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#01‗なぜ、伝統文化に注目するのか

こんにちは!地域循環型ミライ研究所(以下、ミライ研)の田中健人です。
ミライ研では、地域の持続的な発展持続可能な地方創生の実現に向けて、地域循環型社会の共創を主なテーマとして調査研究しています。

私たちは、地域課題のみに注目するのではなく、日本が世界に誇れるさまざまな魅力(文化・食・自然・歴史)そのものにフォーカスした調査研究によって、地域のミライを創っていきたいと思っています。

本noteでは、私が取り組む研究テーマ「伝統文化の保存と継承」について、私がなぜ「伝統文化」という地域の魅力に注目するのか、その背景について自己紹介的に書けたらと思います。


研究所のめざすテーマ
「持続可能な地方創生」


まず、ミライ研のめざすテーマに少し触れたいと思います。

近年、地方圏では人口減少や東京一極集中などの課題を背景に、さまざまな施策・政策が行なわれ、地方創生が進められています。その一方で、そうした施策・政策の中には、単発的かつ一時的なものになってしまい、持続可能な地方創生策になっていないケースも多くあるようです。持続的にならない要因はさまざまなだと思いますが、世界的な潮流でもある「持続可能性」の観点で地方創生策を考えていくことは非常に重要な視点です。

そうした実態を捉え、ミライ研では持続可能な地方創生のあり方を調査研究しています。地域経済やコミュニティが活性化しつづけるあり方を探求し、実際に地域を舞台にしたモデル実証にも取り組みます。その結果をレポートや政策提言等を通じて対外的に広く情報発信をしていくことを志向しています。

地方・地域が持続的に発展しつづける結果として、日本各地において通信やテクノロジーを使うヒトやモノが増えていけばよいなと思っています。

調査研究キーワードは「循環」


そのような持続可能な地方創生の調査研究においては、ミライ研の名称にもある「地域循環型ミライ研究所」の意味合いにも通じますが、地域のヒト・モノ・カネ・データの「循環」がキーワードだと考えています

例えば、都市から地方への人の流れが継続的に生まれるヒトの循環だったり、文化や自然等の地域資源を保存・継承していく活動にお金が再投資される仕組み・あり方を考えること(モノ・カネの循環)です。

また、デジタル社会の現代においては、人々の行動情報や人流情報など、さまざまなデータの活用・循環も重要な視点です。

このような地域社会を形成するヒト・モノ・カネ・データの”循環”をいかにして生み出していくか、地域の持続的な発展に向けて調査研究に取り組んでいます。

個人研究テーマ
「伝統文化の保存と継承」


その循環を実現していくうえで、まず「地域資源(モノ)の保存と継承」に優先的に取り組まなければならないと私は考えています。文化や自然等の地域資源がなくなってしまってからでは、地方創生も後の祭りになってしまうと思うのです。

そこで、私が注目したい地域資源が「伝統文化」です。

遠い昔から連綿と受け継がれてきた日本の伝統文化のあり様はさまざまです。演劇、舞踊、工芸、芸道など日本を象徴する貴重な文化であり、国際的な競争や交流の観点でも守っていかなければならないものです。

しかし、後継者不足等の社会変化の中で、その存続が危ぶまれています。例えば、茶道では、「令和3年 社会生活基本調査」(総務省統計局)によると、令和3年の茶道人口(何らかの形で余暇にお茶に関わった人口のこと)は約92万人であり、ここ25年で3分の1ほどになっていて、茶道人口は減少の一途をたどっています。

こうした伝統文化の衰退は、決して茶道に限った話ではありません。伝統文化の保存と継承は、より一層強化していかなければならない日本社会の重要な課題と改めて感じます。

伝統文化のあり様
「生活文化もそのひとつ」


伝統文化と聞くと、歌舞伎や能楽等の演劇や、茶道や武道等の芸道などの少し敷居が高いイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。私自身も同じように思っていましたし、実際に家族や友人に聞いてみても、「歌舞伎や能、茶道等のイメージ」「敷居が高くどこか自分とは遠いもの・・」という反応も多くありました。

(写真:東京都庭園美術館で開催された高校生茶会イベントにて)

しかし、私は今ではそうではなく、地域の暮らしに根差す「生活文化」も伝統文化のひとつと思うようになっています。それらは土地の暮らしとともに創られた習慣や風習、祭り、工芸、芸術、服飾など多種多様で、こうしたひとつひとつの生活文化が地域では「伝統」という形で受け継がれてきた。だからこそ、地域ごとの違いが生まれている。

