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華道 未生流笹岡の笹岡隆甫です。この美しい地球を次世代へ。

自然と人と文化が共存できる社会へ

華道「未生流笹岡」家元 笹岡隆甫

こんにちは。
笹岡隆甫です。
 
母方の祖父が、いけばなの流派「未生流笹岡」の家元でした。
祖父の娘2人は結婚して苗字が変わり
笹岡という名前を継ぐ人間がいない。
そこで、長女の長男である私が祖父の養子となり
笹岡の名前を継ぐことになりました。
3歳のときのことです。 

祖父に連れられて

祖父の言葉

ある暑い夏の日の家元の稽古場。
私が小学校に入学した年のことでした。
目の前には、私が剣山にさした1本の黄色いヒマワリ。
でも、そのヒマワリは、なんだか元気がありません。
「うつむいたらあかん」。
祖父は、幼い私にそう声をかけました。
私がいけたヒマワリは、だらりと頭を垂れていたのです。
私は、祖父の言葉通り、下を向いていたヒマワリの顔を反転させ
太陽の方に向けて、剣山にさしなおします。
すると、そのヒマワリは、驚くほど力強くいきいきと輝き出したのです。
花を上に向けるだけで
太陽に向かって伸び上がるような生命力が感じられる。
うつむいたらあかん。
それまでは遊び半分で花をいけていた私が
祖父からはじめて教わったいけばなの技です。

花の顔を上に向けて

私の祖母は、夏のよく似合う、ヒマワリのような人でした。
私が大学に入学した年に、若くして病気で亡くなりますが
その最期のときまで、決して涙を見せず
逆に、まわりの家族を元気付けてくれるような明るく活発な人でした。
闘病中の祖母は、ある日
「みんなで温泉に行こう」と言い出し、それを実行しました。
担当医に外泊届を押し付け
石川県の和倉温泉まで、そろって2泊3日の旅をしました。
祖母の車椅子を交代で押しながら
みんなで過ごした3日間は今でも大切な思い出です。
祖母は、周りにいる家族を楽しませたい
そして何よりも自分自身が人生を謳歌したい
そういう気持ちを持ち続けた人でした。
うつむいたらあかん。
祖父のこの言葉通りの、美しい生き方を貫きました。

私たちは、いけばなのことを「華道」とも呼びます。
これは先人が築いてきた道を
我々も歩むという意味合いと共にその道を究める中で
自分自身の人生の道を見つける。
生き方を見つめ直すという意味合いがあるように思います。 

未生流笹岡 家元邸にて

いけばなの背景には
人間を自然の一部とみなす日本独特の自然観があります。
西洋のように自然と対立し自然を屈服させるのではなく
自然に融け込むように暮らしてきた日本人は
生活の中に四季の移ろいを巧みに取り込み
いけばなという美しい文化を生み出しました。
いけばなの思想やデザインには
日本人が育んできた独自の情緒が顕著に表れています。
そんな日本人の自然観や自然への敬意を
世界に伝えることが
今、私たちがすべきことだと考えています。

祇園祭

さて、7月の京都は、祇園祭一色。
本日、前祭(さきまつり)の山鉾巡行が3年ぶりに実施されました。

3年ぶりに行われた祇園祭山鉾巡行

この2年間、山鉾巡行は中止。
神事のみ粛々と行われました。
文化や伝統を次の世代に繋げることの難しさを肌で感じました。
京都に人々にとって、祇園祭は特別な存在。
私にとっても最も身近なお祭りの一つです。

小学生の時、長刀鉾の稚児になり注連縄を切る

※詳しくはこちらをご覧ください
  ↓

祇園祭の花 檜扇

美しい地球を未来へ

昨年の新春、地球規模の環境破壊防止を呼びかける
「DO YOU KYOTO? ネットワーク」の仲間たちと
将軍塚にある青龍殿の舞台で
いけばな×能×漆×陶芸によるコラボステージを企画しました。
美しい日本文化を発信することで
「この美しい地球を次世代に残したい」という思いを
共有してもらいたいと、考えたのです。

青蓮院門跡 将軍塚青龍殿にて
花器:諏訪蘇山 漆の敷板:三木啓樂

美しい地球を未来へ

京都では古典文学に描かれた景色を今も味わうことができます。
    春はあけぼの、ようよう白くなりゆく山際
京の街から東山を望めば
清少納言が見た、まさに同じ景色が今も残ります。
しかし、このまま環境破壊が進み四季の移ろいが失われれば
枕草子は現実離れした昔話になってしまう。
東山三十六峰を背景に
京都という街で暮らしの中に溶け込んだ日本文化を味わってほしいと、
この企画を立ち上げました。
 
新春の早朝、夜明け前。
三木啓樂さんの漆の敷板に
諏訪蘇山さんの青磁の花器を載せ
曽和鼓堂さんの小鼓に合わせて
私が花をいけていきます。
続いて、橋本忠樹さんの演じる能「橋弁慶」の間に
空が白んでいくという趣向でした。
京都市の地球温暖化対策室とABC朝日放送テレビのご協力を得て
当日の模様は、WEBおよび朝日放送テレビで配信、放映されました。

能「橋弁慶」
弁慶:橋本忠樹 牛若丸:橋本和樹

予想外だったのは、この日、寒波が襲ったこと。
マイナス6度の極寒の中、凍えながらの撮影となりました。
花も水も人間も凍ります。
水が凍ると膨張するので
器が割れないか不安を抱えながらのステージでしたが
美しい映像ができあがりました。 

 
日本文化にとっても厳しい状況が続いてきましたが
ようやく、少しずつですが日常を取り戻しつつあります。
今年は、日本文化にとって、再出発の年になりそうです。

これまで以上に積極的に
日本文化を通してサステナブルな社会の実現を目指す
「SDGs」につながる活動に取り組みたいと
この度「DO YOU KYOTO? ネットワーク」の有志で
「KYOTO Sustainable Network」を立ち上げ
祇園祭をテーマに、子どもたちに向けたイベントを企画しました。

そう、明日はいよいよ私たちの担当。
このnoteでも、またご報告します。

自然と人と文化が共存できる社会へ
KYOTO Sustainable Network








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