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「この人ったらね」で始まる毒矢。私の悪口を言い続ける母親の闇。その11

 この計画が決まってから不機嫌になってしまった母を置いて、パリに行った。楽しく過ごしたのだけれど、帰りの電車がアクシデントにより、途中のルクセンブルグで止まってしまった。
 まだユーロになる前だったので、ドイツの従妹に事情を説明したり、迎えに来てもらう場所を変更したりする必要が出てきてしまったけれど、なんとか無事に戻ることができた。
 予定外のことが起こっても、自分なりに考え行動して、解決できた。私にとっては、とても大きな武勇伝。
 ユーロ前のため、通貨も違う。色々トライして、駅前のホテルに飛びこんで事情を説明し、電話を貸してもらうという最終的な解決策を見つけた時は、本当に嬉しかった。

 ところが。
 母にしてみれば、
「私の反対を押し切ってパリになんか行き、電車が途中で止まって従妹に迷惑をかけたわがまま娘」
 という見立て。


 旅行から帰ってから数年間は、親戚の集まりがあれば必ずこの話題を持ちだし、私を悪者扱いしてきた。
 親戚の一人が、
「稀沙ちゃん、パリに行ってきたんだって? どうだった?」
 と私に尋ねているのに、横からぐいぐい話に割って入り、
「○○ちゃん(従妹のこと)に迷惑かけてねーぇ」
 と話の流れを完全に変えてしまうのだった。

「やっぱり凱旋門大きかったですよ」
 などと感想を述べようと息を吸った私は、吐きだすタイミングを逃し、何も言えなくなってしまうのが常だった。
 もう何十年も前のことなのに、年始の挨拶に行った時も、
「この人ったらね!!」
 と広大に告げ口するように話し始めた。
 知ってるよ。
 結婚してから行ったのだから。
 その時一緒にいたのは、次男の湊。
 私はもううんざりして、
「湊だって17歳の時、一人で海外行ったわよ。心配だけど、見守るのが親でしょ!」
 と少し強めに言ったら、反論できなかったのか黙った、
 ここまで強く言わないと、わからないのか。情ない。

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