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ヒトは、企業にとって何なのか?

「人間が素材や財産であってたまるものか。人間はそれ自体、価値ある存在だ」と私は思っています。もっとも、研修教材作成という生業では業界用語として「人材」「人財」を使うこともありますが、個人、社員、従業員で意味が通じる場合は、そちらを使っています。
そうした私の本音に強く訴えるものを感じた2つの記事を紹介します。

ひとつは、おじさんDXさんの『【雑感】ヒトを大切にするという本音?』です。(以下、【おじさん】と略記します)

もうひとつは、藤本 正雄 さんの『完全年功序列・家族主義で成果を上げる』です。(以下、【藤本さん】と略記します)


1.ヒトの大切さを業務に結びつけていると


マネジメントの世界では、ヒトは会社が事業を営むのに必要不可欠な経営資源と考えられてきました。この考え方の表れとして、「ヒト・モノ・カネが三大経営資源である」と言われ、人事の仕事はHRM(Human Resource Management=人的資源管理)であると言われてきたわけです。

この点について、【おじさん】は次のように言います。

✅ヒトがいないと業務に不都合が出るから、ヒトが大切なのか?

これも正解、不正解どちらとも言えないのですが、ヒトが大切であると言える理由なのでしょう。

その上で、【おじさん】は、「では、業務に不都合がなければヒトは要らないのか?」という疑問を提起します。

✅「それなら自動化して人の影響度を下げたら如何でしょうか?」
✅「採用の手間も人事評価の手間も削減出来ます」
✅「人を教育する必要もありません」
✅「効率もアップし自社の業績が確保できますよ」

そして、こう続けます。

すべて皮肉ですが、業務の都合しか考えずにヒトの大切さを語って欲しくないのです。
社員にも一人ひとり家族や抱える背景があるのです。
〔太字部は、楠瀬が太字化〕

私は、【おじさん】のこの部分に非常に強く共感を覚えます。企業に企業の都合があるなら、ヒト(個人)にもヒト(個人)の都合がある。そのどちらかが他方に優先するものではないでしょう。

このことに関連して、私の頭によみがえってきたのが【藤本さん】です。

2.「フツーの人たち」が働くところが会社


【藤本さん】は、完全年功序列と終身雇用で事業を成功させている万松青果株式会社の専務さんの言葉を引用しています。

弊社のような中小企業で働いている人は、「この仕事をしたかったからこの会社に来た」わけではなく、仕事以外の目標のため、例えば「結婚や子供のためにこの会社に来た」という方が大半なのです。
中小企業やブルーカラーで働く方々の多くは、それまで「高い目標」を持ち、一般に称賛されるような「成果」を出してきたわけではありません。いわば、「フツーの人たち」です。
しかし、そんな「フツーの人」でも、当社での仕事を通じて「少しデキる人」になってほしい
〔抜粋。太字部は、楠瀬が太字化]

私は、《人間は働くために生きているのではなく、生きていくために働くのだ》と考える人間です。ですから、「仕事以外の目標のため、例えば『結婚や子供のためにこの会社に来た』という方が大半」という状態が世間一般の状況であったとしても、社会としては、何の不都合もないと思っています。

ただ、私たちの生活の中では、働いている時間が圧倒的に長く、そして、働くことは、私たちと社会をつなぐ大きな絆のひとつです。
その意味において、働くことが楽しくなければ、結局人生も楽しくない。そうう考えてもいます。

だから、「『フツーの人』でも、当社での仕事を通じて『少しデキる人』になってほしい」という、この専務さんの言葉が、私には響きます。
専務さんの言葉を私流に言い換えると、「働き始める動機はなんでもいい。しかし、働くからにはやりがいをもって楽しく働けなければ人生が味気ない」といった感じになると思います。

ここで、私の想いは、【おじさん】に戻ります。


3.ヒトと共に成長していくのが企業

【おじさん】は、会社は業績を伸ばして新しい雇用を生む必要があるとした上で、次のように言います。

✅ヒトと共に成長していくのが会社であり、成長にはヒトが必要。


【おじさん】は、企業が立地している地域へと視野を広げます。

雇用を生むということは、それだけ貧困から脱出出来る可能性があります。
皆が貧困から脱すことが可能ならば、その地域平和に繋がるのではないかと漠然と思うのです。

【おじさん】のこのような意見は企業の社会的使命を強調したものであると、私は解釈しています。

「お前は他人様の意見の引用ばかりしているが、自分はどう考えているんだ?」という声が聞こえてきた気がします。最後に【おじさん】、【藤本さん】を踏まえて、私自身は、ヒトは企業にとってなにであると考えるに至ったかを述べて、この投稿を締めくくりたいと思います。

4.ヒトは、企業と社会をつなぐ鎹(かすがい)


ヒトは、社会との関わり方のひとつ、それも非常に重要な関わり方として、企業に就職します。ヒトは企業で働くことを通して、社会とつながる。企業の側からみると、企業はヒトを雇用し働いてもらうことを通して社会とつながるのです。
つまり、ヒトは企業と社会をつなぐ鎹(かすがい)です。

ですから、企業は、従業員を社会活動に参加する余力もないほど疲れさせてはならないのです。世帯主である男性が、企業戦士として、昔流行したCMの表現を借りて誇張気味に言えば、「24時間闘って」いたため、PTAや自治会、町内会の活動といった社会活動は専業主婦、地元の自営業者、定年退職後の会社員に任せっきりになってきました。社会活動に働き盛りの現役世代がほとんど参加してこなかったのです。

こうした社会活動における現役世代の不在が、私たちの社会から活力と多様性を奪ってきたように感じられてなりません。また、女性の労働市場への参入が進んでも男性の働き方が変わらないため、会社生活と社会活動の両方の負担が女性だけに重くのしかかる結果にもなっています。

ここで私が論じているのは「社会的存在」としてのヒトと企業の関わり方です。それとは別に「個別的存在(実存)」としてのヒトと企業の関わり方という課題もあるのですが、これについては、また別の機会に考えてみたいと思っています。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

『ヒトは、企業にとって何なのか?』おわり







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