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Intergenerational Mobility(世代間モビリティ)~機会の平等を考える 新たな視点~ #前編

ブルシット・ジョブから少し脱線しますが、この後の議論に役立つかと思いましたので、前後編に分けてご紹介します。
※2020年12月に友人たちとオンラインで開催した勉強会の記録です。

Intergenerational Mobility

一花 Intergenerational Mobility(世代間モビリティ)は、私も留学先の授業で紹介されて耳にするまでは知らなかった概念ですが、社会正義を考えるときの一つの概念である「機会の平等」を考える新たな視点として面白いと思ったので、今日紹介させていただきたいと思います。

早速ですが、みなさん「機会の平等」についてどのように考えますか。
1.もし貧しい家庭と裕福な家庭の子どもが人生において機会の不平等を抱えている場合は。
→1.全く問題がない~5.とても深刻な問題である
2.貧しい家庭に生まれたかった子どもの機会の平等を保障するための政府の役割は。
→1.全くない、2.多くはない、3.いくらかある、4.大いにある
3.所得が下位1/5の貧しい家庭出身の子どもが成長して、また所得1/5の家庭に留まる確率は。
→1.ゼロに近い、2.かなり低い、3.低い、4.高い、5.かなり高い
4.所得下位1/5の貧しい家庭出身の子どもが成長して所得上位1/5に入る確率は。
→1.ゼロに近い、2.かなり低い、3.低い、4.高い、5.かなり高い

私自身、個人的な感覚で言うと、「5,4,4,3」という感じです。まず問1は、機会の平等が保障されていないことが大きな問題。問2は政府の役割は大きいと捉えています。その理由は各論の中で触れていきます。問3、4は日本のデータがある訳ではないのですが、感覚としては、貧困の連鎖が問題になっているように思います。貧しい家庭に生まれたらなかなかチャンスをつかめずに、そのまま大人になっても貧しくなる確率はあると思いますし、一方で貧しい家庭に生まれた子どもがすごく経済的に成功する確率も、そんなに高いとは言えない、むしろ低いのではないかと思っています。根拠がある訳ではなくて、子どもの貧困や貧困の連鎖が世の中で問題になる中で、裕福な家庭と比べて機会を得るのが難しくなっているのではないか、という理解をしています。

以上が簡単な導入でしたが、この発表の問題意識がどういうものであるかに触れていきますと、子どもの貧困や貧困の連鎖(親の世代が貧しかったら子どもの世代も貧しいままになってしまうこと)が実際に問題になっており、政府もこれをなくすために取り組みを行っていますけれど、日本では機会の平等をめぐって厳しい状況が続いているのではないか。そしてこの発表では機会の平等を考える新しい視点として、Intergenerational Mobilityという概念について紹介するとともに、機会の平等を実現するためにどういう政策が必要になってくるかについて、みなさんと一緒に考えていきたいと思っています。

機会の平等

一花 さて、「機会の平等」という言葉をあまり説明せずに用いてきてしまいましたが、改めて振り返ってみると、本人が責任を負わない事象、例えばどういう家庭に生まれるかによって、人生の結果は左右されるべきではない。本人のがんばり次第で人生を豊かに出来るし、人生の結果に向けたチャンスは皆に平等にあるべきだ、という考えです。

よく対比されるのが「結果の平等」で、本人の能力やがんばりに関係なく格差をなくしてしまおうという考え方です。

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図で言うと、機会の平等はスタートラインは一緒で、そこからどれだけ頑張って走るのかが人それぞれというもの、結果の平等は、とにかくみんなで一緒にゴールしようというもの。機会が不平等だと右の図のようになって、スタートラインで一人は車に乗って、一人は自分の脚で走るしかない。生まれた家庭によって教育機会を豊富に受ける人と少なかった人ではそもそもスタートラインから違っていて、チャンスが平等ではないのではないか、不平等だとこういうことが起こってしまうということです。

