満を持して書く弟のこと。(ある意味私より被害者)その34
しまいには、
「結婚して、変わったね」
と特上の嫌味を言われた。
言われた時には、どういう意味なのかまったくわからず、その言い方に傷つきもしたけれど、今はどういう意味であっても変わったとみなされたことは喜ばしい。
あのどよよん、とした場所から抜けだせている、ということだからだ。
ともあれ、キャンセルはせずに無事に披露宴が行われ、皆様に祝ってもらえて良かった。
披露宴の後にすぐに新居に移って新生活がスタートしたのか、新婚旅行には行ったのか、そのあたりのことは、母から聞いたのかもしれないけれど、覚えていない。
ただ、新居がらみの話は、どれもがやはり私にしてみれば、なんだか良くわからないのだ。
結婚したら、同居するという話だった。それは父が亡くなった直後、具体的にいつ結婚するかは決まっていない時期での会話。
私も、何らかの用で実家に帰っていたのだと思うけれど、その時に、
「今時最初から同居してくれる人なんていないよ!」
晴信が、母にきつめに言っていた。だから、ありがたく思え、という口調だった。
母は。
一言も発しなかった。
不満だったのだろう。
嫁は目下と決めつけているのに、この状況だと、自分の方が一緒に住んでもらっているという感じにならないだろうか、という不安。
私は、こんな母とは、どんなに良い奥さんが来たとしても、うまく行くわけがないと思っているので、他の方法はないものか、と考えていた。
それと。
やはりその時期に聞いた話。
義母が言いだした。
「晴信さんね、結婚したらお嫁さんの家で飼っている犬を連れて来て良いかって、お母様に聞いたんですってよ」
犬?
「お母様、困ってらしたわよ。主がいるのに・・・」
主とは、すでに飼っていた柴犬のことだろう。その犬は、父の死去から一年後、母が親戚の法事で数日留守をした時に逃げてしまい、それきり行方不明になってしまった。
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