満を持して書く弟のこと。(ある意味私より被害者)その36
晴信は、いつも優先順位が違うような気がする。
私はそうは思いつつ、姉として適確なアドバイスをした方が良いのかも、と余計な気をまわし、
「事情が変わって短期間で引っ越すことだってあるから、別に言わなくても良いんじゃない?」
と言うにとどまった。しかも、極力冷静さを装って。
本当は、就職の時の髪の毛のように、
「そんなこと自分で考えなさいよ!」
と言いたかった。
まったく。
「結婚して変わったね」
と嫌味を言われたけれど、むしろその方が嬉しいくらいだった。こういうことで出口もなく悩んでいる人にとっては、私はとんでもなく薄情者なのかもしれない。けれど、それは結婚して豹変したわけではない。
元々、そういう考え方の家族が嫌で嫌でたまらなくて、本当に居心地が悪かったのだ。
時折り母に吐き捨てるように、
「薄情ねっっ!」
と言われていた私。
もう具体的な出来事は忘れてしまったけれど、母に対しての物言いが冷たかったと思われる。
いやいやいや。
まず最初に、自分がやっていることだろう。私は、他の人に対して、そんな冷たいセリフを吐いたことなど、ない。いつも母に言われていることを、オウム返しに言っただけだ。
やさしくされていないのに、その人に対して思いやり溢れる言葉かけが出来るほど、私は成熟していない。されていないのに、そうしろと言うのは、どだい無理な話。
それを言うなら、まず母に、
「娘さんにそんなひどい言葉を浴びせてはいけませんよ」
と誰かが注意して欲しかった。
まぁ、たとえ誰が忠告したとしても、
「自分の娘に何か言う時、気を使うなんて馬鹿げてる!」
とか何とか言われそうだけれども。
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