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機関紙『はなしあい』web版#1 岡本厚(前岩波書店社長)氏

1.戦争の足音「〇〇有事」

 岩波書店前社長・雑誌『世界』元編集長であった岡本厚様をお招きし、5月25日にフォーラムを開催した。
 岡本講師は最初に、2021年3月のデビッドソン・インド太平洋軍司令官の米上院証言及び2021年12月の安倍元首相の「台湾有事は日本有事、日米同盟有事」という発言を引用し、2022年ロシアのウクライナ侵攻が「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」という危機を煽る言説が作られていることを指摘した。

2.「戦争」の対義語は、「平和」ではない

このことに対応して「台湾有事」を起こさせないための「沖縄対話プロジェクト」を沖縄で発足させた。沖縄の強い危機感に向き合いながら、沖縄の人びとと台湾、大陸の人びとの直接の対話を試み、 若い世代を含めて対話を繰り返した経験、その成果について説明した。
 岡本講師は、戦争の反対語は「平和」ではなく「対話」であると定義し、「対話」とは何かについて様々な角度から説明した。

3.「対話」のちから

 「対話」とは、お互いの意見を尊重し、「理解できない」と考えてきた相手のことを「理解しよう」とし、相手にも自分を「理解してもらおう」とする試み、と述べた。
 ウクライナ戦争でもガザ戦争でも、戦争を終わらせるのは「対話(交渉、協定)以外にないことを強調した。
 さらに岡本講師は、県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦(1945年3月~6月)からの教訓としての「命どぅ宝」という平和論について解説した。軍は民を守らないという史実に基づく、「命」よりも大切な「大義」や「正義」などはないとする平和論であった。戦争は通常「大義」や「正義」をかざして行われる。しかし、戦争をしてまで守るべき正義などないことを、沖縄の経験から学ぶことができるとした。

”4.はなしあい”の重要性

 岡本講師は最後に「理解できない」と思っている人たちとの対話を広げて行くこと。例えば北朝鮮の人々、保守の政治家、自衛官や米兵、違う世代の人たち、海外から来た隣人たち、別の宗教団体の人たち、「許せない」と思う人たち等々と、対話を進めることを提案した。また、1人1人と向き合い、1人1人に寄り添い、対話を続けたところがイエスの革命的なところではなかっただろうかと結んだ。アカデミー運動の1丁目1番地である「はなしあい」、「対話」について理解を深める示唆に富んだ講演であった。第2部では講演内容に基づき、活発な議論が交わされた。豊かな学びと「はなしあい」の時となった。
(記者:山本 俊正 関西学院大学商学部元教授)


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