Koko

大学病院の勤務医です。専門は循環器で、中でもneurocardiologyという自律神…

Koko

大学病院の勤務医です。専門は循環器で、中でもneurocardiologyという自律神経系を介した血圧や心拍の調節異常が主な研究&臨床テーマです。まだあまり知られていない大人の起立不耐症や日々の雑事をゆるくお届けできればと思います。

最近の記事

若い患者さん向け POTSアドバンスセミナーが開催されます

この度、POTS and Dysautonomia Japanの主催で、若い患者さんやその家族、医療関係者の皆様に向けた「POTSアドバンスセミナー2024」が開催されます。 POTSについて最新の研究成果や治療法に関する情報を提供し、患者さんを支援することを目的としています。 本セミナーでは、POTSのサブタイプや治療法など、多岐にわたるテーマを取り上げます。 日時:2024年3月24日(日)13:20~16:40頃 形式:オンラインと現地会場(品川シーズンテラス

    • 幸せに生きる

      ここからは、少し元気になってから読んでください。 ここまで、さまざまな検査や薬や治療法を紹介してきました。もし、あなたに合うものに出会えたなら、きっと活動できる時間や、動ける距離は増えていると思います。 まだ完全には、ふだんの生活を不自由なく送ることは難しいかもしれません。でも、朝早めに起きて、ひとりで外出できる日もあるのではないでしょうか。 以前より動けるようになったいまこそ、自信をもって立ち上がり、以前からやりたいと思っていたことを試してみましょう。気軽に始め

      • 身体との対話を大切にして受けいれる

        先日、外来にPOTSの症状が落ち着いて、少しずつ仕事を再開しているEさんが来てくれました。 Eさんは外科医としてとても忙しい毎日を送っていましたが、じつは学生のときからときどき立ちくらみと動悸を感じていました。そのころから、自分はPOTSではないかと感じていたそうです。 当直や緊急手術が続き、疲労が蓄積していても、同僚の先生方に迷惑をかけてはいけないと無理を重ねてしまい、ついに朝まったく起き上がれなくなってしまったのです。 職場の環境と自分の体調が折り合わず、最初の病院

        • 記録は自分への信頼の鍵

          行動記録を続けてディズニーランドに行ったCさん 先日、私の外来を受診したPOTS患者のCさんが、 「初めて東京ディズニーランドに行ってきました!」 と報告してくれました。もちろん、すべて自力で移動するのは無理ですが、園内で借りられるカートを使って、楽しく過ごすことができたそうです。 この方は30歳の女性で、中学2年生のときにPOTSを発症して以来、いくつもの医療機関で治療を続けていました。主治医だった先生の異動をきっかけに、5、6年ほど前から私の外来に通っています。

        若い患者さん向け POTSアドバンスセミナーが開催されます

          治癒を目指すのではなく、自分の人生を生きる

          ここまで読んでくれたあなたには、POTSをはじめとする起立不耐症がどのような病気かをイメージできると思います。 この本では基本の療養から、現時点ではまだ研究中の治療法までを、あえて選り分けずに、できるだけ広くお伝えしています。 症状を和らげるための日常生活での工夫や、主治医の先生と一緒に行う治療についての知識は十分に得られたと思います。 今のところ私はPOTSを、従来の障害のある臓器を治療するという考えだけではカバーできない疾患だと思っています。 何らかの「弱点」はあ

          治癒を目指すのではなく、自分の人生を生きる

          特殊なケースでは免疫抑制療法を選択することもある

          ここまで述べてきたような生活の工夫を行い、薬剤を使っても、あまり効果が出ずにほぼ一日寝たきりで起きられない患者さんがいます。その場合、次のステップとして免疫に働きかける治療を考慮することがあります。 これまでもPOTSの原因として、免疫の異常があるのではないかと考えられていました。というのも、免疫系が強くはたらく風邪や胃腸炎などの感染症をきっかけに発症する場合があるからです。また、POTS患者さんの約2割は、関節リウマチやシェーグレン症候群のように、免疫系が自分自身を攻撃し

