オススメ本。近未来の<子づくり>を考える不妊治療のゆくえ/久具宏司
不妊治療で「妊娠すること」ばかりを意識している方へ。なぜ自分たちは子どもを欲しいのか?もう一度真剣に考えるきっかけになります。
この本には、何人もの代理母に自分の遺伝子を残そうと妊娠させたり、AMHが低く卵子提供で子をもうけたが、第2子はまさかの自然妊娠で第1子と第2子を平等に愛せるのか?という問題に直面している方の話だったり…実話を元に今までの不妊治療で何が起きてきたかが書いてあります。
特に私が驚愕した話は、閉経間近だけど子どもは何人か欲しいので一度の移植で胚を2個入れてほしいと言って病院に断られ、結局1つ移植し、出産したが、高齢なので子育てでかなり体力を消耗し後悔する。こんなことになるなら代理母に自分の子を産ませれば、自分のキャリアも傷つかず産後の体の状態も健康であったという旨を医師に伝えたところ、日本では病気や先天性の原因等で子宮のない人が代理母の制度を利用できるということを知り、「こんな年齢になって大変な思いをするなら、若い時に自分の子宮を摘出しておいて、代理母に自分の子どもを産ませればよかった」と言った人がいるそうで…驚愕しました( ゚Д゚)
また、代理母は産む女性側も完全にビジネスとして妊娠→出産→子どもを渡すということが行われているのかと思いきや、人の子どもでも自分のお腹の中で十月十日育った子どもには愛情が生まれ、出産後に子どもを渡したくないというトラブルが多いそうです…母になるための体の変化も勝手に起きるでしょうし、母親として子どもを引きはがされるような思いになり、とても辛いなと思いました。また代理母が出産後に子どもに病気や障害が見つかり、子の受取拒否をする親もいるそうです。ひどいです。
不妊治療という手段を使って、自分の都合で子どもを望んだり、放棄したりなど、命を操作してしまうのではないか?という倫理の問題や生まれた後の子どもの人権の問題など、本当に自分では想像もしなかった問題提起が沢山あり、ぜひ読んでみて欲しいです。
妊活という言葉は便利ですが、自分ばかりが苦労してそれでも子どもが出来なくて…と悲劇のヒロインになるのは自己中心的で私は違うと思っていて「なんで自分が、なんで自分だけが辛い思いをして…」と八方塞がり状態の方に新たな視野が開ける本だと思います。女性だけでなく男性にも読んで欲しいです。
朝日新聞2021/04/03(土)
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