右も左もわからなかった頃の話

私は右と左を理解するのが遅かった。

身近な人が左利きだと言う事も要因の一つだろう。

お茶碗持つ手が左手で
箸を持つ手が右手だよ
そんな風に教わっても、目の前の身内が逆で持っているので

？なんのこっちゃわからん。

状態だったのである。

おそろしい事に小学校三年生くらいまでは右と左はどっちがどっちかわからないまま生活していた。
右と左の概念すらわかっていなかったので、
どちらかの手が右という名前で、どちらかの手が左という名前なんじゃないかなー？くらいにしか考えていなかった。

そんな状況を自分自身もなんとなくヤバいと薄々勘付いており、家族にもごく最近まで伝えていなかったので、家族は私が右と左にここまで混乱していた事を知らなかった。
しかし小さかった小3の私は、右手と左手についての妄想がかなり広がって広がりすぎ、もはやホラーかサイコパスか、と言った世界が生まれていたので、聞いてほしい。

右と左の区別がつかない私が一番混乱するのは、
ラジオ体操とかで見本の人が前にいる時だった。
身内(左利き)を前に左右の話が出るときは、
身内の真似をすれば合っているのに、
ラジオ体操のときは、目の前の人の反対の行動をとらなければ正解じゃない。

　

わけがわからん。

何だあいつら(見本の人)なんで見本なのに反対の行動をとらなければならんのじゃ、
あいつら(見本の人)私と右と左の位置が違うのか…？
…？もしかしたら私の反対の位置に右手がついてるのか…？

↑

意味がわからないでしょう。私も何を考えていたのかわかりません。

しかし否定する人がいない当時、小3の私の妄想は止まらないのである。以下は本当にわけがわからないので良く想像してほしい。

身内は私と同じ位置に右手と左手がついてる。
見本の人だけ右手と左手が私と逆！
…見本の人は、もしや選ばれた民？

…わかった！あいつら右手と左手を逆にする手術をしてるんだ！

多分、見本の人になる前に大人たちが
お前今度から前で見本しろ
って言ったあと、秘密の病院に連れて行って
右手と左手を逆にする手術をするんだ！

いやー！
すごいな選ばれた民、見本の人！
まさか手術をして右手と左手を逆にするなんてなかなか思いつかないぜ…！

うん？でも待て、そんな病院聞いたことない。
…もしかしたら選ばれた民専用だから口外しちゃだめなのかな…？
そっかー！すごいな選ばれた民！

私も選ばれた民になりたいなー。
手術ガマン出来るなー？
両腕を切って左右を付け替えるって、結構大変だよなー

バカでしょ？えぇ、馬鹿なんです。

しかもこの妄想、小４くらいまで続いた。
なんで終わったかというと、
見本の人にはなれたけど、手術をしなかったから（笑）

なんとなく気がついていましたが、ちっとも手術の話が出ないので、

ああ、不正解だったんだな。

とすんなり理解に至った訳だ。

本当に左右を理解したのは多分、その時だと思う。

この話、今するとたいてい引かれる。

でも、子供が何も教わらずに自力で答えを見つけようとすると案外こんなものかも知れない。

お宅のお子さん、大丈夫ですか？
私のように、勘違いをしているかもしれませんよ。