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ああ、わかりあえない、と知った日。(義妹の人生にも思いをはせてみる) その9

 この時点ではもう私は志穂とは仲良くはなれないと思い、距離を置いていたので、少し冷めたまなざしで、見ていただけだけれど。
 話をメールのやり取りをしていた頃に戻す。
 その中で、
「子どもたち2人は、母が私にしたことを全部知っています。私が母と電話しているうちに言い合いになって泣き叫んでいるのも見ています」
 とあり、何を自慢しているのか、と思ったけれど、そんなことを平気でしているとは!


 そんなことしちゃ、ダメでしょう。
 と言うより、私はそれだけは避けてきた。
 私が母の悪口を息子たちに言うと、きっと彼らも心に傷を負うだろうと思ったからだ。
 もちろん本人たちが母の言動その他を見て何かを思うのは自由。私からあえて言う必要もないと思っていた。
 そうすると、翼は母がテレビで言っていることを鵜呑みにしてあたかも自分の意見であるように口にするのを見抜いたし、湊も何かの話の時にそれは教師としては言うべきではない、という見解を母の言葉から感づいた。
 そういう時私は本当は、
「そうなんだよ!」
 と激しく同意したいところだったけれど、冷静さを保ちつつ、
「良く観察してるねぇ」
 と息子たちの視点をほめるにとどまった。
 そこで一緒に母の悪口を言う必要性を感じなかった。なぜなら、母が2人をとてもかわいがっていて、私にしたような危害を加える恐れがまったくなかったからだ。それは2人が男子だったからかもしれない。もし女子だったら、やはり成長していく姿を気持ち悪く思ったのかどうか。これはあくまでも仮定の話なので、確認はできないけれど。
 志穂のメールは、さらに驚くべきことがしたためられていた。
「稀沙さんと2人だけで会って話すことについては、もちろん歓迎ですが、義両親の介護については2人きりで話すつもりは私にはありません」
 というくだり。




 

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