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考古学展示

古代エジプト文明の時代、人々はまつげやまぶたや眉毛を黒くしていた
悪霊を追い払い、魂を守ることができると信じられていた
塗っているものの実体は、黒い色素物質と油脂の混合物であった
歴史上、色素や油脂の具体的な成分はさまざまな変遷を遂げた
気がつくと、その目的は、悪霊退治ではなく、化粧になっていた

19世紀、ワセリンが発明され、それが応用された
今日のマスカラの原型は、こうして生まれた
その後、界面化学の知識を駆使したさまざまな優れた製品が製造された
20世紀、21世紀には、化粧品産業は大きく成長した

だが、そんな時代も終わりを告げた
何度か繰り返し起きたパンデミックにより、人々の生活様式は一変した
ホログラフィ技術を駆使したり、臨場感あるリモートの面談がほとんどだ
自分の姿じたい電子化されている
化粧品はまったく必要ない

さらに、世界宗教の情勢に変化があった
目の周囲を装飾すると、悪霊を呼び込み、不幸になるらしい
そこで、眉毛を剃り、まつげを除去して、目の周囲をすっきりさせることが流行した
ぱっちりした大きな目よりも、ちびまるこちゃんのような目が人気がある時代になった

こうして、マスカラはついに世界から姿を消した
最後のマスカラは、当博物館に展示されている
貴重なものですので、手を触れないでください
(538字)

2022年8月20日以来、以下の企画に毎週参加させて頂いています。このところは毎週月曜に投稿、1年ぴったり2023年8月半ばまで続行します。今回のお題は「最後のマスカラ」をワードとして含む作品でした。どうぞよろしくお願いいたします。

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