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ジョギングを始めて気付いたこと。見慣れた街が違って見えた!

コロナで続く在宅勤務、再度の非常事態宣言で以前より外出自粛を意識するようになった。昨年春の在宅勤務以来、身体が鈍りコロナ太り対策で週に2回程度ジムに行くようにしていた。

それまで筋トレをしていた訳ではないので、筋力アップのマシンはそれ程何回も続けられる訳ではなく、結局は15~20分程度で早くもお疲れモードになる。折角ジムに来たのにこれで返るのは悔しく、ランニングマシンを使い時間を稼ぐ。

でも全くの景色の変わらない動くベルトの上を回し車のハムスターのようにひたすら足を動かす、否、動かされているのはつまらない。ジムによってはテレビをみながら走れるところもあるが、私の行っているジムは公営で料金が破格に安いゆえ、その様な贅沢品の設置はない。

最近18:00の在宅勤務後にトレーニングウエアに着替え、車で15分掛けてジムに行くのが億劫になってきた。どうせ走るのであればわざわざジムまで行くこともない、もう日は落ちて暗いけど近所を走ればいいや、と家の周辺を走ることにした。

それまでは、苦しそうな顔をしてジョギングしている人はあまり見ない、それなりにみんな自信があって走っているんだろうなぁ、とジョギングに自信が無い私は青息吐息の歪んだ顔を晒すのを恐れ、家の周辺を走ることを躊躇っていた。でも夜は人目が少なく、苦しい顔をしていても気づかれにくい。

だいたいのコースを決めてから5Km程度を目標に走り始めた。はじめは外気の冷たさに負けそうになり指先も痛かったが、15分も走ると身体が温まってきた。「よし、調子が出てきたぞ。このまま快適に走り終えてやる、あまり苦しい顔にならずに行けるのでは。」と気持ちも軽くなってきた。

その時だった。タッ、タッっと静かな足音で滑るように私の横を若者が走り抜けていった。抜け際にちらっとこちらを見たような気がした。たらたら走っている親父をバカにし、ニヤッっとシニカルに口元をゆがめた顔をしていた…のかもしれないなぁ。表情は良くわからなかったが…。

でも、自分の子供くらいの年齢だ。息子はいないが自分の娘と同じくらいの年齢の男子に勝てるわけがない、普段碌に練習していないのに勝とうと思うの方がどうかしている、と自分を納得させた。彼はあっと言う間に遥かかなたに消え去っていった。

心のさざ波を抑まったところで、自分のペースでいい、楽しい経験になれば次回も走ろうという気になる、と気楽に走ることにした。

廻りの景色を眺めながら、マイペースで走ると何回も通ったことがある路だけど、普段は全く気付かなった景色が目に入ってきた。表通りから少し奥まったところにモダンなつくりの場違いな豪邸を見つけた。地元の人の抜け道になっているらしい、人が一人が通れるだけの道幅の路地に気付いた。普通の民家だと思っていたが壁にうっすらとペンキの跡が残る商店の名前をみつけ、「こんなところでお店をやっていたんだ」と軽く感動した。

家と家の隙間の小さな公園位の広さの霊園を発見した。霊園と呼ぶには小さいが、墓石の外観から数十年前に造られてたものと思われた。戦前からあるとすれば、このあたりは農家しか無かったので、豪農の一族の墓か、でもそれにしては墓石が多いので小作の人たちの墓もあるのか…。

匂いにも気付いた。私の住むところは畑や雑木林が多く残る田舎の雰囲気が未だ濃厚に残り、市役所周辺に2~3軒の牛を飼っている酪農家がある。牛舎は表通りから見えにくくなっており、車で近くを通っただけでは気付かない。牛舎の存在は知っていたが、夜に近くを走ると牛の匂いがかなり広い範囲で漂っていた。

近隣には多くの民家があり、この匂いにいつも悩まされているんだろうな、でも牛舎の方が昔からあったはずなので匂い覚悟で引っ越してきたのだろう、いや物件の内覧に来たときは匂いの説明は無かったのかも…などと酪農家と近隣住民、そして物件を紹介した不動産屋とのいざこざを心配しながら走った。

最寄り駅周辺まで迂回して帰宅することにした。すると数十メートル先を娘が歩いていた。会社から帰ってきたのだ。今日は在宅勤務ではなく出社していたことを思い出した。一緒に家まで歩いて帰るのは、娘は嫌がるだろう、私も何を話して良いのか気まずい。ここは爽やかに「お疲れ!」と声を掛けて走り過ぎようと考えた。

追い抜きざまに声を掛けようと、追い抜いたところで振り向いた。人違いだった。声を発する直前に間違いに気付き、咄嗟に「すいません、間違えました!」とお詫びして、ダッシュで逃げた。

相手の女性はさぞ驚き、怖かっただろう。表情には出ていなかったように思うが、知らないおじさんがいきなり後ろから追い抜きざまに笑いながら話掛けてきたら、私でも怖い。女性の鞄に妊婦がつけるバッチがついていた。胎児に影響がなければ良いが。

近所の初めてのジョギングは、大袈裟に言えばワンダーランドを巡る冒険だった。忘れられた街の歴史に思いを巡らせ、ここに住むことで負うことになったしがらみやいざこざを勝手に妄想した。見慣れた風景からいくつも発見があり、この街の探索に興味が湧き、そして、愛おしくなってきた。

ジムでの5㎞は果てしなく長く感じたが、ご近所のジョギングは時々息が切れて苦しいこともあったが、たいくつしなかった。帰宅後地図アプリで調べたら7.2Kmを走っていた。マイペースで勝手なことを妄想しながら、続けていきたい。ただ、安易に人に声を掛けるのは慎しもうと思う。変質者に間違われないように。


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