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【北欧旅行記】DAY3:アアルト自邸とオフィス、3つの図書館を訪ねて

前日の夜はシャワーを浴びることなく寝た。普段は毎晩、湯船につかる習慣があるし、夜お風呂にはいらないのは気持ち悪さがあるけれど、こちらに来てから「夜のシャワーはなしでもいいかな」とナチュラルに思うようになっていた。家の中、とくに洗面所は暖かくて、シャワーをした後タオルにくるまれるまでに身体が冷えるわけではないのだけど、ひやりと寒い外から帰ってきたら湯船に浸かってじわ~っと身体を温めないのでは、お風呂に入る意味が半減してしまうみたい。すると、途端にめんどくさくなってしまって、夜のシャワーはスキップ。代わりに、朝起きて目覚めのシャワーをするのだった。

今朝のごはんは、カラフルだった。ピザトーストに、ナスとズッキーニのグリル、トマト、レタスやハム。イチゴやリンゴのフルーツなど、スーパーで買ってきたあれこれを並べると彩りがよく見えた。買ったばかりのマリメッコのペーパーナプキンも添えてみる。


同じメニューでも、日本の自宅でも同じようにカラフルに感じただろうか。テーブルの色が白だから、よけいに鮮やかに思えたのかもしれない。たっぷりの朝食は、いつもの休日の朝のような時間だった。

3日目、今日は北欧デザインに大きく影響を与えたといわれているアルヴァ・アアルトの自邸とオフィスの見学ツアーが一大イベント。そのほかは、行きたかったカフェや図書館を巡る、ゆるりとした(?)スケジュール。

今日は朝から、相棒のベビーカーがある安心感よ。子連れ旅でも、ベビーカーさえあれば、トラムや地下鉄に乗ってどこまでも行けそうな気持ちになる。周りの人びとのまなざしは優しくて、乗る電車を調べていると「Are you lost?」と声をかけてもらうことがあった。自立心が強いゆえ、周りの人には無関心といわれることもあるフィンラント人だけど、気にかけてくれる方は多いと思う。

最初に立ち寄ったのは、TOOLO図書館。ヘルシンキの中心地からは少しだけはずれ、団地のようなアパートが並ぶ郊外エリア(という印象)にあった。3階建てで、ほどほどに大きい。茶色い壁が控えめな感じだなと思ったけれど、中に入ると縦に長く、奥行きを感じる。何より入ってすぐ、明るくポップな子ども図書館的なのがあるのがよかった!

館内は細長で、各階にカテゴリーごとの書棚が細かに置かれていた。細長い空間の中に段差があって、座れる場所をつくっているのが面白い。扉つきの集中できるreading roomなるものがあったり、音楽ホールがあったり、用途にあわせて使える空間があるのはOodiと一緒。個人的に、規模感がちょうどよくて、家の近所にあってほしいのはこのくらい。

子ども図書館内を担当していたスタッフさんに乗り物の絵本について尋ねると、少し雑談をしてくれた。旅行できていること、フィンランドの図書館に興味があること(フィンランド人の図書館利用率は世界トップクラスといわれている)、息子が乗り物好きなことなどを片言の英語で話す。すると、近くにトラム博物館があることを教えてくれて、資料まで印刷してくれた。本のスペシャリストとしてだけでなく、旅が楽しくなるようにと当たり前のように教えてくれたことが嬉しかった。

本当は、この後はカフェに行く予定を立てていたけれど、教えてもらったトラム博物館へ。図書館から歩いて2分くらいで、ほんとにすぐ到着。

デザインが素敵な看板
劇場をリノベーションしたような建物だった

アアルトツアーの時間が近づいてきたので、トラムに乗って向かう。車窓から見た街中にたつ鉄塔は細くて、グランドデザインなのか、錆びているだけなのかはわからないけど、木々に紛れて目立たないのがいい。

ランチに寄った「CAFE TARINA」
光がやさしく美しかった

今回、アアルトのツアーへは私一人で参加することに。ツアーは、自邸とオフィスがそれぞれ1時間ずつ、間に30分の休憩。なので、おおよそ2時間半を、夫と息子には近くの公園などなどで過ごしてもらう計画だった。

まずは自邸のツアーへ。カフェから坂道をのぼり間もなく到着、というところで、完全にノーマークだった図書館を発見。最初の時間つぶしはここで問題なさそうだ。ふたりと別れて、アアルトの自邸へ向かうと、玄関でガイドのスタッフさんが迎えてくれた。

ツアーは全て英語。ガイドが始まる前に少しだけ会話をするシーンがあるも「もしかして英語あんまり得意じゃない?」と心配される。へへへ、とごまかし笑いをしていると、ガイドブックを持ってきてくれて「(意味がわからないガイドを聞いているのは)時間の無駄になっちゃうかもしれないから、これを見ながら自由にしていてもいいよ」的なことを言ってくれて、なんて思いやりのある対応!と感激。でも、お話はやっぱり聞きたいから、ガイドブックも見つつ、しっかりガイドに耳を傾けたのでした。(後から、同じツアーに参加したことのある友人にGoogle翻訳を使いながら聞き、なるほどその手があったかと気づく)

