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「この人ったらね」で始まる毒矢。私の悪口を言い続ける母親の闇。その13

 その意図は・・・。
 要するにあの時私想定外の行動をしたために、自分がよけいな心配をしなければならなくなり、せっかくの楽しい旅行に墨を塗ってきた、という恨みを何度も何度も晴らしにかかっているのだ。
 私は、そんなにひどいことをしたのだろうか。
 解せない。
 たとえ私が旅行に汚点をつけたとしても、母は私の人生にとんでもない染みをスプレーで何百回も吹きつけているではないか。
 そのくせ、一番楽しかった海外旅行はドイツだ、といつも言う。楽しかったのなら、そちらだけ記憶にとどめてくれよ。
 嫌なことばかりを覚えていないで。


 私には数えきれない嫌な記憶が存在するけれど、母は、どうだ。たまにしか会わない湊にまで、
「あの話よくするね」
 と思われるくらい、その類の話が少ないのではないか。しかも、娘の私にとってはトラブルを解決できた良い思い出なのに。
 私がそう思っているのなら、そちらを尊重してくれないのか。
 理不尽だ。
 何十年経っても責められるのは、本当にうんざりする。

 もしかしたら息子たちに私を悪く言うことで、祖母である自分の方を上に見せようとしていたのか。
 何を張り合っているのだろう。
 いくら私の悪口を言ったところで、彼らが私を見損なうはずがないのに。
 こういうことは、年老いてきて、他の人との他愛ないおしゃべりによって自然と学んでいくものだと思うけれど、母にはそのような関係の友人がいない。
 ふだんつきあっているのは、母をリスペクトする教え子たちで、そういう人たちは自分の話より母の発する話にありがたがって耳を傾ける傾向にあるから、対等な会話が成立しない。

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