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私たちの世界線にたしかに日向翔陽はいるのだ~ハイキュー完結に向けて~

ボールを落としてはいけない、持ってもいけない。なんて難しくて面白いバトンなんだろう。
バレーボールって。

本日2020/07/20。本当なら東京オリンピックが始まろうとしているなか、華々しく大団円を迎えたハイキュー!!という漫画について、思いの丈を綴ろうと思う。感謝も、感動も、うまく表せなかったこの涙を、少しでも伝えられたら、そしてたくさんの人に読んでもらえたら嬉しい。


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弱小でようやく出た試合は一瞬、チームメイト不足によりクラスの友達だけが知っている。彼はバレーがやりたいのだということを。

バレーに貪欲な主人公の日向。
高校で憧れのバレー部に入った日向の夢は、バレーをすることからより具体的に、誰よりも長くコートに立つことへと変わる。
目標自体は、独善的なはずなのに、バレーという競技がそれを大きく変えてくる。ひとりでは、繋げないからだ。長くコートに立つために必要なのは、技術と信頼。
そして強すぎる仲間からの信頼は、時に脅迫でもあるのだった。
高校時代という一瞬の時を、濃く過ごしていく上で得るのは、仲間と、そして、「烏野の10番」という称号。認知されることは、生きているということだと思う。
自分の存在は、他人に知られることで浮き彫りになっていくものだとも。
日向は卒業後、単身ブラジルへと渡る。
ここのシーンは、初めに一人でバレーをこなす日向と全く同じでありながら、多分初めのシーンを思い浮かべる人は誰もいないだろう。
見知らぬ街、日本の裏側。でも、その手には培った技術と、新たな自信があるのだ。
もちろん不安に飲み込まれそうになることもある。でもそこで他者と彼をつなぐものは、いつでも「バレーボール」という競技で。
満を持して帰国する日向を待っているのは、かつて日向を認知したライバルたち。今度は彼らが仲間となり、そして仲間でライバルは敵になり。
同じコートに立つ者たち誰もが全力で、「もっとこの時間を続けたい」、
つまり、「誰よりも長くコートに立ちたい」と思っている。
仲間に夢を伝播させるのではなく、同じ夢を持っていた者たちと仲間になるという展開が憎い。
チームメイトもそれぞれ、自分の才能・努力・競技への愛ゆえに、挫折した過去があって。だからこそ今があり、かつお互いを全力で戦っても壊れない玩具だと知っているのが、それぞれ独善的でサイコーだ。
そして認知はより広がって、今、来年、日向は「日本の10番」を背負って世界に知れ渡る。
誰にも知られなかった日向は、世界に知られ、そして日向がバレーを始めるきっかけとなった小さな巨人のように、ふと日向の姿をみた少年を魅了する。
他者に知られることで、バトンを確かに繋いでいく物語だなと思う。
落としてはいけない、持ってもいけない。なんて難しくて面白いバトンなんだろう。バレーボールって。
友情・努力・勝利。ジャンプの王道漫画としてド直球でありつつ、
読み終わって思うことは、やはりバレーボールって、素晴らしい競技だなということで。

たまたまこの漫画を読んでバレーを始める人がいるのなら、
オリンピックのあの日、滝ノ上電気店で日向をたまたま目にする少年と、
そして小さな巨人を見てしまった日向と、私たちは同じ世界線に生きているのだと思った。

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8年半にわたる連載、本当にありがとうございました。

最終編になってから、更にに面白くなるなんて思わなくて、リアルタイムで毎週楽しみにできたことがもう嬉しくてたまらない。

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