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【読後感想文】『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

【読後感想文】とは、私が適当に作った言葉ですが、あんまり詳しく本の話はしないけど、本から得た思い、気づきをそのまま書くものです。適当ですいません。



「読書ができない」は確かに異常だった


医師の明確な判断はもらっていない。
が。

私は確実に「燃え尽き症候群」で、正規採用を辞めた。
宮沢賢治に憧れ、自身の全身全霊を仕事に傾けた。
その糸が切れたとき、すべてがどうでもよくなった。

これ以上自分を嫌いになりたくない。
そう思った私は、割と抵抗なく仕事を辞めたのであった。

それを「脱落」とか「ドロップアウト」と言う人もいるだろう。
辞めてから一か月経ち、体力を取り戻したときには少々後悔もした。

しかし、私は「辞める」と決意したことにより、かつて大好きだったことが再びできるようになり、やっぱり「異常」だったのだと痛感した。

それが「読書」だった。



読書が好きになったのは、小学生のとき
「ズッコケ三人組」
との出会ったからだった。

それからは、読書をしたりしなかった時期もあったりしながらも、まあ、スポーツに全身全霊をかけている少年にしては読書している部類の人間だったとは思う。

社会人になりお金が入ると、さらに歴史小説、恋愛小説、スポーツ系のハウツー本や、経営、心理、教育など、様々な本を読むようになった。


しかし、自分の人生を彩ってくれたのは明らかに「自己啓発本」であった。

「自分が嫌い」の極みだった私は「そんな自分を変えられる世界」に出会ってしまい、読書を中心に様々な行動の変容を目指した。

20代後半(2010年代)になると、私は「ミニマリスト」「断捨離」「西野、ひろゆき、堀江系の行動改善本(勝手に名付けました)」を読み漁るようになり、さらに仕事への熱量を高めていったのである。


『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
において、三宅香帆氏は「社会と個人のつながりを分断してしまうことの危険性」について、幾度となく警笛を鳴らしている。

本書の面白いところは「そこ」にある。


一件、読書の世界と社会情勢など関連がないんじゃないかと思われるかもしれないが、辛抱強く前章を読み、後章を読むと、確かになぜ現代社会において「本が読めない」のかが見えてくる。そして、私自身がなぜ病気になったのか、そして休むとなぜ本を読めるようになったのか、が見えてきた。


実は、私自身が自分を嫌いになり「もっと仕事やんなきゃ!」と思って「自己啓発本を読む」というのは、当時の社会構造で見ればごく自然のことだった、と三宅氏は教えてくれる。


そして、まんまと罠にはまった私はしっかりと「燃え尽き症候群」に陥った。ああ、本書に今出会って、良かった。その前であれば「こいつ何甘いこと言っとれんて」で終わってただろうな(笑)


ネットの広告でたまたま見つけた本であったが、読んでよかった。
今の自分の見方、考え方を再構築させられたような気がする。

自分の人生が実はこんなに社会に影響されているとは思ってもいなかった。
小学生で「宮沢賢治」に出会い、その生き方に憧れて生きてきた。

しかしその発見こそ、社会の構図の中にどっぷり浸かったものだった可能性がある。

恐ろしい…

そういう生き方が推奨される「教科書」や「道徳」って、すこぶる危険なものかもしれない。教師として、そのことを頭に入れながら教壇に立つ必要があるなと、考えさせられた。

(常体終わり)


ちょっとだけ著者への提言。


もし、本書にもう少し要望を求めるなら、もう少しデジタルデバイスとの付き合いかたについて言及して欲しかった。(一応、帯でもそのことが推されている)

あと、私自身、働き方を改革しても、脳内は疲れきって?いて、今も油断するとすぐにスマホ脳となって、本を読むことが嫌になってしまいます。

「働くことを減らす」ことは確かに提言としてわかります。しかし「働くことを減らすことは、決して脳内を休めることにはつながらない」と、私は実感しています。

そして、働き方改革に乗っかることこそ、結局は社会構造に飲み込まれ「本読みたきゃ休みをとればいい」とか「本読める仕事をすればいい」という個人責任論に落ち着いていきそうな気はしました。

うーん。難しいですね。

でも三宅氏は「嫌なときは本を無理に読まない」とか「スマホで自然に読書に触れる方法」なども優しく教えてくれています。あとがきになると、突然ブログのような書きぶりになって、読んでいて面白かった。本章と、あとがきのギャップで、なぜかやっぱり読書っていいなって思えました(笑)

今、何冊か並行して読書していますが、その手を止めずに、これからも楽しい読書生活をしていきます。もっと、ノイズに触れたいし、知らないことにたくさん出会いたい。

だから私は、全身全霊してしまう「正規採用」ではなく、適度に教員を楽しめる今の「臨時的任用」にどっぷり浸かり、本を読み、自由な感性の中で生きていきたいと考えています。

その中で、本当に自分が生きたい道を見つけます。


三宅さん、ありがとうございました。

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