ガイドの内容は、アルヴァ・アアルトの生涯や、建築デザインしたものの背景、家族との暮らしなど。日本のフレキシブルに空間を使うことに影響を受けたということ、アルヴァのパートナー、アイノ・アアルトは、アルヴァと異なるデザインが得意だったという話が印象に残った。アルヴァは、アイノが亡くなったあとすぐ二人目の妻・エリッサと結婚したことを受けて、ガイドさんが「Aalto is lazy boy」と言って、参加者みんなで笑ったことも。

カーテンから透ける光がやわらかくて心地よい
季節が巡ればまったく違う景色が見えるんだろうな

隙間時間で、図書館にサクッと合流。ここはTOOLO図書館よりさらにこじんまりとしていて、今回の旅で訪ねた図書館の中でいちばん静かだったかも。でも、ミニ児童館のようなキッズエリアがあり、息子はそこを堪能していたよう。お絵かきしたり、馬のおもちゃに乗ってみたり、楽しそうに過ごせていてよかった。

TOOLOでもそうだったけど、子ども椅子にはアルテックのスツールが使われていた。フィンランドでは、学校や公共施設の椅子にアルテック製品が採用されているそうで、幼い頃から素晴らしいデザインに誰もが触れられる環境はとてもいいものなんだろうな。大人になるにつれ、どんな影響があるのかも気になるところ。

すぐに、オフィスツアーの始まり。夫と息子は、近くの公園にでかけた。

個人的には、オフィスツアーの方が面白かった。空間のつくりがアルテックの仕事観とつながってみえたこと、食堂、作業場、会議室などいろんな部屋の顔に触れられたこと、(自邸も様々な部屋があったけど、どの部屋も気持ちよくリラックスするための場所という役割は近しかったように思う)、実際に椅子に座って過ごせたことなどが、きっと理由。

食堂。12時になったらベルが鳴り、みんなでランチをとったそう
アルテックの家具に使われるLレッグ

会議室でのことがオフィスツアーのハイライト。アルテック社の歴史が写真とともに掲載されていて、創業当時(1935年)の集合写真を目にしたときに、男女両方が写っていることが新鮮に感じた。日本は昭和10年の頃、仕事の現場はほとんど男性だったのでは。男女平等に、社会で活躍するチャンスが早くからあったのかな、世界的にも有名になるようなブランドの仕事環境がこんな感じで何か影響があったのかなーなんて、浅はかな知識で思考を巡らす。

この部屋で、一緒にツアーに参加していたイギリスからのマダムとおしゃべりをしたのも思い出。会議室には、手を掛けられる深めのパーソナルソファが二つ、ハの字に置いてあった。先にマダムが座っているところ、隣にボフッと座らせてもらう。目が合い、話が始まる。お互いの旅のきっかけや、日本の話、家族の話、いろんな話が弾んだ。こんなふうに、心身がゆるまるような椅子があれば、おしゃべりって始まるんだな。「正確な言葉でなくとも、あなたの英語は、ちゃんと伝わるわ。大事なのは、伝えようとする気持ちよ」という言葉に、勇気をもらった。

ツアーが終わり、家族と合流。私の姿をみて、走ってくる息子が愛おしい。公園にはアスレチックあり、誰もが使える誰かのおもちゃあり、息子はのびのび遊んでいた。公園や図書館がどこにいってもあるは、子連れ旅いちばんの味方。

「Oodiに行きたい!」と言いながら、ベビーカーで息子が寝落ちしたので、夫の提案で中央駅からヘルシンキ大聖堂をまわることに。なんだかんだこれまで立ち寄っていなかったので、いよいよ!という気持ち。

その前に美術館「AMOS REX」にもふらりと入ったり

途中、ヘルシンキ大学図書館が近くにあるはず!と思い出して立ち寄る。玄関を入った正面、螺旋階段が美しい。大学図書館だけあって、さすがに子どもの遊び場はなかったけど、同じようなパーツがたくさんの1000ピースパズルが自由にできるように置いてあって、ついやっちゃう人がいるんだろうな。作業に集中することで、気分転換になりそうだものね。

息子が起きて、騒がしくなりそうだったので即退散。ヘルシンキ大聖堂まではたどり着けず、逆戻り。Oodiに向かう途中、駅にあるカフェでお茶をした。

Oodiは息子のお気に入りスポットになった。少しの遊び場と、のびのび動ける空間、なにより電車が見えるスポットということ。彼にとって、ちょうどいい遊びが揃ってるんだろうな。

母子で遊んでいたところに、仕事終わりのお父さんが食べ物をもって合流して、夕食らしきことを済ませているのを見て、なんかいいなと思った。

帰宅。今日は金曜日。フィンランドでは、タコス(ピザ?)の日があって、それに便乗。スーパーにはタコスコーナがあるほど!人生初の、レッツサルサパーティー!

帰りに買ってきたお惣菜の盛り合わせも一緒に

サルサソースを買っちゃえば、挽き肉を炒めて、アボカドを切るだけ。そのお手軽さゆえ、金曜の夜ごはん。好きな具材をそれぞれ巻いてパクッと食べるのは楽し美味しかった。息子は日本からの持ってきた乾麺を喜んで食べていたけれど。帰国してからもやろう!と話した。

▼今回の北欧旅行記はこちらのマガジンでまとめています


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