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【She's The Boss】(1985) Mick Jagger ストーンズのフロントマン先鋭的な1stソロ

ミック・ジャガーの1stソロアルバムです。私、本作が好きでした。良く聴きました。
ストーンズではキースが断然好きですが、ソロアルバムでのミックのポップな作風も大好きです。
いま思うと、1980年代の彼等はストーンズ本体より、各ソロ作品の方が遥かに刺激的で面白かったように思います。

本作、非常に気合いが入ってます。都会的で洗練されたサウンドの中にもハイパーなエナジーが漲ってます。シャープなロックからブラックミュージック、ニューウェイブ的な音まで。ミックも初ソロということで肩に力が入ってますね〜。

それもそのはず、ローリング・ストーンズはこの頃新たにCBSレコードと全世界の配給権を契約。その金額は当時50~60億円とも言われ、ストーンズとしての活動が滞る中、記念すべき1作目として制作されたのが本作だったのです。

「いつもと同じメンバーと演ってたらカビが生えちまう」と吐き捨てていたミック。それだけにストーンズとは違ったアプローチが光ります。
共同プロデューサーに当時はデビッド・ボウイ【レッツ・ダンス】、マドンナ【ライク・ア・ヴァージン】で名を上げたナイル・ロジャース、そしてビル・ラズウェルを起用。如何にも流行に敏感なミックらしくアーバンでポップな作品に仕上げられています。

ゲストも豪華。ジェフ・ベック、ピート・タウンゼント、ジョン・(ラビット)・バンドリック、ヤン・ハマー、ハービー・ハンコック、スライ・ダンバー、ロビー・シェイクスピアなどなど…。中でも先日亡くなったジェフ・ベックはほぼ全編に渡って参加して印象的なプレイを聴かせています。

私思うに、ミックはベックの参加を本作の1番の売りにしていた気がします。話題作りに長けた人です。「俺とジェフ・ベックが共演する作品、皆んな聴きたいだろ?」なんていう計算があったかもしれません。
まぁ単純に巧いギタリストとやりたいという本音もあったと思いますが…(笑)

ともかく時代感覚に優れたアルバムです。
マイケル・ジャクソンやプリンスとも張り合おうという位の気概を感じますね。賛否は有りましたが、本作の「売ってやろう」というギラギラした商売っ気、悪くはないと思います。楽曲も粒揃いです。



(アナログレコード探訪)
〜日本盤は原盤スタンパーから製作した良音盤〜

CBSソニーの日本盤 1985年3月21日発売

本作は前述のようにCBSレコードからの1作目ですが、気合い充分なのはミックだけではなく、レコード会社も力を入れていたことが当時のアナログ日本盤から窺えます。

A面の内周無音部「AL-39940」と刻印

ご覧のように、日本盤の内周部にはオリジナル・マスターテープの番号が手書きで刻印されており、原盤から製作したスタンパーでプレスされたことが判ります。

また"MASTERDISK"の刻印もあり、これはストーンズの諸作を手掛けたボブ・ラドウィックという名匠がマスタリング、カッティングをした証。なかなか音に拘った1枚だったのです。
こうした仕様が世界盤で共通しているかは分かりませんが、日本盤に関してはかなり高音質です。

ちなみにミックの次作【プリミティヴ・クール】の日本盤はコピーマスターを使った日本カッティング。やや音は劣ります。


〜曲紹介〜

Side-A
① "Lonely at the Top" 3:47
シャープなビート、ミックの気張った歌唱からしてハイテンション。この曲のみジャガー=リチャーズ作品です。
キースは後に「あの野郎が出来の良い曲をソロに持っていった」と発言していたので、【ダーティ・ワーク】(86年)収録も予定していたのでしょう。
確かにストーンズぽい曲調をソリッドにしたノリがカッコいい。間奏のトリッキーなソロは流石のジェフ・ベックです。


② "1/2 a Loaf" 4:59
キャッチーなメロディですね〜。個人的に本作で1番好きな曲です。2コーラス後にCメロまで付けた作り込んだメロディ。ヒット性十分。ミックの自信作だったと思います。


③ "Running Out of Luck" 4:15

④ "Turn the Girl Loose" 3:53
シンセ音が耳につきますが、ミックなりに最新ブラックミュージックを咀嚼した感じでしょうか。シャウトにも力が入ります。シンセでハービー・ハンコックが参加。


⑤ "Hard Woman" 4:24

Side-B
① "Just Another Night" 5:15
先行シングルとなったヒット曲。リズム隊はスライ&ロビー。クラブヒットも念頭に入れたようサウンドです。アレンジもあれこれ小細工してます。アコギは全てジェフ・ベック。官能的なソロが映えます。

② "Lucky in Love" 6:13

③ "Secrets" 5:02

④ "She's the Boss" 5:15
これとB-②はデビッド・ボウイのギタリストだったカルロス・アロマーとの共作。ボウイとミックといえばこの年「ダンシング・イン・ザ・ストリート」のデュエットカバーをしていました。
軽やかなニューウェーブ風ですが、ダブのアレンジも取り入れてミクスチャー的な感覚。ストーンズでは出来ないこと、色々と挑戦していますね。

先鋭的なサウンドの本作ですが、やっぱりミックの声や節回しを聴くとストーンズを連想してしまいます。
ストーンズだったらこの曲はどんな感じになる?と頭の中で描いてしまうんですよね。
ファンの気持ちとは裏腹に、本人は自分の可能性を試したかったのでしょう。ミックのソロ志向は暫く続きます。

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