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満を持して書く弟のこと。(ある意味私より被害者)その37

 それで。
 晴信は、3ヶ月経ったら実家に戻ったのか。
 戻らなかったのだ。
 それどころか、結婚して7,8年経った頃、土地を買って家を建てた。今そこに直美さんと息子の正治くんと3人で暮らしている。分譲ではなくて、自分で設計して家を建てた。
 その理由は。
「土地が狭いので、3階建てを建てる必要があり、なかなかそういう物件が見つからなくて」
 とのことだった。
 なぜ3階建て?
 これも良くわからなかったけれど、実際は地上3階ではなく、地下室を作り都合3階建てにする計画とのこと。
 地下を掘る。
 これには大変な雑務が発生する。現に掘って水が出るかどうかの調査をしなければならない。それだけ工期も遅れて、金額だってかさんで行ったのだ。


 3階建てにこだわった理由は、母の部屋を作るためだった。
 公立中を退職後、習字を趣味としている母が、大きな紙を広げて書けるような部屋と、父の仏壇を置くスペースが作られた。
 完成直後に、数十分お邪魔したことがあるけれど、たしかにあちこちにこだわりがあり、1階から2階へは部屋の中央のらせん階段を伝って行くようになっていたし、仏壇置き場もその時はがらんどうだったけれど、きちんと寸法を測った上で作られていた。
 ああ。
 そこまでやったのに。
 完成してから20年以上経つのに、今も母はそこに転居してはいない。きっと仏壇置き場には、他の物が収納されていることだろう。
 晴信は、実現する前に豪語する癖があるのかもしれない。
 私は、そのようなことを言って達成しないと、その時母に思いきりけなされるので、心の中で思っていても口には出さないような習慣がついているので、まったく反対に育ってしまっている。


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