満を持して書く弟のこと。(ある意味私より被害者)その32
2人は、身体のことを考えて式は挙げても披露宴はやらない、と決めたようだ。
その考えに母は大反対し、
「それはダメ!」
と言い張った。
その時点で、晴信は30歳を超えていた。
だから、大人として、
「2人で決めたことだから」
と強く出れば良かったのだ。それを、母に押し切られて渋々披露宴をやることになった。
そこで迷惑をこうむったのは、私。
先に書いたように披露宴の会場は、キャンセルしてしまっている。30年前は、ホテルや結婚式場で披露宴をするのが一般的だったので、すぐに予約など取れるわけがない。
日程を先延ばしにするとお腹が大きくなってしまうので、なるべく早く行う必要があった。
私たち夫婦が披露宴をした場所は、営利目的ではなく会員の紹介があれば使用できるという会館だった。義父の知り合いから繋いでもらったのだけれど、つてさえあれば比較的予約は取りやすかったように思う。
そのことを母は、思いだしたのだろう。
私に相談するより前に、義母に直接電話してお願いしてしまったのだ。
母は、公立中の教師だったから、世の中がどのようにして動いているか知る必要もなく生きてきた。だから、こういうお願いごとをする際に絡んでくる諸々のことが理解できていない。
義母から広大に電話がかかってきた。
「晴信さんのことだけど、大丈夫? 一度キャンセルしたって言ったけど、また気分で取り消しなんかされたら、パパさん(義父のこと)の顔に泥塗ることになっちゃうから」
そうなのだ。私も、それを心配していた。
これば絶対に母の意向だと思ったから、万一の場合キャンセルもありうる。人と人との繋がりで、成り立っている世の中の仕組みがわからないということは、普通のお店か何かにするように安易にキャンセルしてしまう恐れがあるということなのだ。
これは、とんでもなく非常識なのだけれど、その自覚がないから時折りとんでもないことを平気でしてしまうことがある。私は何故そうなるか最初のうちはわからなかったけれど、要するに利害関係の絡まない学校という場所で長年生きてきたからなのだ、ということに気づいた。
自分の一言で相手に金銭的に大損させてしまうかもという危機感がなければ、この感覚はわからないだろう。
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