見出し画像

中日 2023年新ユニフォーム 〜真のドラゴンズブルーは何処にある?〜

2023年11月26日、中日が新ユニフォームを発表した。

昨オフ立浪監督が就任した当初は、ユニフォーム変更の噂も一部で囁かれていた中で監督による「契約の関係がどうとかこうとか」という発言もあり、変更がないことが明言されるという奇妙な状況だったが、それから1年が経過。

1年間の「みきわめ」を終え、来季いよいよ本格始動かとも言われる「立浪ドラゴンズ」。その戦闘服は一体どのようなものになったのだろうか。

新ユニフォーム概要

まずは、新ユニフォームの概要をおさえておこう。

引用:中日スポーツ

主な変更点は以下の通り。

・ラケットライン、色付きボタンが廃止
・赤い胸番号が復活
・ドジャース型の背番号・胸番号書体が復活
・背ネームがゴシック体からブロック体に変更
・右袖に「CD」ロゴ
・青が鮮やかな色味に変更
・ビジターの「CHUNICHI」ロゴが筆記体に変更

大幅なデザイン変更はなく、細部のマイナーチェンジに留まった。

元々かなりクラシカルなスタイルを志向したユニフォームだったため、次のユニフォームではどういう方向性を打ち出してくるか、とかなり注目をしていたのだが、基本的なクラシック志向は変わらず。

個人的に立浪監督は「星野」でもなく「落合」でもなく「立浪」と言えるだけの人物であることから、「(それが良いか悪いはかともかく)全くの新機軸を打ち出す」という線もありかもなどと思っていただけに、少し残念に思う気持ちもなくはないが、地に足のついたスタイルの継承は好感が持てる。

①ラケットライン、色付きボタンが廃止

前ユニフォームの1番の特徴でもあったラケットラインと色付きボタンが廃止となった。

これに関しては好みの問題もあるとは思うが、個人的には朗報。

ラケットラインというものは90年代の「ネオ・クラシック」ブームを代表する要素の一つであり、現行版の「ネオ・クラシック」の潮流に乗るにあたっては、ラケットラインの採用はやや時代を読めてない感が出てしまう。

現在はMLBでも、襟ラインや袖ラインもしくはラインなしなど、極端にシンプルなデザインが主流で、ラケットラインを入れるのは、昔から(あるいは昔は)ラケットラインを採用している(いた)球団のみ

中日が歴史上ラケットラインを採用していたのはごくごくわずかな期間のみであることから(90年代ですら入れていなかった)、「ネオ・クラシック」の文脈においてラケットラインを採用することに歴史的な必然性はほとんどないのだ。

色付きボタンに関しては、やっぱり最後の最後まで蛇足感が否めず、意味も良さもイマイチ分からなかった。
以前書いた記事の中で「最後の最後で出た『思いつき』によるものなのでは?」的なことを述べたが、考察としてあながち間違いではないと思う。

正直、今回のようなデザイン変更をせずとも、この2点さえ解消していれば十分に垢抜けた良いユニフォームになっていたのではないかとすら思う。

ただ、先日新ユニフォームを発表した西武と合わせ、ラケットラインユニを採用する球団が一挙に2チームも減ってしまったと考えると、ユニフォームのデザインパターンのバリエーションが減って少し寂しい気もする。

②赤い胸番号が復活

1987年から2003年と長期間に渡って使用された、ロサンゼルス・ドジャースをオマージュしたユニフォーム。
身も蓋もない言い方をすれば、今回のユニフォームはその復刻版的な感じとなっている。

その中で最も特徴的なのが、帽子、アンダーシャツ、ストッキング、胸ロゴ、背番号、背ネームと、ドラゴンズブルー1色で統一された中にピリリとアクセントを効かせる赤い胸番号

これがあるだけで大抵の中日ファン及びプロ野球ファンは喜んでしまうのだろうと思う。
ドジャース型ユニで汗を流した立浪監督自身もまたその1人に違いない。

③ドジャース型の背番号・胸番号

胸番号の色だけでなく、背番号・胸番号の書体もドジャース型のものが復活。

前モデルまではいわゆる「高校野球型」と呼ばれるタイプのゴシック体フォントを使用していたのだが、やはり汎用フォントということもあって、「機械的に割り当てられてる感」を強く感じてしまうのが難点。

また、背番号というのは選手のもう一つの顔であり、ユニフォームデザインという観点で見ても「ユニフォーム上において最も大きくデザインされるもの」でもある訳で、それを汎用のもので済ませてしまうというのはやはり寂しいものがあった。

