え!漢方って中国には無いの? 実は…漢方の歴史について
「漢方の歴史が深い」というイメージはある。が、では実際に漢方はいったいいつ頃からあるだろうか。
ズバリ、漢方の歴史を紐解けば、なんと、漢方の起源は約2000年前の中国にあるといえます。
というのも、その頃に「傷寒論(しょうかんろん)」などの漢方の原点ともいえる古典の医学書が作成されていて、そうした古典を基にして中国の伝統医学の体系が完成したとされている。
そして、その医学体系が仏教とともに日本に伝来されて、日本でも医学が根付いたのである。
中国から伝来したということで、漢方(漢方薬)といわれる様になり、その後、長きに渡って活用されてきたのである。
つまり、漢方は日本での呼び方であり、中国には漢方という名称は存在しない。中国では普通に「伝統医学」と呼ばれているのだ。
時が流れ、1960年代。
中国ではこの頃から伝統医学のことを「中医学(ちゅういがく)」と呼ぶようになり、その薬は中薬(ちゅうやく)、中成薬(ちゅうせいやく)と表現されるようになった。
つまり中国では、漢方という言葉同様に、漢方薬という言葉も通用していない。
漢方薬も日本だけのものというわけである。ただし、漢方薬と中薬、中成薬の中身は非常に近しいものがある。
すこし中国の医師事情に触れておくと、中国では西洋医学の医師(西医または医師)、中医学の医師(中医または中医師)に分かれている。
一方、日本では西洋医学を学び医師免許を取得した者だけが医師である。
そして、西洋化を推し進める勢力に押され、漢方医は明治維新後に廃止になってしまう歴史があったのである。
ちなみに、同様におとなり韓国でも、中国伝統医学が伝わっていて、韓医学と呼ばれている。
そして、それに使う薬は韓方と言い、このように伝わった先々で呼称が違っている。
さて少し話題が変わるが、日本では風邪のひきはじめに使うものでは、葛根湯(かっこんとう)が人気がある。
おそらく、読者の方にも使用経験のある方も多いのではないだろうか。
日本では風邪といえば葛根湯であるが、中国では風邪といえば銀翹散(ぎんぎょうさん)がいちばん使用頻度が高い。
葛根湯は風邪のひきはじめで、悪寒、発熱、頭痛などのある時に使うわけだが、これは体を温めて抵抗力を高める働きがある処方である。
一方、銀翹散は風邪のひきはじめで、のどが痛いときに使うが、これはのどを冷やしながら炎症をとる作用がある。
中国は国土が広いので、場所によってさまざまではあるが、基本は大陸性の気候であり乾燥している。温暖湿潤の日本のように冬場でも雪や雨が降り、湿気があるというわけではない。
つまり、日本に比べると圧倒的に喉を傷めて風邪をひくパターンが多いというわけである。
このように、漢方薬や中成薬も歴史的な検証のもと、それぞれの国の気候風土に影響を受け、繁用されるものが違ってきているのである。
今回はここまで。
読者の方に少しでも参考になれたなら嬉しく思う。