そうした地域の独自性が詰まっている「生活文化」に着目し、伝統文化の保存と継承に取り組んでいきたいと考えています。

(写真:新潟県佐渡島の裂き織り文化を体験する筆者)

伝統文化の魅力
「土地の記憶のようなもの」


加えて、地域毎の伝統文化の背景には、今に至るまでのその土地・風土にまつわる「ものがたり(土地の記憶のようなもの)」があるように感じ、それは地域のアイデンティティではないかとも思えます。

これまで新潟県、徳島県、和歌山県など地域の人を訪ねる中で次第にそう感じるようになりましたが、昨年9月大阪で開催された「ツーリズムEXPOジャパン2023」にて、「日本遺産」というものに出会ったことにも大きなきっかけです。

「日本遺産」とは、平成27年に創設された文化庁認定の制度で、地域の文化財や伝統文化に関する歴史的経緯、地域の風土に根ざした世代を超えて受け継がれている伝承や風習など、地域を形成するさまざまな要素を踏まえた「ストーリー(ものがたり)」が遺産として認定されているものです(令和6年1月現在、認定ストーリー104件)

遺産と聞くと、どこかの遺跡・遺構等の文化財や景勝地をイメージする方は多いのではないでしょうか。しかし、この「日本遺産」はそうではなく、それらが存在する地域の盛衰や土地に対する人々の思い、暮らしや産業との繋がりなど、目には見ることができない地域の“ストーリー(ものがたり)”です。そのストーリーを体感するために各文化財等(構成文化財)を巡る、といった新しい文化観光に向けた取り組みです。

このように伝統文化には、「ものがたり(土地の記憶のようなもの)」があり、それらはその地域にしかない独自性であり、人々を惹きつける魅力ではないか。そう考えていくと、地域を考えるうえで伝統文化は欠かせないもので、これらが途絶えてしまっては地域が地域でなくなってしまうのではないか、といった危機感を感じました。

それが、私が伝統文化の保存と継承に注目した理由です。

伝統文化を守る意義
「伝統が伝統を守る」


もうひとつ、伝統文化の保存と継承に注目したいと思う理由が、伝統文化を守っていく意義です。

私は、伝統には他の伝統が結びついているように思えます。例えば、先日初めて体験をしてきた茶道でいえば、茶室には伝統的な建築技法が散りばめられていたり、茶道で使用するお道具には伝統的な工芸品が利用されていたりします。また茶道文化を守り継承してことで、お茶畑を営む地域産業を支える面もあると思います。

こうした茶道をはじめとした一つの伝統を守ることが、ほかの伝統の活用の“場“を守ることになる。サプライチェーンではないですが、それぞれの伝統が互いに支え合っている連鎖のようなものを感じます。そうゆう意味では、伝統文化を保存し、継承する取組みや調査研究には、改めて大変大きな意義があるように思います。

最後に


地域の暮らしに根差す「生活文化」も伝統文化のひとつで、それらは土地の暮らしとともに創られた習慣や風習、祭り、工芸、芸術、服飾など多種多様。こうしたひとつひとつの生活文化が「伝統」という形で受け継がれてきたこそ、地域ごとの違いが生まれている。

そして、そうした伝統文化の背景には、今に至るまでのその土地・風土にまつわる「ものがたり(土地の記憶のようなもの)」があり、それは同時に地域のアイデンティティではないかとも思える。地域にとって欠かすことができない貴重な資源であると再認識しています。

だからこそ、実際にもっと地域をたずね、伝統文化と地域の関係性やその持続可能な保存と継承のあり方を調査研究したいと思っています。そして、伝統文化の価値の残し方・魅せ方・伝え方(座学型/体験型、オンライン/オフライン等)において、デジタル・テクノロジーの活用可能性も探求していきたいと考えています。

これからの調査研究においては、単純に伝統文化を映像化するとか、メタバース空間で文化体験をつくるとか、デジタル・テクノロジーありきで調査研究を進めるのではなく、きちんと地域に足を運び、伝統文化の担い手や携わる関係団体・企業・活動者にお話を伺ってまいります。ぜひ、既に調査研究あるいは熱くご活動されている方々にお力を賜れますと幸いです。


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