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正規雇用と非正規雇用の格差なんて、そのうち問題ではなくなる

■ 正規雇用と非正規雇用の違い


正規雇用と非正規雇用の明確な区分が求められている。

それに対して各企業では役職職責や給与規定を定めたり、常勤・非常勤それぞれの役割や職務ごとの手当などを分類化して公開しているだろう。

それでも職場内ではパート職員や契約社員らから「同じ仕事をしているのに、正社員のほうが優遇されている」といった不満が出る。

おそらく、この「同じ仕事をしているのに」という点がポイントであり、それを労働基準監督署などが言うところの同一賃金・同一労働といった話や、世間で言われている格差是正という話になるのだと思う。

そもそも、正規雇用と非正規雇用では何が違うのか?

ざっくり言えば雇用形態が違う。もう少し詳しく言えば、業務内容や業務範囲などの労働条件、雇用期間の有無、労働日数や労働時間、基本給や手当などの給与面、あとは福利厚生の違いなどが挙げられる。

企業は事前にこれらの項目を労働条件通知書などにより提示し、労働者はそれに対して雇用契約を締結することで雇用する・されることに合意したものと見なす。

つまり、この時点ですでに正規雇用と非正規雇用のどちらかであるかは、労働者自身は理解して同意のうえで働くことになるのだ。
しかし、それにも関わらず労働内容と待遇差が目について、それが不満につながることがある。

それは実際に働いてみたとき、特に非正規雇用の労働者が正規雇用と比較したとき「同じ仕事をしているのに」「あの人たちより働いているのに」という感覚に陥るからだと思う。


■ 「責任」「見えない仕事」は差になるのか?


このようなことを言うと、正規雇用の労働者から「パート職員とは背負っている責任が違う」「契約社員の見えない仕事もある」といった反論が出ることは想定される。

しかし、厄介なのは「責任」とか「見えない仕事」を証明することである。

それが対外的あるいは社会的に証明されないから、「パートだって責任感をもって仕事をしている」とか「契約社員だって見えないところをフォローしている」といったマウントのとり合いになってしまう。

そもそも、お互いがやっている業務を見ようとしないからマウントのとり合いになってしまうことを理解したほうが良いと思う。
特に担当を分けて組織化したり、分業によって生産することが当たり前の時代において、お互いの仕事を把握することも難しいのに、それを尊重し合うことはハードルが高い。

そのため、個人的にはこの手の討論をするときに「責任」とか「見えない仕事」という曖昧な要素は主張することは推奨しない。別に主張しても良いが、それを伝えたことで自己満足で済ませたほうが良い。


■ 制度や規程で明確化するのは限界がある


このような事態になってしまうから、正規雇用と非正規雇用の違いと実際の差が不満となり、今やSNSなどを通じて社会問題になっているのだろう。それに対して国が、格差是正や同一賃金・同一労働といったキーワードをもって解消しようとする構図になっている。

それは厚生労働省やら労働基準監督署から各企業に対して、法令に基づいて整備するようにお達しがかかる。それを各企業が規定や指針を作り、雇用している労働者に開示する。そして時には、労働基準監督署の指導などを受けて、より法令に即した体制にするように整備を要請される。

つまり、制度によって正規雇用と非正規雇用の差を是正し、それぞれの雇用形態の違う労働者らが不満なく働けるようにする狙いがあるわけだ。

しかし、経営や人事に携わる立場から言わせていただければ、制度により正規雇用と非正規雇用を明確に区分化は難しいというのが本音である。

それどころか、現状の雇用形態が今後も続くと、これから将来的にもっと「同じ仕事をしているのに」という不満を抱く非正規雇用の労働者は増えるだろうと思う。

その理由は、世の中の仕事はもはや「フラット化」しつつあるからだ。

ここで言うフラット化とは、誰がやってもほぼ同じ業務内容としての平坦さを意味している。業務のコモディティ化と言っても良いかもしれない。


■ 生産手法がフラット化している


テクノロジーの進化は日進月歩であり、世界情勢や環境変化も秒単位で変化している。それに対して柔軟に適応することが、生きのびる術と言っても過言ではない。

どこに行ってもネット環境は整備されているし、平和な日本において職場が攻撃されることもない中で、ここ数年でコロナ感染という大きな環境要因によって働き方は大きく変わった。

しかし、それは別に今に始まったことではない。世界は産業を発展させるために機械化をどんどん進めて経済を加速させてきたし、現代では単純作業はシステムにより簡便化できるし、一定の思考メカニズムがある仕事はAIが引き受けつつある。

もはや、よほどの新興産業でないかぎりは機械とITの力は当然あるものと思ったほうが良い。

しかし、このように人間が行ってきた仕事が機械やITによって代替されるということは、人間が行う仕事は徐々に限定されるということになる。

誰が操作しても同じ効果を出す機械、
誰がデータ入力しても自動分析して有益な情報を得られるシステム、

このような便利ツールが仕事で活用することが当たり前になっている時代において、「正規雇用と非正規雇用の違いは何か?」という議論そのものは意味をなさないのかもしれない。

機械やITなどのテクノロジーの進化によって人間の仕事がゼロになることはないだろうが、少なくとも、現在人の手と頭を使っている単純作業はなくなることは想定される。

そうなると、働き方そのものが変わり、引いては正規雇用とか非正規雇用とかいう考えも廃れていく可能性だってある。


――― 本記事では結論もオチもない。

ただ一つ言えることは、正規雇用と非正規雇用の違いに対して「同じ仕事をしているのに」「責任が違う」などの疑心暗鬼になっているうちは、まだ平和なうちなのかもしれない、ということだ。

それは、不満を抱くほどの業務や作業がまだ残存しているということであり、それがいつかなくなるという未来像に目を向けていないとも言える。

少し辛辣なことを言えば、このような不満を抱いているうちは暇なのだと思う。実際、正規雇用だろうが非正規雇用だろうが、仕事や職場環境などを愚痴っぽく言っている人は手より口ばかり動かしている。

反対に自分に対して軸のある方は、求められている仕事を理解して黙って成果を出すことに邁進している。そのうえ、勉強など自己研鑽する時間をもっている。そのような人は応援されるし、仮に非正規雇用だとしても正規雇用への登用として声もかかる。

そのうち正規雇用とか非正規雇用とか言っている時代ではなくなるだろう。
そのときには自身でキャリア構築することが当たり前になっているかもしれない。その時に向けて準備を進めるのも1つである。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめていただき、感謝。

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