それと関連する概念として、発表のタイトルでもあるIntergenerational Mobilityについて説明します。日本語訳があるかどうかよく分からないのですが、世代間のモビリティ、世代間の社会的移動とでも訳せるでしょうか。世代を超えた、具体的には親と子の、主に経済的なステータスの社会移動のことです。例えば「親が裕福だと、子どもも裕福になるのか。」「親が貧しいと、子どもも貧しくなるのか。」「親の収入がどの程度子どもの収入に影響を与えるのか。」といったことを測る指標になっています。

これは機会の平等と密接に結びついている概念です。モビリティが小さいということは、子の経済的ステータスが親の影響を大きく受ける、つまり、より機会が不平等になっていること。逆にモビリティが大きいのは、子の経済的ステータスが親の影響を大きく受けないということなので、より機会が平等だということで、機会の平等を測る一つの指標になっているということです。

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1.政策的重要性

一花 まず、機会の平等そのものが大きな政策的意義をもっていることをもう少し掘り下げます。「機会の平等自体が大きな社会的正義の概念だ」と申し上げましたが、機会が不平等であることの一つのデメリットとして、社会の効率性が喪われることが挙げられます。チャンスがみなに平等でないと、潜在的に才能を持った、貧しい家庭に生まれた人が埋没してしまう。これによって社会における投資の機会損失、潜在的なビジネスの損失が生じ、生産性の低下や経済成長の鈍化に繋がることが考えられます。また、トップ層で教育などの機会の「買いだめ」が起こってしまい、社会の効率性が犠牲になることが考えられます。

さらに、機会の平等は社会制度や民主政治の安定とも深く関わっています。機会の平等は人生の満足度や幸福度に密接に関連しています。機会が不平等だと、「どうせ頑張っても生まれ育ちには抵抗できないし」「それは翻っては社会制度が悪いのだ」「政治に参加しても意味が無い」といった形で負の影響を与え、人々の自己肯定感や社会連帯を毀損するというデメリットが挙げられます。そうして社会保障を始めとする連帯によって成り立つ制度への信頼を失わせ、民主政治への参加に負の影響を及ぼし、政治における極端主義やポピュリズムを増長させるということが考えられます。以上が「政治的重要性」です。

二乃 この後のお話は、基本的に日本に限らず、世界的な問題として、全世界を念頭に置いて聴かせていただければ良いですか。

一花 基本的には日本を念頭に政策の話をしようと思っています。付け加えておくと、モビリティの理論自体は、OECDレポートでも取り上げられているように、国際的には目下議論がなされていますが、あまり日本では取り上げられない観点と思います。日本政府は子どもの貧困や貧困の連鎖といった問題には取り組んでいますが、これまであまりモビリティという観点はなかったように感じられます。そこで、改めて日本の状況がどうなっているのかを分析してみたいと考えています。

2.モビリティの指標

一花 次に、モビリティの大小をどうやって測るのか。指標にはどういうものがあるのかを説明します。まず一つ目、そしてこれが論文で一番多く引用されているので、ほぼこれだけ認識していただければ良いと思うのですが、IGE(Intergenerational Elasticity of Income:世代間の所得弾力性)というものです。

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子どもの所得が親の所得の変化にどれだけ影響されるかを測る指標で、具体的には親の所得が1%上昇した際の子どもの所得の変化率(%)を表わしている指標です。IGEが大きいということはモビリティが小さいということで、子どもの経済的ステータスが親の影響を大きく受け、より機会が不平等とされる一方、IGEが小さいとモビリティが大きく、子どもの経済的ステータスが親の影響を大きく受けないので、より機会が平等というように親の所得と子の所得の影響を測ることになります。求め方はいわゆる回帰分析という、データを実際に使って、親の収入と子の収入がどのように影響を受けあっているかを回帰式に代入して、データ分析ソフトを使って分析したときに出てくる、親の収入に係ってくる係数βというものが、いわゆる世代間の所得弾力性、IGEと呼ばれるものです。式は細かくなるので省略させていただきます。

