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州が変われば道義も変わる、道義が変われば法律も変わる


「その日暮らし」の人類学~もう一つの資本主義経済~

年末年始の休暇中に小川さやかさんの『「その日暮らし」の人類学~もう一つの資本主義経済~』を読んだ。

ご自身がフィールドワークをされているタンザニアの経済を丹念な現地での取材を元に考察されており、興味深かった。タンザニアのビジネスの要点をかいつまむと下記の様な感じ。

  • 小規模の個人ビジネスをいくつか兼業しながら生計をたてている人が多く、短期の利益の最大化に焦点があたっている

  • 事業規模ではなく、仲間内のネットワークがリスクヘッジとなり、その時に余裕がある人がない人を助けるという互助形態で成り立っている。

  • 知的財産や著作権のようなグローバル資本主義のルールは適用されないインフォーマル経済が無視できない規模になっている。

総じて、「Living for Today(今日を楽しく生きる)」に人々のフォーカスはあたっている。「将来の幸せ」のために今を我慢したり、約束事で縛られることも自分自身が人を縛ることも嫌う民族性があるようで、宇宙人の話を聞いているようでなかなか面白かった。中でも心に引っかかったのが、「適法性よりも、仲間内での道義性が重視される」という点。なので、違法コピーなどは国際ルールには反しているが、道義的には彼らにとっては問題ないので、タンザニアでは平然と行われている。所変われば道義も変わり、道義が変われば行動も変わるということが見て取れた。

州が変われば道義も変わる

この6月にアメリカ南東部のノースカロライナ州から西部のカリフォルニアに引っ越した私。「アメリカ合衆国」という国名の通り、アメリカは独立した州の集合体であり、同じ国なのに州ごとに違うものだと色々なことに驚かされている。現代社会の「道義」の一つである環境意識もかなり異なり興味深い。ノースカロライナでは、家にあるゴミ箱は普通ゴミとリサイクルゴミだけなのだが、カリフォルニアはそれらに加えてコンポストゴミがある。日本で暮らしている人にはイメージつきにくいかもしれないが、ゴミ箱というのは下記のサイズだ。もちろん、これは共有ではなく一家庭分であり、なかなかのサイズで結構場所をくう。

左から普通ゴミ、リサイクル、コンポスト

市から、「ダンボールについてはリサイクル率は85%ですが、プラごみについては30%だから頑張りましょう」みたいな通知分が郵送されてきたりして環境意識が高い。街中を走る車のテスラ率も高く、粗大ごみの処理にかかる値段もかなり高く、ノースカロライナとは大きく異なる。

道義が変われば法律も変わる

カリフォルニアに引っ越してきて、初めに一番驚いたことはコストコにウィスキーなどのハードリカーが売っており、さらに日曜日の午前中でもハードリカーも含めアルコールが購入できることだ。何に驚いているかわからない方も多いと思うが、ノースカロライナではハードリカーは州の運営するABCストアでしか購入することはできず、一般的な食料品店ではお酒はビールやワインしかおいていない。さらに、日曜日の午前中はアルコール類を一般的な食料品であっても一切購入することができない。日曜日の昼からホームパーティがあり、そこにお酒を持参するとなると前日に購入をしないといけない。
ノースカロライナは南部諸州で、平均的なアメリカの州と比較するとキリスト教信者がいまだに多く、キリスト教の安息日にあたる日曜日は、「酒なんて買ってないで教会に礼拝にいきなさい」という感じなのだろう。これは建国前に設立された「ブルー法(Blue Laws)」の名残らしいが、プロテスタントによって建国された伝統的なアメリカの価値観が色濃く反映されている。一方で、より前衛的な州であカリフォルニアでは、こんな規制は時代遅れとばかりにさっさと緩和されている。州によって「道義」も異なり、それに伴い「法律」まで異なるのは州政府の力の強いアメリカ政治の特色だろう。

州ごとの違いは、不便か、快適か

別の州に引っ越してみると、自動車免許はとりなおさないといけないし、前の州で取得した医者の診断書は効力を発揮しないしで、不便はそれなりにある。日本の感覚では「同じ国なのになんで?」ということが多い。自動車免許の筆記試験など、異なる次元でカリフォルニアのほうが難しく、同じ国でこんなに難易度に差があっていいのか、という感じ。
が、その反面、同じ国民が住んでいるのに、文化や風習の違い、そして法律まで違ったりするので、新しい新鮮な発見があり、楽しむこともできている。引っ越すことにより、国名に何故「合衆国」と入っているのか、より強く実感することができた。今後も州ごとの違いについても紹介していきたい。

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