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四条烏丸「珈琲の店 雲仙」

「日曜日しかやってないんです」

店の中をちらっと覗いたところ、すまなそうにお店のお父さんがそう言った、いつかの土曜日。

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5月27日。今日は日曜日。

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扉を開けると、仄暗いレトロ空間。流れる矢野顕子のかわいらしい歌声。

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おすすめはなにかと尋ねると、カレーセットとのこと。

くるりと後ろを振り返ると、理科室の匂い。

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アルコールランプでした。

しばし懐かしい気分に浸っていると、フライパンで何かを炒めるジュワジュワという音が聞こえてきた。トースターがチンと鳴る。ヘラでフライパンが擦れるカンカンという音。

自分のために誰かがご飯を作ってくれている音を聞くのは良い。自分がとても大切にされている気がするから。

実家を出て以来、そんな音を聞けるのは喫茶店だけになった。私は私のためにご飯を作る。誰かに作ってもらうということはない。普通の外食の場合はそれが自分のためなのか分からないし、音は人ごみに紛れて消えてしまう。

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そんなことを考えているとカレーがやってきた。キーマカレーのような感じで、少しだけ辛い。そして美味しい。

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食べている間にお客さんが二人来た。

そのうち一人のおじさんは、店内で飼っているメダカ(最近孵化したらしい)をみて「ちっちぇえ~」と嬉しそうだった。

もう一人のマダムは「すぐ行かなアカンから、ちょっとぬるめにして」と注文し、お店のお父さんと家族の話をした後、サッと出ていった。

雲仙はご近所さんのとまり木なのだ。何はなくとも、ちょっと寄っていく場所。

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帰りにお店のお父さんにお話をうかがった。雲仙はお父さんのおじいちゃんとおばあちゃんがはじめたお店。創業は昭和10年。おじいちゃんの出身が佐賀ということにちなんで、雲仙という名前になったのだとか。

店の奥にはタイル張りのスペースが。

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九州の雲仙にある「ホテル雲仙」に旅行へ行った時「その宿にも同じようなモザイクタイルがあったんだ」とその素敵な偶然をお父さんが嬉しそうに話してくれた。

お店の中には、かつて京都の街を走っていた市電の白黒写真がある。お店の目の前を、今でいう市バス50番の市電(あとでフォロワーさんに北野線だと教えていただきました)が走っていたとのこと。こんな狭い道を。

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昔の京都の街の風景写真が飾ってあるお店は、良いお店。自分の中の基準になっている。

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お母さんもお年を召されて、今はお父さんが働きながら週末にお店を開けている。いつまでも残っていてほしいと思うお店でした。

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ちなみに中書島のニュー雲仙とは関係ないらしい。

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▶珈琲の店 雲仙
住所:京都府京都市下京区西洞院通綾小路角
電話:075-351-5479
営業時間:7:00~15:00
定休日:月~土曜日

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