次に、Transition Matrix というものもあります。これは親の所得区分ごとに、子どもがある特定の所得区分となる確率をまとめた行列です。初めに質問したように、例えば「所得が下位1/5の家庭に生まれた子どもが成長して、所得が下位1/5に留まる確率」ですとか、「下位1/5に生まれた子どもが上位1/5に入る確率」といったものがありますが、「親と子どもの所得を何分位かに分けて、ある親の所得区分の子どもが、ある所得区分になる確率」をまとめた行列です。見方としては、家族が10あって、親と子どもがそれぞれひとりずつ居ると仮定すると、各行に書いてある数字が所得です。

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まず、所得をいくつかのグループに分けます。ある特定の所得区分の親について、子どもの所得区分がある特定の所得区分になる確率を求めて、それを行列に入れていくということです。例えばグループを80-100の低所得グループ、100-120の中間的グループ、120-140の高所得グループの3つに分けると、親と子どもがMovement1→1は低所得グループの親から低所得グループの子どもになる動き、以下3×3で9通りのムーブメントが何家族あるかを数えて、それぞれに条件付き確率を求めて行列にする。これがTransition Matrixと呼ばれるものです。

これで何が分かるかというと、左上の5/7は、低所得グループの親の子どもが低所得グループに留まる確率です。ど真ん中のゼロになっているところは、中所得グループの親から生まれた子どもが中所得グループに留まる確率。右下は高所得グループの親から生まれた子どもが高所得グループに留まる確率です。だから左上から右下への斜め対角線は、親と子どもが同じ所得グループに留まる確率で、それより右上が上昇モビリティ、子どもの方が親よりも裕福になっている確率、逆に左下の3つは、Downward、下降モビリティで、親よりも子どもの方が貧しくなっている状態を表わしています。

アメリカでは実際に研究したものがあるみたいで、所得分位を5つに分けて、それぞれ親の所得と子どもの所得を見たものです。

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対角線の太字になっているところが親と子どもが同じ所得分位に留まっているもので、右上は上昇モビリティ、左下は下降モビリティです。このように、所得の相関性を測る指標だけではなく、親と子の順位を比較する指標も存在します。

三玖 様々な指標があるということは、それぞれに長所と短所があるということでしょうか。

一花 はい、あります。IGEの短所と言われているのは、親と子どもの格差が広がったときに、それを捉えられないことです。

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そこで、格差の変化があったときに、var(ヴァリアンス)がバラツキを表わす指標ですが、親の世代の所得のバラツキが、子どもの世代の所得のバラツキと変化したとき、要は格差が変化したときに、IGEは格差の変化も影響を受けてしまうので、それを格差が変化しなかったものに補正するためにIGC(Intergenerational Correlation of Income:世代間の所得の相関性)という指標が存在しています。格差の変化は国ごとに違っているので、IGCはより国際比較に馴染みやすい指標とも言えます。

また、Transition MatrixとIGEは全く別のものを観察しているので、補完的な関係にあると言えると思います。IGE(所得弾力性)は親と子どもの所得区分を全く考慮せずに、親世代と子ども世代でどれだけ関連しているのかだけを見ていますが、Transition Matrix はより細かくて、貧しい家庭に生まれた子どもが貧困の罠に囚われてしまう確率や、アメリカンドリームで成功する確率などをきめ細かく見ていく指標として、IGEやIGCと補完的な関係にあると思います。

このあたりはざっくり理解していただければ良いと思います。IGEのように、親と子どもの所得がどれだけ関連しているかを測る指標があるということ、Transition Matrix みたいに親の所得分位と子どもの取得分位が、貧しい家庭に生まれた子どもが成功する確率、という捉え方で測る指標もあるんだなっていることだけ、頭に入れておいていただければと思います。

3.モビリティに関する理論

一花 次に、親と子どもの経済的ステータスはどのように/なぜ、伝播していくのか、という理論的説明として、いくつか有名なものを紹介します。

仮説として、裕福な家庭とそうでない家庭では、親の教育投資に違いがあるのではないか。例えば塾に通わせるかどうかとか、私立の中高一貫校に通わせるとか、大学も高い費用を払って通えるとか、そういう違いがまず思い浮かぶと思います。例えば、教育投資の結果として、学歴別賃金カーブは、高校卒なのか、短大卒なのか、大学卒なのかによって、これだけ違ってくるということが、親の教育投資が子どもの経済的ステータスに影響を与える経路としてみなさん認識されているものではないでしょうか。

