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【Mind Games】(1973) John Lennon甘美でロマンチックなヌートピア宣言

私が中学生だった頃です。テレビのニュース番組で故ジョン・レノンの未発表テープが見つかった、というのを観たことがありました。後に知るところに拠れば、海外のラジオ局が【The Lost Lennon Tapes】と題して未発表の音源を放送したというニュースだったのですが、当時の私は心躍りました。だって、亡くなった人の未公開の歌が聴けるなんて!ちょうどこの頃に公開された映画《イマジン》を観たことも関係しました。

数分間のニュースで、今もよく憶えている未発表曲があります。 "Make Love Not War"という曲。ジョンがピアノでコードを弾きながら

♪めい〜くら〜ぶ  のぉ〜と うぉぉ〜

と歌うスローテンポのラフテイクです。
番組では「この歌は後にある曲に生まれ変わります」とナレーションが入って、差し替えで流れてきたのが "Mind Games" !
へぇ〜、こうなってるんだぁ、良い曲だなぁと感激の私は、早速本作のLPを買ったのでした。

裏ジャケは虹がかかってる

ジョン・レノンのソロ4作目となる本作。ジョンの中でも地味な部類の作品かと思います。喜び勇んで買ったのはいいけど、当時の私もこれは失敗したかなぁ…と💦

本作、まずジャケットが嫌いでしたね。地平線に横たわるオノ・ヨーコに対してちっぽけなジョン・レノン。ジョンにとってヨーコの存在の大きさは判るけど、おい、しっかりしろよ、と思いました(笑)。
内容はというと、これがまた随分とソフト。悪く言えば甘ったるい。ジョンは前年に【サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ】というかなり政治的でラジカルな作品を発表したもののセールス的には失敗。その反動から音楽もメッセージも柔らかくなったのかもしれません。

映画《イマジン》の中でも、2人が記者会見に臨み「ヌートピア」なる想像上の国家の誕生を宣言する一幕がありました。ジョンが「国旗はティッシュでいいよ」なんてふざけるくらいに2人の平和活動もやや軟化した頃だったのでしょう。このアイデアがそのまま本作の主旨となったようです。

とはいえ、曲の幾らかはヨーコへの謝罪、ヨーコへの忠誠を歌っており、やはりジョンは公私混同の人。正直、耳タコです…💦
プロデュースはジョン自身。一流ミュージシャンをバックにニューヨークで録音。本作の録音終了から有名な別居生活「失われた週末」に入っているようなので、ビートルズ解散前後から続くヨーコとの活動の節目となった作品と言えそうですね。

近所のガラクタ屋にて300円で見つけた米国盤。
ジャケットにはシミが付着(泣)
ところが中身は何と米国キャピトル・レコードの
初期盤なのでした。音も良い!
内袋には最初の持ち主と思われる方の単語訳が。
ジョン・レノンの歌詞を訳したくなる気持ち、よく解ります。端っこに本人らしき女性の名前のサインもありました。今、何されてるんだろう…。


Side-A
①"Mind Games"
「愛こそ答え」とジョンが歌う平和賛歌。スライドギターもレゲエ風のカッティングもジョンが弾いてるそうです。ボーカルをダブルトラックで左右に振ったり、メロトロンを取り入れたりと空間を感じるサウンドが甘美で心地いい〜。
前述のデモテイクの"Make Love Not War" という歌詞は、最後の最後、曲がフェイドアウトする箇所で出てきます。


②"Tight A$"
一転して1950年代を意識したようなロカビリー風ナンバー。2年後のアルバム【ロックンロール】を予感させる演奏です。やっぱりジョンは初期のR&Rが大好きなんですね。


③"Aisumasen (I'm Sorry)"
ゆったりしたサウンドの中で、ヨーコへの懺悔を歌うバラード。
天下のジョン・レノンが、あいすいません、と日本語で歌う姿は複雑ですが、ロマンチックで美しいバラードで悪くない。

④"One Day (At a Time)"

⑤"Bring on the Lucie (Freda Peeple)"

⑥"Nutopian International Anthem"
数秒間の無音です。


Side-B
①"Intuition"
ジョンの隠れ名曲だと私が信じて疑わないのがこちら。曲名は直感力みたいな意味らしいですが、まさしくジョン・レノンの人生そのものですね。軽やかなリズムに一筆書きを走らせたようなメロディが秀逸。ポップで気分が上がります。ベースラインがよく跳ねてカッコいい〜。

②"Out the Blue"
巧みなスリーフィンガーの弾き語りかと思わせて、バックが入るとスケールの大きなアレンジへ変身。本作はフィル・スペクターの手を離れたジョンが、彼なりに工夫して築いた音作りが楽しめます。

③"Only People"

④"I Know (I Know)"

⑤"You Are Here"

⑥"Meat City"


淡白なようですが、聴くたびに発見のある1枚です。曲も悪くないし、ちゃんとしたプロデューサーに頼んでいればもっと仕上がりも良かったでしょう。評価も上がっていたかもしれません。
個人的にはこのゆる〜い感じも良くて、2年に1回くらい聴きたくなるアルバムです(笑)。あとやっぱり昔の邦題の【ヌートピア宣言】が良かったなぁ…。

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