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オーケストラは「ピラミッド型」、ジャズコンボは「ネットワーク型」の組織

オーケストラとジャズコンボ。どちらも演奏者のチームですが、その構成と運用はまったく異ります。オーケストラは演奏者を堅固に構造化し、指揮者⇒コンサートマスター⇒各演奏者という指揮系統を主軸に音楽を作り上げます。これに対し、ジャズコンボは緩やかなネットワーク構造で演奏者の自律的な即興の中から創発させるのです。
この違いには、以前に取り上げた「ピラミッド型組織」と「ネットワーク型組織」の違いに呼応するものがあります。

この投稿は、GAVIさんの次のエッセイに触発されたものです。

1.オーケストラの組織

 ここでは、煩雑さを避けるため、オーケストラという言葉を種々の楽器の組み合わせ、または、楽器の演奏者のチームという両方の意味で用います。

 私は、交響曲の作曲家は、頭にある楽曲のイメージを多種多様な楽器の音色に分解し、それらを再統合すると楽曲として完成するよう作曲するものと理解しています。この分解と再統合の設計図が楽譜だと考えています。

 音楽について語りながら、実は私は音楽には素人なので、理解に誤りがあったら、ご指摘ください。

 オーケストラは、各演奏者(各楽器)というパーツを楽譜という設計図に従って組み合わせた構造をしています。そして、指揮者が楽譜を理解し、そこに自らの解釈も加えて、この構造を動かしていきます。また、指揮者を、演奏者の代表であるコンサートマスターが補佐します。

 これを簡略なメージで示すと、次のようになります。

オーケストラの組織(サイズ小)

  この構造をピラミッド型の会社組織と比較してみます。

ピラミッド型の会社組織/オーケストラとの比較用

 オーケストラの組織は、ピラミッド型組織ほど強い縦の階層性は備えていません。
 しかし、(1)各構成員の分業が徹底していること、(2)指揮者(会社で言えば経営幹)の意志が貫徹されること、という2点で、ピラミッド型の会社組織と相似形になっています。

2.ジャズコンボの組織

 
 私は、ジャズコンボは同等の力量を備えたジャズプレイヤーが集まり、半ば即興的に楽曲を奏でるものと理解しています。
 
 オーケストラ楽譜という設計図に厳密に従って作られた剛構造の組織で、その全体に指揮者の意志が貫徹しています。
 
 ジャズコンボにも、オーケストラの楽譜に相当するものはありますが、ジャズコンボが楽譜に厳密に従って構造化されているわけではありません即興を許容する、ないしは促進する柔構造であることがジャズコンボの特質です。誰か一人のプレイヤーの意志が全体を貫徹することもありません

ジャズコンボの組織(と言ってよいか微妙なのですが)を簡略なイメージで示すと、次の図のようになります。

ジャズコンボの組織

 先に引用したGAVIさんのエッセイには1954年12月24日にマイルス・デイヴィス(トランペット)とセロニアス・モンク(ピアノ)とジャズコンボを組んだ時にモンクがソロを途中で止めてしまったエピソードが紹介されています。ここに再掲します。

 GAVIさんによると、真偽のほどは定かでないが「演奏前にデイヴィスがモンクに『自分の即興パートでのピアノのバッキングはやめてくれ』と言ったことにモンクが腹を立てた」との噂があるとのことです。

 真の理由がなんであれ、演奏者が自分の判断で勝手に演奏を止めてしまうなど、オーケストラではあり得ない事態で、ジャズコンボの自由さと即興性を物語っていると思います。

 このようなジャズコンボの組織を、仮想的なネットワーク型の会社組織と比較してみましょう。”仮想的”と但し書きしたのは、比較的新しいアイディアであり、まだ確立した形が存在しないからです。

ネットワーク型の会社組織/ジャズコンボ用

 メンバーがネットワークの上に配置され、それぞれの動きに自由度があるという点で、ジャズコンボの組織はネットワーク型の会社組織と相似形であることが分かります。

3.オーケストラの組織とジャズコンボの組織に確定した優劣はない


 組織を設計する上ではピラミッド型を採用するかネットワーク型を採用するかという選択より、《「業務と組織と人材をフィットさせる」ことが、より本質的な課題である》ことを、次のエッセイで述べました。

 オーケストラの組織も、ジャズコンボの組織も、それぞれが演奏する音楽という業務と組織と人材をフィットさせた結果生まれたものです。
 
 したがって、常にどちらかが優位にあるということは、あり得ません。ただ、上で引用したエッセイと繰り返しになりますが、次のことは言えると考えています。

不確実性が低い代わりに安定的に90点の成果を出し続けなければならない業務はピラミッド型組織と相性が良く、不確実性が高く10点の成果と170点の成果が混在していてもよい業務はネットワーク型組織と相性が良い確率が高い。

 社会と技術が急速に変化する現代において、企業は事業分野に応じて最適な組織を選択していく必要があるのです。

 ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

『オーケストラは「ピラミッド型」、ジャズコンボは「ネットワーク型」の組織』おわり


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