ファントスミア
祟りじゃ
老婆が低い声で言った
ふるい屋敷である
お盆の頃、亡霊が出るらしい
見たという村人が何人もいる
そればかりではない
娘が非業の死を遂げた
亡霊に連れていかれたという噂だ
亡霊を見た者の話によれば、奇妙なにおいがするらしい
はっとすると、ささやき声や、大勢の子供たちが話す声や、泣き声、叫び声が聞こえてくる
そして前を見ると、亡霊らしい者がさっと通り過ぎていったということだ
あやうく、本当に祟りなのかと信じてしまうところだったよ
だって、しばらくしてから、その話とそっくり同じ経験をしたからね
呪いの臭みの正体はファントスミア(幻嗅)だった
どうやら、婆さんが出してくれたお茶、一服盛られていたようだ
まず嗅覚、次に聴覚、そして視覚と幻覚が進んだ
亡くなった娘さんは、この同じ薬物で中毒になり、あるとき急変したようだ祟り騒ぎは、そのカモフラージュだったと思われるが…
うん?
奇妙なにおいがするぞ
祟りじゃ
姿は見えないが、老婆の低い声が聞こえた
(408字)
2022年8月20日以来、以下の企画に毎週参加させて頂いており、ついに1周年、当初予定ではもう打ち切りですが、今回はとりあえず続行。以前は410字前後を大幅に超えることもありましたが、短く収まるようにしたいと思っています。今回のお題は「呪いの臭み」をワードとして含む作品でした。どうぞよろしくお願いいたします。
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