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2022年のイラストを取り巻く環境と、2023年の展望について

KUAイラストアドベントカレンダー、最終日となる12月24日は虎硬先生から『2022年のイラストを取り巻く環境と、2023年の展望について 』です!



KUAイラストアドベントカレンダー最後の記事を担当します。前年同様に今年のイラストを振り返り、来年の話をしていきます。去年の記事を読み返したのですが、トレンドとしてのNFTアートなどは懐かしい感じになってますね。先のことはまったく読めないなとあらためて感じます。


2022年の振り返り

AIアート

2022年は兎にも角にもAIが話題になりました。AIは以前から存在する技術ですが、イラストやテキストに関して群を抜いて完成度の高いモデルが登場しました。私はクリエイターがAIの技術を活用することについては肯定的な立場です。むしろ活用し、取り入れることでさらに人間のクリエイティブが拡張すると考えています。

今のAIを見ているといわゆるシンギュラリティはそこまできているのだろうと思ってしまいます。AIが創作した絵や文章を見極めることは非常に難しいです。もちろんイラストはAIのクセが反映されやすいので、詳しい人がみればわかります。しかしそれも時間の問題といえるでしょう。

激動のSNS

また、今年はSNS界隈も荒れに荒れた年でした。イラストの投稿先として大きな存在感を持つTwitterの経営層が変わり、運営について大きな変革を迎えています。現在のところ、目立った変更はありませんが、収益モデルの変更などがあれば当然タイムラインの仕様も変わってくるでしょう。インフラのアルゴリズムはクリエイターやコンテンツをコントロールする側面があります。

同様に話題になっているのはクレジットカード会社をはじめとする決済企業の存在です。いわゆる児童ポルノに代表される、社会的に悪影響を与える可能性があるコンテンツが販売されていることについて、プラットフォーム側ではなく、決済企業が判断することがあります。その基準も線引きが難しく、実際に被害の有無に関わらず、創作されたものについても厳しいジャッジが行われることもあります。

決済企業の多くがグローバル企業という点も難しい点です。いわゆる成年向けコンテンツを扱うサービスはかねてよりこの問題が指摘されていましたが、今年はコンプライアンスがさらに厳しくなってきたといえるでしょう。WEBサービスは複数の企業の利害関係によって成立するものなので、決済企業の介入は非常にインパクトが大きいものとなります。

2023年のイラストレーション

メディアの多様化

イラストレーターの個展が2018年頃から盛んになり、作家は自身のイラストをさらに良い見せ方にすべく、意識を働かせています。特に2022年5月に行われたSSS Re\ariseでは、アート中心の印刷を手がけるFLAT LABOとのコラボレーションによって立体的なディテールを持った作品を実現しました。

引き続きコロナの情勢下ではありますが、興業ビジネスも感染症対策をしながら新たな展開を進めています。展示はインターネットを中心に作品を発表するクリエイターにとっては貴重な場所ともいえるので、近年は特にニーズを伸ばしています。実際に売上として成立してきたので、企業がバックアップを行いやすいという背景もあるでしょう。

今後もアート系メディアに強い印刷会社や工場などとのタイアップが進み、作品の付加価値がさらに向上するような座組みが生まれるかもしれません。私個人としては去年話題になったNFTよりもアナログ出力が注目されている現状をとても興味深くみています。

AIとの共生

もう何度目かよっていう感じですが、今年はAIの話ばかりしている気がします。2022年はAIのポテンシャルを多くの人が感じ取ったところですが、プロダクトに実装されていくのは来年からです。2023年は実際のプロダクトで多くのAIが活用されていくでしょう。

もちろんゲーム開発のように、汎用的な素材が必要になる現場ではこれまでも自動生成を中心として技術は活用されてきました。今後はそういった汎用的な素材が人間の手を離れ、機械による制作の割合が増えてくるでしょう。キャラクターデザインの世界では、すでに設定から既存のモチーフを組み合わせて別のデザインを作るという試行錯誤は行われています。

当たり前ですが、人間も無から絵を描くのではなく、たくさんのイメージリソースを学習して創作を行っているのです。マクロな目線でみると、主観が人間か機械かという話で、創作におけるプロセスに大きな差はないのかもしれません。

もちろん、AIとの共存によって人間の利益をいかに守るかということは今後の大きな命題になるでしょう。利益というのはお金だけではなく、尊厳や敬意などにも含まれます。多くの絵描きがショックを受けているのは、お金的な部分よりも今まで人間にしかできないとされていた創作を機械も行えるという事実です。今後はさまざまな分野で人間かAIかという市場原理は働きますが、なにをもって自身のクリエイティブを唯一性とするか、という意識はこれまで以上に重要となってくるでしょう。

グローバルとガラパゴス

イラストを含めた日本の文化はユニークかつ閉鎖的で「ガラパゴス」とも呼ばれています。しかし一方の現実としては、アニメや漫画で世界的にヒットタイトルが生まれ、そこから派生する二次創作やイラストも海外に人気が出ている状況もあります。ニッチなコンテンツにも関わらず(だからこそ)、世界でシェアをとることを「グローバルニッチ」という言葉で表しますが、まさにイラストはそれを体現したものの一つといえます。

日本発のイラストは平面的な表現から、西洋のリアリスティックな描写を吸収し、今日ではさらなる進化を遂げています。同文化は中国や北米に輸出され、現地のクリエイターの手によってさらに進化し、ディズニー映画やハリウッドなど大作映画でもその片鱗を確認できます。

文化自体は受け入れられていますが、表現についての日本クリエイターの意識はグローバルになっているとは言えない状況だと私は考えています。多くの日本人はTwitterのような海外のサービスを使っていますが、日本人に向けた表現で発信しています。

たとえばイラストは肌の露出などで厳しい規制がかけられるので、無頓着でいるとそもそも表現を発信できません。実際に私は今年、アメリカのロサンゼルスでプロモーションの仕事をしましたが、想像以上に現地の方の表現に対する視線は厳しかったです。アニメや漫画など、イラスト的な表現に寛容なイベントでも肌の露出が多いと「ポルノ」として判定されます。

こういった意識は昨今の決済代行会社による規制と大きなハレーションとなります。私は願わくば、表現は作家の自由、そして社会のレスポンスに委ねるべきだと考えていますが、実害と創作の線引きをどう考えるかは難しい問題です。誰も傷つかない表現などはなく、それでも表現は社会や文化の中で揉まれて成長していくものです。直近の問題とは少数の企業がそのジャッジを担っている点にあります。

いずれにしてもクリエイターは成長する必要があります。表現を伸ばすために、エゴを伝えていくために。本学のイラストレーションコースも、学生の伝える表現を学びによって成長させていきたいと強く願ってます。

今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


プロフィール
虎硬

イラストレーター、プロデューサー。
京都芸術大学 通信教育部 イラストレーションコース准教授。
株式会社アニメイト企業ロゴデザインなど。
アートブック『VISIONS』企画監修。
現在はピクシブに所属。
https://twitter.com/anofelus


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