プログラミングはゲーム作りにおける「ペン」である

 個人開発のゲームを色々遊んでいると、細かい操作感覚がおかしかったり、簡単に発見できそうなバグが残っていたり、プログラミング技術の低さを感じる時がある。近年はプログラムが組めなくてもある程度ゲームを作れる環境が進化した。プログラマ体質ではない様々なクリエイターがゲームの世界に参入してきている証だろう。
 僕は好きな分野なので気づかなかったけれど、プログラミングに苦手意識を持つ人は多いらしい。ゲーム作りという「創作」をしたいのに、プログラムという「理屈」と向き合う時間が長いのがゲーム制作だ。ネット上で暗号のようなソースコードを読み解き、難解なエラーメッセージとにらめっこする、クリエイティブとは程遠い作業が待っている。
 プログラミングが苦手でもゲームが作れない訳ではない。ゲームのジャンルによっては比較的簡単なプログラムだけで済むし、むしろその制約を生かして独特な作品が生まれるケースもあるにはある。それでも、僕はプログラミングが好きではないゲーム開発者たちに「いつかは学ぶべき時が来る」と言いたい。

 ゲームのアイディアをテストする試行錯誤の速さは、プログラミングスキルに大きく依存する。ここが苦手だとアイディアを自在に展開できず、技術力の低さがそのままゲームデザインを劣化させる。
 逆に「時間さえかければ実装できる」という自信があれば、作れないアイディアを無意識に捨てずに済む。ゲームデザインの幅とプログラミングスキルは直結している。

 操作性のブラッシュアップなど、手触りの良さはプログラマの腕で決まる。敵キャラクターを生き生きと動かす、エフェクトを華やかにするなど、プログラムがゲームの質感も大きく左右する。
 素人目にはグラフィックデザインの良し悪しが目に入りやすく、絵作りから凝ろうとする初心者も多いと思う。しかしゲーム開発に慣れると、絵を綺麗に描くだけでは作れない動きが沢山あることに気づくはずだ。

 プログラムを避けてゲームを作るのは、ペンを持たずに絵を描くようなもの。既存の絵を切り貼りして組み合わせで絵を作る...つまり、誰かが書いたコードを深く理解せずそのまま流用するなど、すでにあるパーツでごまかすことになる。自分の思い描いた線を引くのは難しい。
 プログラムの精度はペンの細さに例えることができる。極太ペンで絵を描くならざっくりと形状を描き出すのが限界だが、細いペンがあれば緻密な描き込みが可能だ。

 もしプログラミングに苦手意識があるなら、最初からしっかり勉強する必要はない。まずはゲーム制作を楽しむのが大事だと思う。そうして経験を積み、もっと凝ったゲームが作りたいと思う頃には、自然とプログラミングを学ぶ意義に気づくはずだ。

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