットを手に入れるためには、しかたがないと思ったのか、渋々その条件を呑んだ。
「私が受け取りに行く時は、必ずお礼の品を持って行っているから、同じようにしてね」
 とつけ加えた。
 このシステムにしてから、数回はスムーズに事が運んだ。 
 私も先方に、
「弟が直接受け取りに行くのでよろしくお願いします」
と連絡を入れておいたので、問題は起こらなかった。

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