          特殊なケースでは免疫抑制療法を選択することもある

          POTSの治療薬は、一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせてカスタマイズするのが基本

          完治させるための特効薬は、まだありません 2018年に疾患啓発団体であるPOTS and Dysautonomia Japanが起立不耐症の患者さんを対象に 行った起立不耐症・起立性調節障害インターネットアンケート調査によると、「効果のあった治療方法は無い」という回答がもっとも多く、約4割を占めました。医療機関にかかっても、すぐによくなるとは限らないのです。 しかし、医療に従事する私たちも手をこまねいているわけではありません。これまでに多くの施設で実験室での基礎的な研究や

          POTSの治療薬は、一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせてカスタマイズするのが基本

          今日からできるPOTSを予防する工夫

          マイペースで起きてOK、ただし規則正しく前述のゆる体操などでウォーミングアップをして、のんびり、目覚めの時間を過ごしたらそろそろ起きてみましょう。 朝は何時に起きてもかまいません。ただし、なるべく決まった時間に起きるようにしましょう。たとえば午前2時から3時に休んで、10時過ぎに起き出してきてもいいのです。 でも、それでは学校や仕事に間に合わないと思うかもしれません。幸い、いまの時代はフレックスタイム制度を導入している会社も少なくありません。学生だったら午前の遅めか、午後

          今日からできるPOTSを予防する工夫

          診断はゴールではなくスタート

          例に挙げた二人の患者さんは、けっして特殊なケースではありません。きちんと診断がつくまでに数年かかることも珍しくはないのです。 また、がっかりされるかもしれませんが、POTSの診断がついても、これといった特効薬はまだありません。ですからこの疾患の治療では、おもにPOTSの症状を和らげ、日常生活を少しでも楽に送れることを目指します。 まずはしっかり休むことから始めるAさん、Bさんの二人に共通しているのは、過労が発症のきっかけになっていたことでした。そこでまず、十分な休息、すな

          診断はゴールではなくスタート

          NMSはあなたも経験するかもしれない失神

          元自衛官がPOTS と診断されるまで32歳のBさんは快活で、一見したところ健康そうな男性です。他の病院でPOTSと診断されたあとに治療の継続を希望して、私の外来にいらっしゃいました。 初めて症状が出たのは自衛隊に勤務していた19歳のときでした。 日中は訓練を行い、夜は外出して出歩いたり、お酒を飲んだりする生活を送っていたそうです。当時は週に5日間、一日に5キロから20キロメートル走っていたのに加え、筋トレとしてサーキットトレーニングも行っていました。 あるとき、自動車を

          NMSはあなたも経験するかもしれない失神

          第4回起立不耐症研究会へ参加してきました

          先週、第4回起立不耐症研究会へ参加し、発表を行ってきました。 https://jsoi-online.org/ POTS (POTSの概要と症状 | POTS and Dysautonomia Japan) をはじめとする起立不耐症は、様々な経過や病態を示す「疾患群」と考えられています。小児科の領域では、起立性調節障害 (OD) とよばれ、学童における頻度は3-15% とされています。 一般に小児期に発症したODは、成長とともに改善するとされますが、症状が続いたまま成人す

          第4回起立不耐症研究会へ参加してきました

          起きられないのには理由がある

          何度も学校に通えなくなったAさんAさんは21歳の女性です。生まれてから、とくに大きな病気にかかることなく成長しましたが、小学生のとき、何度か朝礼中に立ちくらみで倒れたことがあったそうです。 中学に入学後、ひどい胃腸炎になったあとから朝起きられなくなり、遅刻と欠席が多くなっていきました。学校の先生に起立性調節障害の可能性があるといわれて近くの病院を受診し、ミドドリンという血圧を上げるお薬を出してもらったそうです。しかし、お薬を飲んでも目立った効果がなく、やがて通院もやめてしま

          起きられないのには理由がある

          朝起きられないのは病気ですか?

          はじめに朝、目覚ましが鳴ってもなかなか起きられない。 立ち上がるとドキドキして胸が苦しくなったり、頭痛や吐き気がしたり、お腹が痛くなったりする。 長く立っていると目の前がぼうっとして、血の気が引くような感じがする。 疲れやすいうえに、集中力が続かず、頭の中にもやがかかったような気がする。   午前中はまったく体が動かず、学校や会社も休みがちになってきた。 周囲からはサボっているんじゃないかと思われていて辛い。 あちこちの病院へ行って診てもらっても、どこも悪くないと診

          朝起きられないのは病気ですか?