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ローレンツアトラクタ暴走の検証

MITの気象学者・数学者のエドワード・ローレンツ博士の1963年論文 "Deterministic Nonperiodic Flow" は、気象現象の予測の困難性を数学的に説明したものです。3元連立微分方程式の解が、異常な初期値敏感性を持つことがあります。

暴走という表現は穏やかではありませんが、ほとんど同じではないかと思える前提条件から予測を行おうとするとき、その結果は、そこまで異なってくるものなのか検証することは有意義です。

微分方程式は Runge-Kutta法(RK4法)で数値的に解くことにします。

RK4法の解にも誤差があり、それを嫌って、より高次な解法を用いる立場もあるかとは思いますが、今回は、初期値がわずかに違うとどういう結果になるのかを見るところに主な関心がありますので、そこはこだわらないことにします。プログラムは、計算結果が図示されるように改良してあります。マガジンご購読の皆様には、このプログラムはさしあげます。

プログラムを走らせた初期画面は、こんな感じです。X, Y, Zの初期値は、ひとまず、 (0,1,0) にしておきましょうか。

Z の初期値が 0 のとき

START ボタンを押すと、結果が瞬時に出ます。上のグラフは、x(t) です。下の2つのグラフは、3次元の (x(t), y(t), z(t))の軌跡を xy平面と xz に平面に投影したものです。

Z の初期値が 0.01  のとき

X, Y の初期値は (0, 1) のままとし、Zの初期値のみ変化させましょう。0ではなく 0.01 にします。すると、結果は以下のとおりです。下の2つのグラフの全体としての形は、どんな場合もそれほどは違わないので、似て見えるかもしれません。でも、中空になっている部分の大きさや形がかわっているのがわかるでしょうか。上のグラフにみられる振動のパターンは、もっとはっきり違っていることがわかります。

Z の初期値が -0.01  のとき

今度もX, Y の初期値は (0, 1) のままで、Zの初期値のみ変化させます。-0.01 にしましょう。結果は、次の通りです。これもまた違うパターンになってしまっています。

プログラムをつくると、こうやって調べることができて、便利ですね。それにしても、同じ式をつかっており、Zの初期値はほぼ0であることは違いないのに、こんなに時間発展が変わってくるとは、感慨深いものがあります。さらには、こうした式での表現じたいも、自然界で実際に起きる現象の近似であって、とりいれることができない要因もまだあることを考えると、なかなか精密な予測は難しそうです。

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