そういう点でも今回の変更は素晴らしいし、ドジャース型ユニ復活という点で見ても素晴らしい。

旧ドジャース型ユニには1995年まで使用された高校野球型書体タイプと、1996年以降に使用されたドジャース準拠書体タイプとがあるのだが、やはり後者の方がユニフォームとしての完成度は高い。

どうせ復活させるなら完成度の高い方に準拠してもらいたいところだが、今回の変更はまさにその期待に沿うものであった。

強いて言えば、胸番号のサイズが少し小さすぎるために、ドジャースユニオマージュとして見ても、ドジャース型ユニオマージュとして見ても、少し完成度が損なわれるように思えてしまうのが難点ではある。

④背ネームがブロック体に変更

前モデルでは背番号・胸番号と同じく角の丸いゴシック体を使用していた背ネームであったが、番号書体に合わせて角のあるブロック体へ変更された。

ドジャースユニではもちろんのこと、ドジャース型ユニでもしっかり取り入れられていた要素であり、そこをしっかり組み入れていることはしっかり言及し評価しておきたい。

画像を見る限り、特に字数の多い「OKABAYASHI」などは少し字の詰まり方が不自然な気もするが、その辺はご愛嬌ということにしておこう(MLBなどを見ると、しっかり収まっているだけマシとすら思えるのだから)。

⑤右袖に「CD」ロゴ

左袖に「LA」ロゴを入れいているドジャースに倣って、なのかは分からないが、右袖に「CD」ロゴが入った。

公式によれば「チームの一体感・統一感を表しています」とのことだが、ドジャースオマージュだろうと受け取っておく。

この要素は旧ドジャース型ユニでは取り入れられていなかったもので、今回の新ドジャース型ユニの特徴と言えよう。

ただ、ドジャースオマージュということであれば、やはりロゴは左袖に、サイズももう少し大きくしてもらいたかった

⑥青が「鮮やかな色味」に変更

これまでは結構好意的な意見を述べてきたが、ここからは雲行きが怪しくなる。

またしても青の色味が変わった。

公式では「これまでよりさらに鮮やかなブルーを使用し『軽快さ』『スピード』を強調」と説明されている。
色味で言えば、ドジャース型に変わる直前まで使用されていた1969-86年型モデルに近い雰囲気だろうか。

個人的に、この変更は絶対NGだ。
と言っても、「この青がダメ」と断定したい訳ではない。

実際に選手が着てプレーしているところを見てみないことには色味の良し悪しは判別できないし、そもそも問題はそこではない(個人的にはもう少し深い色味の方がいいとは思っているが)。

先日のカープの新ユニフォーム解説でも、何となくフワッとした曖昧な理由によって赤の色味を変えたことに苦言を呈したが、今回もそれと同様だ。

中日の場合、前回も前々回もそのまた前回も、ユニフォーム変更のたびに青の色味を変更しているという“前科”がある。
しかも、どれも特に決定的な根拠を感じさせるようなものではなかった。

第一、仮にも「ドラゴンズブルー 」という大義名分を自ら掲げている以上、「これこそがドラゴンズブルー」と言えるような一本の軸を定めておくべきではないだろうか。

「ドラゴンズブルーこそプライドの源泉」とか、「『軽快さ』『スピード』を強調」とか言ってみたりして、数年ごとにコロコロと変えて良いものではないんじゃないか、というのが個人的な感覚だ。

日頃から問題提起していたことなのだが、中日は公式サイトやオンラインショップのカラーリングであったり、ユニフォームなどのグッズのイメージ画像であったりで使用されている「青」の色味がてんでバラバラ

つまり、「これが中日の青(ドラゴンズブルー)!」と言えるようなブランディングを一切やっていない。

真の「ドラゴンズブルー」は何処にあるのだろうか。

今回、「立浪ドラゴンズ本格始動」というタイミングでユニフォーム変更をするというからには、そういう面をも含めた「球団ブランド」の確立を目指す絶好の機会であったはずなのに、相も変わらず曖昧なままで済ませてしまった。

ただでさえNPBというリーグは「青い球団」が多いのだから、尚更明確な球団ブランドイメージの構築が重要事項になってくるのではないか。

今や、昔からある伝統球団というだけで存在価値を維持できるような時代ではない。
特にセ・リーグの球団はその辺を甘く考えているように見えるチームが多い気がするが、もちろん中日はその代表例中の代表例だ。

