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【講演会】新会員歓迎講演会 源先生 「Sweet Ernieとの出会い」

神奈川大学外国語学部英語英文学科です。2023年11月29日(水)17:00~17:30、みなとみらいキャンパス 3階 3008教室で英語英文学科の源先生が人文学会恒例の新会員歓迎講演会に参加され、「Sweet Ernie との出会い」について講演されました。今回は対面での実施となり、神奈川大学人文学会のウェブサイトでも紹介されました。講演内容の一部をこちらで紹介します!


新入会歓迎講演会
日時: 2023年11月29日(土) 17:00-17:30
場所: みなとみらいキャンパス 3階 3008教室
講師: 外国語学部英語英文学科
助教 源 邦彦(みなもと くにひこ)

言語社会学といった、ことばに起因する経済、政治、教育、その他社会問題についての研究への興味から、特に米国のアフリカ人奴隷子孫のことばにフォーカスするようになる。

エボニクス(Ebonics)という言語は、主に西半球に離散したアフリカ人奴隷子孫社会の各主要言語の総称(同系統の語族としての名称)である。大多数のアフリカ人奴隷子孫の母語は英語の方言でもなく、ピジン(pidgin)やクレオール(creole)でもない。西アフリカ諸言語とヨーロッパ言語の接触から生じ、おもに文法が複数の西アフリカ諸言語からなる西アフリカ系の言語である(言語系統を語る際に必ずしも文法構造を一つの言語のみの影響とする絶対的理由はない)。

エボニクス
エボニクス

博士論文は“Ebonics and Dr. Ernie Adolphus Smith: Toward a Comparative and Holistic Paradigm in Black Linguistics”といい、ナショナリズムが言語学の形成にどのような影響を与えるかに着目した(つまり、日本の言語学も、米欧の言語学もナショナリズムの影響を受けて成立してきたということ)。 Dr. Ernie Adolphus Smithは South Central Los Angeles(いわゆる‘Ghetto’)出身であり、Sweet Ernieとの愛称で知られていた。老年学(gerontology)の教授であり、 白人による人種隔離政策が生んだかつては黒人のみが通うことを許されたCharles R. Drew University of Medicine and Scienceで1995年から教えている。専門は言語学と臨床言語学である。

博士研究の方法は「ライフストーリー」という社会学の手法を用い、 Dr. Ernie Adolphus Smithが語り手となった。データは主に半構造的深層インタビュー、論文や著書、学会発表、そして新聞記事、写真、詩やスピーチであった。

幼少時代 *イメージ

Dr. Ernie Adolphus Smith は幼少期時代、 Wadsworth 小学校に通った。教員のほとんどは白人であり、黒人教員はごく少数であった。白人言語(「標準英語」と呼ばれる)と黒人言語(「黒人英語」と呼ばれる」)の大きな違いがあるため、IQテストにも言語的影響があった。白人が黒人のこどもの発話を理解できないことから、 “linguistically handicapped, verbal cripple, aphasia, dyslexia, or cognitively deficient”と診断された。トーマス・アルバ・エジソン中学校、ジョン・C・フリーモント高校、ジェイコブ・A・リース高校(矯正施設)、ロサンゼルス市立ビジネスカレッジで教育を受ける。Nation of Islamへの入信、ブラック・ナショナリストとしての諸活動などにも取り組んだ。カリフォルニア大学アーバイン校では、キャンパス内で反ベトナム戦争のスピーチを行ったことで1970年5月26日、刑法415.5節、311.6節に違反し、オレンジ郡地方首席検事事務所により軽罪で起訴となった(すぐにスミスが勝訴)。

授業風景

1974年には比較文化学部で博士を取得、博士論文は “The Evolution and Continuing Presence of the African Oral Tradition in Black America” であり、アフロセントリックな博士プログラムに入学した。博士号取得後はカリフォルニア州立大学フラートン校言語学部で教えるようになる。
 
このような複雑な人生をたどったスミス博士との数々のインタビューを通して研究上の政治的「妨害」、言語学基準の矛盾、恣意性が浮き彫りとなった。研究からは「言語学という知識体系は、言語学者自身が身を置く経済政治構造のなかの特定のプロセスを経て構築される。その知識体系は、言語学者自身のイデオロギー・政治的、経済的、科学的意味が相互作用する社会的解釈行為のなかで生産される。」という仮説を立てた。


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源先生の「Professor's Showcase」の記事はこちら!


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