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情景イラストの見栄えが変わる!空気感の出し方と資料集めのコツ

KUAイラストアドベントカレンダー、12月8日はあんよ先生から『情景イラストの見栄えが変わる!空気感の出し方と資料集めのコツ 』です!



こんにちは。イラストレーターのあんよ(@anyotete)と申します。前職はメーカーのレンズ設計者で、現在はフリーランスとして書籍・MV用のイラスト制作やゲーム・アニメ用の背景制作などのお仕事をしています。

この記事では、情景イラストを描くときの空気感の出し方と資料集めのコツについて、私の考え方をもとにお伝えできればと思います。


キャラクターイラストと情景イラストの違い

まず、明確な定義がある訳ではないものの、キャラクターイラストと情景イラストの違いについて、私個人の考え方を説明します。

これらの違いは、ひと言で表すと「そのイラストにおいて一番伝えたいもの(主題)が“キャラクターの魅力”なのか、“その場の雰囲気”なのか」です。そしてこの主題によって、イラストの見栄えを決定付ける最も重要なパラメータが以下のように違ってくると私は考えています。

<イラストの見栄えを決定付ける最も重要なパラメータ>
キャラクターイラスト:構図とキャラクターの演技(ポージング、表情など)
・情景イラスト:構図と空気感の演出

例えば下のイラストを私は情景イラストとして制作しています。

このイラストで一番伝えたかったことは「陽に照らされて色付く紅葉に囲まれている雰囲気」です。

情景イラストにおいてはキャラクターはあくまでも雰囲気を補強するためのアイテム。そのため演技は控えめにしています。もしキャラクターの魅力を一番に伝えたいのであれば、キャラクターに動きのある演技をさせたり、キャラクターが画面に占める割合が大きくなる構図にしたりする必要があるでしょう。

イラストの主題は、最終的には見る人にゆだねられるものの、作者があらかじめしっかりと決めておくことで表現方法に迷ったときの判断基準になり、伝わりやすいイラストを制作する一助になります。

構図に関しては解説しているコンテンツも多いため、今回は空気感の演出について考えていきたいと思います。

空気感を演出するには?

まずは「空気感」とは何かを少し考えてみましょう。

私の考える空気感とは、主に時間帯、気温、風。これらは私たちが普段五感で感じる要素ですが、表現を工夫すれば視覚情報のみのイラストでもある程度伝えられます。

そしてこれらを伝えることは、私が情景イラストを描く上で最も大切にしていることです。

まず時間帯に関して。昼・夕・夜などの時間差分でイメージしやすいかと思いますが、それより細かい時間間隔での表現もできます。

例えば先ほどのイラストでは、陽が傾き始めた夕方前くらいの時間帯を想定し、それを表現するためにオレンジ系の光を用いました。

黄や青白い系統の光を用いれば朝~昼、より強いオレンジや赤系統を使えば夕方の表現になります。また、日差しが強いほど明部と暗部のコントラストがはっきりするので、それによっても時間帯を描き分けられるでしょう。

気温に関しては、モチーフで表現するやり方が最も簡単。先ほどのイラストでは、紅葉とキャラクターの服装によって、おおよその気温感は伝わるでしょう。夏のモチーフを入れれば気温は高くなりますし、冬のモチーフを入れれば気温は低くなります。これに時間帯の表現も加えれば、よりピンポイントに伝えられます。

風は、揺れや舞うもので表現します。先ほどのイラストではキャラクターの髪とスカート、空中の落ち葉と塵によって風を表現しました。落ち葉に関してはぼかすことで舞っている様子を表現しています。

また風を表現するときには、風向きを意識するのもポイントです。風の表現を入れるだけで画面の見栄えがグッと良くなるため、個人的には、無風を表現したい時以外は風の表現を入れた方が良いと思っています。

上で挙げた3つの要素以外にも、湿度や匂い、環境音なども表現の工夫次第で伝えることができます。湿度についてはスモッグのような表現を入れたり、匂いや環境音は表現が難しいもののモチーフを工夫したりと、ある程度伝えられるでしょう。

情景イラストにおいてはこの「空気感」の演出がとても大切で、制作時に意識すると雰囲気が伝わりやすいイラストになります。

日常風景も資料の宝庫

空気感の表現方法について説明しましたが、いきなり実践するのは難しそうと感じている方もいらっしゃるかと思います。

空気感の表現スキルを磨くには、日頃から周りの景色を観察する癖を付けておくと役に立ちます。ただ眺めるのではなく、光と影の挙動を意識して観察しましょう。

以下に注目ポイントの例をいくつか示します。

明部と暗部のコントラストと色

晴れた日は太陽光が強く、明暗のコントラストがはっきりつきます。そして明部は昼なら青白い光、夕方ならオレンジの光を受け、それらの色味を帯びます。暗部もわずかに環境光の色味を帯びていることがわかります。明部と暗部の境界がどうなっているかも観察できると、さらに良いでしょう。

曇りの日は太陽光が弱いため、明暗のコントラストは低く彩度も落ちます。

影の落ち方

光源が強いほど、はっきりとした落ち影ができます。また、影を作っている物体に近い場所では落ち影のエッジがはっきりしますが、物体から遠ざかるほど落ち影のエッジがぼけます。

まずは、普段目にしている景色でこれらのポイントが季節、天気、時間帯ごとでどうなるか観察するだけでも、色々な発見があるでしょう。

私は普段から資料になりそうだと思った景色は撮影するようにしており、後から見返せるよう資料フォルダにもまとめています。他にも、撮影時に明るさを合わせる箇所を変えると画面全体がどう変わるか(ダイナミックレンジ)や、ズームイン/アウトしたときの画角の感覚なども掴めると、イラストに説得力をもたせるための武器になります。

「なぜそう見えるのか」の理論を学んでから観察すると、更に理解が深まります。書籍なら「画づくりのための光の授業」や「カラー&ライト」がおすすめです。

まとめ

  • 情景イラストにおいては空気感の演出が重要

  • 時間帯、気温、風などを意識しながら表現を工夫してみる

  • 日常風景から空気感の表現を学んでみる


プロフィール
あんよ

2020年に精密機器メーカーを退社しフリーのイラストレーターに。
書籍、MV、ゲーム、アプリ用のイラスト制作、イラスト講師などで活動中。
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