風を侮ることなかれ
風の色を動かしましょうぞ、御屋形様
もとより、わが軍は、孫子兵法、「其疾如風,其徐如林,侵掠如火,不動如山」にて、臨機応変の機敏な陽動作戦で敵を翻弄するのは得意でございますれば、風とはまず速度が常識
こたびは、加えて、もうひとひねりが上策かと
勘助、では、まず赤の風はどうじゃ
こうして赤い風が吹き荒れた
この赤さは、温度であり、エネルギーだった
敵陣は、熱中症で倒れる者が続出したようだ
脱炭素の策が必要だ、いやもはや間に合わないなどと論争が起きて混乱した
勘助、次は、緑の風にしてみよ
こうして緑の風が吹き荒れた
この緑は、自然との調和を優先し、戦意をくじく思想だった
敵陣は、環境保護主義が大流行したようだ
軍事活動による環境破壊を非難する者があふれて混乱した
勘助、次は、灰色の風じゃ
こうして灰色の風が吹き荒れた
この灰色は、利己主義と拝金主義の塊でどんよりした空気だった
敵陣は、裏金づくりと脱税に走る者たちが続出したようだ
腐敗した指導者たちは信頼を取り戻すことができず混乱した
最後に、黒い風が吹き荒れた
もはや、敵陣には立ち向かえる者は残っていなかった
風を、空気を侮ることなかれ
(479字)
孫子兵法は13章からなっていて、その7番目の章の軍争(https://ctext.org/art-of-war/maneuvering)の3節に次の有名な一節があります。
2023年4月下旬頃からシロクマ文芸部の企画に参加させて頂いております。ショートショートから始め、新たな好奇心で漢詩(七言律詩)、短歌、連歌なども練習しています。今回のお題は「風の色」が書き出しでした。どうぞよろしくお願いいたします。
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