マガジンのカバー画像

ラオス

7
運営しているクリエイター

#カオチー

吟味と葛藤  ~サワンナケートのカオチー⑤ 

吟味と葛藤 ~サワンナケートのカオチー⑤ 

 ヒトが仕事しているって中、一人だけイスに座るっていうのは憚られるのだが、しかし座んないと、目を光らせて「座れっ!」――よけい気を遣わせてしまうらしい。
 作業の合間に飲む水を、私にもすすめることを忘れない。あぁ、私はただ見てるだけなのに…と申し訳なさを感じつつも、せかされてコップに口をつける。そのとたん、キューっと一気に飲み干してしまいたい衝動がやってきて、自分の喉の渇きに気付くのである。
 

もっとみる
窯入れ ~サワンナケートのカオチー③

窯入れ ~サワンナケートのカオチー③


 昔ながらの木造住宅を思わせる、深い茶色の木箱。着物用桐タンスのようなその大きさの中には、真っ白な生地たちが、じっとおとなしく待っていた。
 思い浮かぶのは、スヤスヤと眠る猫の、グーにした手。…ってべつに毛が生えているわけじゃないんだけど、何となく気持ちヨサソウな、そ…っと触れてみたくなるフックリ感がある。
 体長約二十センチの棒状だが、真ん中部分がやや太く、それから端に向けてやや狭まっているナ

もっとみる
サワンナケートのカオチー①~具入り点描

サワンナケートのカオチー①~具入り点描

 寿司職人にも劣らないだろう、次にやることが分かっているからこその、休みない手。
「何をどのように入れてくれるのか」の観察に目を凝らすこちらの前で、サラッとした表情を変えることもなく流れを止めないのは、想像としては七、八つぐらい年上だろうか、のお姉さんである。
腰丈の台の上に設えられた、透明ケースの棚にある幾つかの容器の中から、ヒョイヒョイと各種の「具」が、ジャンプするようにカオチーの「口」へと収

もっとみる
ラオスの「カオチー」について

ラオスの「カオチー」について

 信念を焼き込めたような、見事な焼き色。鎧をまとっているかのような厚い皮を蹴破るほどの「えぐれ」には、活きがいいという表現を通り越した、「雄叫び」とでもいうエネルギーを感じる。
「フランスパン」の中でいうならば、大きさは「バタール」に当てはまるだろうか。三十五、六センチという長さ、野球バット(の太い部分)のような胴回り、そしてクープ(切込み)も、たいていのものがそのように三本だ。
いわゆる「フラン

もっとみる