#1 「自己PR」の呪縛を解きたい/『すべてがPRになる』

―自己紹介―

 はじめまして。“かたぷる”こと片山 悠と申します。愛称は弾力感に富んだ肉体に由来しますが、詳しいお話はまた改めて…。現在は、フリマアプリ「メルカリ」などを展開する株式会社メルカリのPRグループで働いています。その前は総合PRエージェンシーにてPRプランナーとして地方自治体のお客さまを中心にサポートしてきました。新卒から一貫してPRという仕事に携わってきた人間です。

―noteを始めたきっかけとタイトルの由来―

 自らが専門としてきた「PR」という概念を多くの人に知って役立ててもらいたいと考えたことが、このnoteをスタートしたきっかけです。すでに多くの書籍や記事などが存在しますが、その多くは学者による「理論」か実務家による「テクニック」かで二極化しています。それゆえ、広告・コミュニケーションに携わる人以外にはPRはなかなか伝わってきませんでした。

 でも、ぼくは確信しています。PRはあらゆる人の課題解決に役立つものである、と。そして意識せずとも多くの人がPRに関わっているのです。そんな「全ての道はPRに通ず」という意味を、森博嗣さんの名作『すべてがFになる』にインスパイアされる形でこのマガジンのタイトルにしてみました。

―そもそも「PR」って何だろう―

 前置きが長くなりましたが、ようやく本題に入ります。日本において「PR」が正しく理解されてこなかった大きな理由の一つに、「自己PR」という言葉の存在があります。就職活動を経験した皆さんはイヤになるほど考えましたよね。「自分の長所を自らの口で喧伝する」という多くの日本人に馴染まない行為に「PR」という言葉があてがわれました。これにより、PRとは「宣伝」や「アピール」などの同義語として浸透することに…。

 この誤認の広がりには多くのPR関係者が頭を悩ませてきました。ちなみに、PRとは「Public Relations」の略だと知っていましたか?(専門外の人はきっと知る由もないはず…)では、本来のPublic Relationsの定義はどんなものでしょうか。本場アメリカの専門家たちによる大著『体系パブリック・リレーションズ』によると

組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能

とのこと。正直なところ、さっぱりピンとこないですよね!そこで思いきって、あえて次のように置き換えてみます。

自分の周りにいる人たちとの関係を良くして、みんなで幸せになること

まだ抽象的だけど、何だか少し自分ゴトになる気がしませんか?振り返ってみると、皆さんの悩み・課題の多くは「関係」に由来するもののはず。関係を良くするということは、自分のみならず相手も幸せにできる、とっても素敵な営みなんですね。

―どうすればPRになるのか―

 ではどうすればPRになるのか、と多くの方が思われるはず…。理論や実務的には色々な説があるのですが、ここでも大胆に次のように置き換えてみます。

主語を自分から周りにいる人たちに移してコミュニケーションをとる

まずは、これを徹底するだけでPRの半分以上は達成できるはず。広告・コミュニケーション業界では、話題化しやすくなる要素を予め埋め込むことを「PR発想」などと呼んだりしますが、これは極めて狭い考え方です。

まず周りにいる人たちにとっての幸せを考え、それを伝えて行動することで自分も幸せになる

綺麗ごとのようですが、これをやり続けることがPRなのだと思います。自己中心的なコミュニケーションや行動を伴わない単なる言葉では、もはや幸せになれません。当たり前じゃないかと言う方もいるかもしれませんが、実に多くの企業・団体がそんな不幸な活動を続けてしまっているんですね。「話したいことではなくて、相手の関心から考えて話す」「自社の利益だけではなく、社会全体の利益にもなることを追求する」といったPRが、いま個人・団体を問わず求められているのだと思います。

 次回からは、より具体的にPRに関するテーマを1つずつピックアップします。とにかくテクニカルな話に陥らず、広く皆さんに役立ててもらえるよう努めます。#2は「メディア」の予定です。それでは、また!

―この回で参考にした本―

伊吹 勇亮 他『広報・PR論』(有斐閣ブックス)
猪狩 誠也 編著『広報・パブリックリレーションズ入門』(宣伝会議)
スコット・M・カトリップ 他『体系パブリック・リレーションズ』(ピアソンエデュケーション)

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