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他にも親のスキルや職業、周囲の環境(親による居住地の選択)もしくは遺伝といった要因も考えられると思います。以降でこれらのポイントを概観しようと思います。

まず一つ目がFamily investmentモデル(Becker and Tomes(1979))です。親が子どもの人的資本に投資をして、人的資本が子どもの収入に寄与する、これらが合わさって、親の所得と子どもの所得の間にリンクが形成されるということを理論化したモデルがあり、数理的な証明がされています。

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I個の異なる家族が存在して、2つの期間、幼少期(c)と成人期(a)を個人が生きるという前提のもとで、幼少期において親から教育投資を受けて、それが子どもの人的資本に影響を与えるのが[1]式。
成人期において、子どもの所得は[1]で定義したH(人的資本)に影響を受けるのが[2]式。
親の投資は、親が自身の効用が最大になるよう、自分の所得を自身への消費と子どもへの人的投資に振り分けた結果決まるという、投資を決める[3]式。
これらを合わせると、最終的に子どもの所得は、親の所得に、人的投資を通じて影響を受けるという関数になる、ということをモデル化しています。

他にもモデルがあります。Skillsモデル(Heckman,Mosso(2014))は、子どもの所得が、子どもの認知的・非認知的スキルと本人の努力に影響を受けており、子どものスキルは親のスキルと親の投資に影響を受けるので、貧しい家庭の子どもへの早期の教育投資は、機会の平等を図る上で公正なだけでなく、スキルを高めるためには経済的にも効率的だと示したモデルになっています。

ちなみに認知的・非認知的スキルという言葉は、日本でも幼児教育の無償化や充実を図る議論をするときのキーワードになっています。「非認知的能力を高めるために幼児教育が大切だ」という研究結果として、上記のヘックマン氏の議論や、アメリカで貧しい黒人の家庭の子どもに幼児教育を行った結果を40年間追跡したペリー就学前調査の結果が紹介されています。
認知的能力はいわゆる知能やIQ。非認知的能力は人格的特徴、例えば忍耐力や自制心があるとか、リスクを考えて回避できるといった能力です。そういう能力が子どもの所得に影響を与えるということをモデル化しています。

他にもNeighborhoodモデルといって、親の投資が子どもの生きるコミュニティを決定し、決定されたコミュニティは、公教育などの教育を通じてだけでなく、周りにいる先輩がどういう進路を辿ったかというロールモデル効果や、周囲の子どものグループの効果を通じて、子どもの将来に影響を与えると考えるモデルや、遺伝モデルというモデルもあります。色々な経路を辿って、親のステータスが子どもに継承されていくことがモデル化されています。

上杉 色々なモデルを使って現状を分析しているということですが、目標数値の設定などはしているのでしょうか。例えば所得弾力性はこのくらいの数値になっている必要があるとか、そこを目指してどういう政策を打つべきか、ということはできるのでしょうか。

一花 いまのところ目標設定というものは聞いたことがないです。国際的なIGEの比較という論文をあとで紹介しますが、結論、どこが高い/低いの比較自体がなかなか限界を抱えているものとして受け止められています。

それはIGEが親の所得と子どもの所得を回帰して作る指標ですが、各国で調査手法やデータの出し方がバラバラで、日本でも別の調査からデータを引用しているのですが、そもそも親の収入のデータが無いので、親の年代、勤めている会社の規模や学歴から親の収入を予測してデータを作っているからです。国際比較の結果どこが高い/低いという結果は出てくるのですが、どれだけ高かったらいいのか、という議論は出てきにくい状況です。

4.モビリティに関する実証研究

一花 実際にモビリティが日本や各国でどうなっているのかを論文に基づいて紹介します。ここでは2つ紹介したいのですが、一つは「では日本のモビリティはいくらなの」というお話ですが、日本のIGEは0.35と言われています。これが高いのか低いのかというと、先進国の中では中間的な位置にあると言われています。米国、フランス、イタリアなどに比べてモビリティは高い。これらの国は0.4を超えているのですが、スカンジナビア諸国、オーストラリア、カナダに比べるとモビリティは低いという状況になっています。【IGEが小さい=モビリティが高い=より機会が平等】
【IGEが大きい=モビリティが低い=より機会が不平等】