⑦筆記体の「Chunichi」ロゴ

1950年代に登場し、もはや一つの伝統になっていたアーチ型ブロック体の「CHUNICHI」ロゴを一新。

筆記体で「Chunichi」とすることで、「勢い」「スピード感」を表現しているとのこと。

確かにいくら伝統とは言え、アーチ型ブロック体の「CHUNICHI」ロゴは流石に味気なさすぎるという意見は普通に理解できるし、変えるという決断に至ったことに対してそこまで強く反対の意を唱えることはしない。

ただ、この書体はいかがなものか。

典型的な筆記体というよりも、いわゆる「ブラッシュ体」と言われるものに近いタイプのように感じるが、果たしてプロ野球チームのユニフォームの胸ロゴの書体として採用するに相応しい書体か、と問われると首を縦には振りにくいのが正直なところ。

メーカーのユニフォームオーダーシステムなどで用意されている「ありモノ」のフォントの中から「何となくカッコよさげ」なものを選んだだけ、という感じがどうしてもしてしまうのだ。

どうせ筆記体にするのであれば、ホームの「Dragons」ロゴと同じ書体に揃えればよかったのではないか。
そっちの方が袖に「CD」マークをつけるよりも統一感を表現できるし、書体を変更する動機付けとして説得力が増すと思う。

青のカラー変更と同じく、変更の必然性がイマイチ感じられない。

その他気になったポイント

ビジターは上下グレーがよかった
この話こそ何度目か、という話ではあるが、やっぱりビジターは上下グレーがいい。

特に、中日の場合は日本のプロ野球チームとして最古参にあたる伝統球団であり、セリーグでは同じく最古参の巨人や阪神が上下グレーのビジターであることもあって、余計にそう感じてしまう。

また、今回はドジャース型ユニの系譜にあるユニとなった以上、やはりMLB式のドレスコードを取り入れた形にしてほしかった感はかなり強い。
せめてパンツはグレーにしてもらいたかった。

ビジターを上下グレー(あるいは上青+下グレー)にしないのであれば、いっそ落合ユニオマージュにして「星野ユニのホーム+落合ユニのビジター」の黄金期ミックスという形にするのもありだったのではとも思う。 
派閥とか知らない。

帽子が惜しい
こちらも「ドジャース型ユニの系譜にあるユニ」として見るが故に気になってしまう点ではあるが、帽子がイマイチ垢抜けない。
具体的な原因を挙げると、「白い空気穴」「白いツバ縁ライン」「目立ちすぎる広告ワッペン」である。

ドジャースや旧ドジャース型ユニでは、ロゴと天ボタンが白である以外は青一色で統一されている。
そこを意識するのであれば、空気穴は白くない方がいいし、ツバ縁ラインもいらない

広告ワッペンに関しては致し方ない部分があるのは承知の上だが、どうしたって雰囲気は損なわれてしまう。
もう少し目立たないように工夫することはできないものか。

帽子マークが「CD」なのはGOOD
旧ドジャース型ユニでは、帽子マークが「D」の一文字のみになっていたが、今回は「CD」を引き続き採用している。
これに関してはかなりの高評価ポイントだ。

一部のファンからはあまり評判のよくないらしい「CD」マークだが、ドジャースオマージュという意味では、ドジャースの「LA」マークに近いのは間違いなく「CD」の方だ。

ブロック体という部分も「LA」と共通であり、個人的にだが現行の12球団の帽子マークの中では屈指の良デザインだと思っているので、ここを変えなかったのはよかったと思う。

最後に

後半にかけて結構苦言のような雰囲気が強まってしまったが、『これぞ理想のユニフォーム!〜中日編〜』を覗いてみていただけるとお分かりになる通り、実は今回のユニフォームはかねてから私が指摘していた「中日のユニフォームの問題点」を大方クリアしている

なので、トータルで見ればかなり好感度の高いユニフォーム変更だったし、特にホームユニフォームに関しては正直メチャクチャ良いと思っている。

ただ、それだけに細かい部分の粗が目立つというか、「詰めの甘さ」が余計に際立ってしまうのが非常に惜しいところだ。

特にドラゴンズブルーの色味をまたしても変更してしまったのは、やはりどう考えてもよくない傾向である。
「真のドラゴンズブルー、ここにあり」と堂々と宣言するような変更であったならまだしも、いつも通りフワフワしたコンセプトになってないようなコンセプトだったのが完全にガックリポイントだ。

プロ野球人気低下が叫ばれて久しい昨今、プロ野球というものをどう再び魅力的にブランディングしていくか、ということを考えるには、まずそういう「手前の部分」から始めていかないといけないのではないかと思う。

以上、『中日 2023年新ユニフォーム 〜真のドラゴンズブルーは何処にある〜』でした。ありがとうございました。

この記事が参加している募集

野球が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?