見出し画像

お勧めブログ! 株式会社小川製作所さんの「日本の経済統計と転換点」

経済・社会を研究する人間は、現実を腑分けする正確・緻密にして冷徹な頭脳と生活者に寄り添いその幸せを願う温かい心の両方を備えていなければなりません。この両者を兼ね備え、かつ、現役の中小企業経営者でもある 小川製作所 さんのブログを紹介します。

小川製作所さんは、官公庁などが公開している経済統計――少なくも私にとっては無味乾燥な数字の羅列――をビジュアルに訴えるグラフに変換して分析し、現代日本の課題を鋭く指摘していらっしゃいます。
そうした分析自体は感情を交えず予見に左右されないものですが、小川さんの事象への関心の持ち方には、この国の働く人たちに寄せる温かい心が通底していると、私は感じています。

小川製作所さんブログのトップページはこちら

小川さんのブログは「モノづくり技術者専門サイトMONOist」でも読むことが出来ます。

小川さんのブログ記事は、すでに200を超えています。上掲のブログトップページには、各記事のタイトルと内容要約が一覧表で整理されていますので、皆さんがご関心のある記事をピンポイントでご覧になることができます

ここでは、予告編的な感じで、小川製作所さんが日本経済がデフレスパイラルに陥っている原因を分析なさった『176 「良いものを安く」は正しいのか』から引用させていただきます。

小川製作所さんは、膨大な数値データを基に9つのグラフを描いて示した上で、次のように結論づけていらっしゃいます。

工業はグローバル化の影響を最も受ける産業と考えられると思いますが、1990年代中盤は日本は極めて物価水準の高かった時期です。
外国から見れば日本の物価は極めて割高な状況だったわけですね。

日本で作って世界で売る事が困難となり、このあたりから海外進出が活発化していったと考えられそうです。
一方で、国内の製造業もこのグローバル化の、「安く大量に」という規模の経済の考えの影響を受けてきたのではないでしょうか。

「安くしないと売れない」→「安くするには大量に作らなければいけない」→「大量に作ると余る」→「さらに安く」という循環ですね。
結果的に私たちは必要以上に安いものに囲まれています。
そして安く作るために、企業が安い労働力を求めた結果、賃金が下がり消費者の購買力が一層落ちています。

この循環がある以上、なかなかデフレ期から抜け出せないのも道理ですね。


最後に……
現実を腑分けする正確・緻密にして冷徹な頭脳と生活者に寄り添いその幸せを願う温かい心というのは、私のオリジナルではありません。近代経済学の泰斗であるアルフレッド・マーシャルの言葉に、少し「盛った」ものです。

近代経済学の基礎を固め、ジョン・メイナード・ケインズ、アーサー・セシル・ピグーをはじめ多くの経済学者を育てたマーシャルは、ケンブリッジ大学の政治経済学教授への就任演説で次のように語りました。

冷静な頭脳と温かい心( cool head but warm heart )を持ち、周囲の社会的苦難と格闘するためにすすんで持てる最良の力を傾けようとする・(中略)・そのような人材の数が増えるよう最善を尽くしたい。
(出典:独立行政法人・労働研究・研修機構『労働問題研究者の資質』
https://www.jil.go.jp/column/bn/colum032.html)

経済学をかじった人間の端くれとして、私の頭の片隅には、つねに、このマーシャルの言葉があります。

ここまで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

『お勧めブログ!株式会社小川製作所さんの「日本の経済統計と転換点」』おわり


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?