つまり、アメリカなどに比べると相対的に機会は平等だと言えますが、北欧などに比べると機会はより平等ではないということです。同じ研究で過去数十年間のモビリティを測っていますが、1900年代前半から1960年代までに生まれたコーホート(人の集団)について、日本の所得構造の変化を考察した結果、モビリティは過去数十年間安定しているという結果が出ています。

先程のご質問の中で少しお答えしましたが、こういった研究にはなかなかデータが無いところが限界としてありますが、この研究も1935年から75年までに生まれた日本の親と息子・娘間の所得の世代間の継承の程度を検討しているのですが、親の所得についてはデータが無いので、父親の収入については、調査年、年齢、年齢の二乗、学歴、雇用状況、職業、職場の規模等に基づいて予測し、そうしたものに基づいてデータを作っていると言うことになります。

以上のように、日本のモビリティは0.35で、先進国の中では中間的な位置にあるとはされていますが、そもそもデータが2005年までのSSM調査のものを使っているため、格差が問題だと言われてきた90年代以降のモビリティの分析にはなってない。最新では2015年のSSM調査があるので、これに基づいた調査が今後は必要になると思っています。

また、国際比較の限界という点に先ほども少し触れましたが、測定方法の違いから各国で単純比較するのは難しい。また、先程三玖さんからの質問にもありましたが、絶対的な移動度が測られていないので、例えば低所得家庭の子どもの将来の見通しの度合いみたいなものを比較することはできていない。Transition Matrix だと、低所得の課税の子どもが将来成功する確率を出せるのですが、IGEはそういったランクや、低所得の子どもがどうなるかという確率にはなっていない。なので他の指標も合わせて見ていくことが、より多面的な分析に資するのではないかと考えています。

続いてもう一個だけ研究を紹介しますと、ギャツビー・カーブというものがあります。ギャツビー・カーブのギャツビーは、有名な「グレート・ギャツビー」という小説の主人公から取られています。自分も読んだことがあるのですが、大富豪、アメリカで巨大な富を築いたその男ギャツビーについての物語です。すみません、説明が雑で。要はアメリカンドリームを成功させたギャツビーさんの名前に由来しています。

これは国際比較にかかるものですが、モビリティの指標と格差の指標を各国でそれぞれの関係性をプロットした時に、結果が不平等である、つまり格差が大きいほど機会が不平等になっているような関係性が見て取れることを示したグラフになっています。

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機会の不平等を考える際には、格差や結果の平等も加味して考えないといけないということが示唆されていると思います。横軸が格差指標(ジニ係数)を取っていて、右側に行く(1に近づく)ほど格差が大きく、左側に行く(0に近づく)ほど格差が小さいという指標になっています。縦軸はモビリティの指標として、IGE を使っています。IGEは格差を加味していない指標なので、これだけで国際比較は難しいと申し上げましたが、ここでは暫定的にIGEを使っています。

日本はIGEが0.35ぐらいだと先ほど紹介しましたが、真ん中くらい、アメリカやイギリスなど、モビリティが低く、逆に北欧諸国やカナダ、オーストラリアは日本よりモビリティが高い状況になっている。横軸を見ると、アメリカやイギリスは日本よりも格差が大きく、日本はそれほど小さいとも言えないですが、アメリカやイギリスよりは小さい。逆に北欧諸国は格差が小さくてモビリティが高い。これが、機会の平等と格差には相関関係があると示しているグラフで、ギャツビー・カーブと言うものです。

では、なぜ格差とモビリティは相関するのか、親の経済格差が大きくなると、それが世襲されて子ども世代のモビリティも低くなっているのかという説明ですが、これは先程の世代間の経済的ステータス継承の理論からすると、格差が大きいほど、富裕層と貧困層の間で子どもの教育投資や投資の効果、学校の質、周囲のコミュニティの違いに大きな差を経験することによって、よりモビリティに影響を与える、という説明ができます。

<#後編へ続く>


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