満を持して書く弟のこと。(ある意味私より被害者)その7
さらに。
「和洋からいじめられていること、ママには絶対に言うなよ」
と晴信に口止めされていた。
その理由は、今となってはわからない。
私のように、
「預かってもらえなくなったら、母が困るだろう」
という理由だったかもしれないし、
「いじめられていることを母に知られたくない」
という男子としてのプライドだったのかもしれない。
まあ。
どちらにしても幼い2人の子どもは、母のことを思いやって行動していたことは、たしか。
毎日針のむしろのような日々だった。
そこで、私は提案した。
「ね~え、和洋にやられて辛い時、何かのサイン決めない?」
と。
「たとえば和洋嫌だよね~って思う時に、おでこに手を当てるとかさ」
私が言うと晴信は、
「なんでそんなこと決める必要あるの? そんなことしなくてもいいじゃない」
とまったく乗ってこなかった。
私の気休めだ、と言われたらそれまでだけれど、晴信は全然意に介していないようで、それはかえって不思議でもあった。
晴信は。
家に帰ると島谷家でのことなんでまるでなかったように、無邪気に父親とプロレスごっこをしたりして遊んでいた。
その姿を見て、
「辛くないのかな」
と逆に疑問に感じる私だった。
よく考えると。
私にとっては島谷家はもちろんだけれど、自分の家も地獄だったのではないか。
いつも、いつ母から罵声を浴びせられるかびくびくしていたし、思わぬことで烈火のごとく叱られた。
ほれられることは、決してない。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?