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【Solitude Standing】(1987) Suzanne Vega 80年代に登場したニューヨークの吟遊詩人

私、スザンヌ・ヴェガという歌手が結構好きなんです。彼女の書く憂いのあるメロディ、囁くような優しい歌声、一見して文学少女っぽい品性のあるルックス……全部が違和感なく溶け込んで自然と身体に染み入ってくる感じがあるんです。CDもかなり買いました。

最初に聴いたアルバムが本作。1番のヒット作です。でもはじめ、私は彼女の名前しか知らなかったので1曲目の、


♪アイアム フ〜ンフン フンフン フ〜フ〜

お経みたいな "Tom's Diner" を聴いて、テレビのCMでよく流れていた曲がスザンヌ・ヴェガだったんだとようやく繋がったのでした💦

2ndアルバム 邦題【孤独(ひとり)】

スザンヌ・ヴェガって、私の中では街中の詩人といった佇まいを感じます。
アコースティックギターを奏でながら、冷ややかに呟くように歌う姿。日常生活のふとした瞬間をいつも鋭く観察していそうです。

ニューヨーク育ちで、アマチュア時代にはコーヒーハウスで弾き語りをしていたらしく、先の "Tom's Diner" も、伴奏無しのアカペラで歌う様子は寧ろポエトリー・リーディングに近いスタイルです。グリニッジビレッジ辺りで歌っている吟遊詩人兼フォーク歌手、スザンヌ・ヴェガってそんなイメージがピッタリなんですよね。

本作からはヒット曲 "Luka" が誕生。児童虐待をテーマにした歌詞だったという衝撃から、当時は新世代の社会派シンガーソングライターとして騒がれたようです。でも日常を俯瞰で淡々と描く彼女の作風からすれば、それはある一面だったという気がします。

プロデューサーに名を連ねているのは、ニューヨークパンクの女王パティ・スミスのギタリストだったレニー・ケイ。この人、相当なレコード収集家でもあり、マニアックなガレージバンドの音源を集めたコンピレーション盤【ナゲッツ】の監修も担当するような一風変わった人物なのです。

バックは当時のニューヨークの新鋭を起用したスザンヌの新バンドが担当。彼女の内省的な世界を最大限に活かした、冒険的なサウンドに惹き込まれる1枚です。


(アナログレコード探訪)
〜我が家のお宝を紹介します〜

スザンヌ・ヴェガの中古レコードは英国盤で見掛けることが多い気がします。不思議です。本国より英国で売れていることが原因かもしれません。(本作は米国でもヒットしてますが…)。

A&Mレコードの英国盤 音は抜群
インナースリーブ

大好きな "Luka" を12インチ盤で見つけました。やはり英国プレスでした。12インチって情報量が詰まっているので、一番良音だと言われますが、確かにLPより音圧あってリアルに響きますね。まるでマスターテープを聴いてる気分です。

"Luka" 英国12インチ・シングル

ところでこの盤、買って気付いたのですが、何とジャケットはスザンヌ・ヴェガのサイン入りだったのです(右上)! ラッキー!!
レコード収集していると稀にこういうことがあります。何という幸運(^^)

裏ジャケットには貰った人の名前でしょうか、サインがありました。英語音痴な私はパッと見て、 これも Suzanne Vega っぽく読めるのがややこしいです…。



Side-A
① "Tom's Diner"
本作に収録されてるのは先のアカペラ版ですが、同年、英国のダンスユニットのDNAがスザンヌの声をサンプリングして、大胆にもダンスビートを被せたカバーで全米5位の大ヒットを記録します。それがこちら。結果的にこっちが有名になってしまいました。
スザンヌ本人もこれを面白がったそうで、数年後には電子系音楽に傾倒したりと、妙な結び付きを感じます。


② "Luka"
ニューヨークでは児童虐待はよくある事だった、とはスザンヌの弁。ルカという内向的な少年の視点で独白する歌詞が何とも痛々しく刺さります。しかしこの曲のヒットで、ファンレターは人生相談のようなものばかりになって本人も困ったとか…。
日本語訳の歌詞が出る映像を見つけたので、当時のPVと共に。若い頃のスザンヌ、前髪パッツンで可愛いデス(^^)


Side-B
② "Calypso"
1978年に書いた曲だそうですが、既にスザンヌらしい浮遊感あるメロディに乗って、自由に物語を歌いこんでいくスタイルです。アレンジもゆらゆら漂うイメージ。スティールギターやシンセサイザーが効果的です。デビュー前にはコーヒーハウスでこうした曲を一人で歌っていたのでしょう。


⑤ "Wooden Horse (Caspar Hauser's Song)"
本作では最も実験性が光る出色の出来の一曲です。ドラムのタム回しがループのように繰り返される中、スザンヌが憂いのある歌声を響かせます。ディレイを効かせたギター、多重録音のコーラスなど、アンビエントな音像がスザンヌの歌と相俟って寒々しく広がります。素晴らしい。


このところ急に秋めいてきました。これから冬に向けてスザンヌ・ヴェガの歌が似合う季節。久しぶりに聴いてみたけど、いいアルバムですね。秋の夜長に如何でしょうか?

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