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人のぬくもり

ベッドにもたれて、本を読んでいた。
本にちりばめられた言葉たちが、
あまりにも柔らかくて懐かしかったから、
人のぬくもりが欲しいと思った。
背中にあるベッドに、
愛する人が眠っているなら、
どんなに心地いいだろう。
ゆっくり目を覚まして、
本を読んでいる私の頭を
さらっと撫でてくれるなら、
どんなに満たされるだろう。
愛する人のぬくもりが
欲しいと思うのは、
愛する人のぬくもりを
知ってしまっているからで、
もし私がそれを知らなかったら、
欲しいと思わないのかな?
なんて思いながら、
本を読み続ける。
さらっと撫でてくれる
優しい手の方に顔を傾けて、
「おはよう。」と囁くことができるなら、
どんなに胸がいっぱいになるだろう。
「何読んでるの?」と聞かれて、
「新月の子どもたち。読みたくなっちゃって。」
と、ゆっくり答えることができるなら、
どんなにくすぐったいだろう。
お互いの頬を包み込んで、
寝起きの顔に笑い合うことができるなら、
どんなに幸せだろう。

思い描く幸せは、
今日はここまで。

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