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【It's All About】(1968) Spooky Tooth アイランド・レコード秘蔵バンドのデビュー作

1960年代に爆発したブリティッシュインベンションですが、当時そこそこの活躍をしながらも歴史に埋もれてしまったバンドがたくさん存在します。
マニアックながらこのスプーキー・トゥースもそんな惜しいバンドの一つだと思います。

彼等の初期のアルバムが良いんです。私はベスト盤で済ませてたのですが、オリジナル作品を聴いてビックリ!侮れないバンドです。

このデビュー作はサイケデリックな意匠が際立つ内容ですが、なかなか聴き応えのある奥深い作品です。

左からグレッグ、マイク・ケリー、ルーサー、マイク・ハリソン、ゲイリーの5人

スプーキー・トゥースは1968年にアイランドレコードからデビュー。
初期はジミー・ミラーによるプロデュース。1stアルバム発表時のメンバーは、

マイク・ハリソン(ボーカル、キーボード)
ゲイリー・ライト(ボーカル、キーボード)
ルーサー・グロヴナー(ギター)
グレッグ・リドレー(ベース)
マイク・ケリー(ドラム)

ご覧の通り、ツインボーカルとダブル鍵盤というユニークなバンド編成です。
ソウルフルな声質のマイク・ハリソンと、ハイトーンの裏声を駆使するゲイリー・ライトという個性の異なる二人のボーリストが同時にリードを取りながら、鍵盤演奏でも盛り立てる双頭スタイル。

この時代のダブル鍵盤といえばプロコル・ハルムを思い浮かべますが、実際に当時からその類似性を指摘されていたようです。私も初めて聴いた時はプロコル・ハルムをハード&サイケにした印象でした。

実はジミー・ミラーは、元々プロコル・ハルムを手掛ける話があったそうなのです。
マシュー・フィッシャーに拠れば、これが叶わなかったためにジミーなりのプロコル・ハルムとしてスプーキー・トゥースを発掘したとのこと。

つまりスプーキーはジミーの秘蔵バンドだったんですね。そんな訳で彼等のデビューには相当に力を入れており、本作では本業の立場を超えてメンバーと5曲を共作。アレンジ面でも随分と指揮を執っています。

この時代らしいサイケデリックな音像に、クラシック、R&B、ブルース、米国南部と様々に盛り込んだ本作ですが、全体では統一感をもって纏められているのは、やはりジミー・ミラーの手腕です。
バンドの演奏力も高く、楽曲の粒も揃っており、アイランドの期待のほどを窺わせるクオリティ高いデビュー作です。


アイランド・レコードの英国盤。
ピンク"i"と呼ばれるレーベルデザインで、1969~70年にプレスされた盤です。マトリックス不明。
スピーカーから音が塊になって押し出されるダイナミックな感触。この時代のロックを感じます。
裏ジャケット写真。いかにも時代を感じる
サイケデリックなアートカバー。


Side-A
① "Society's Child"  4:30
何とこちらジャニス・イアンのデビュー曲。日本でもドラマ主題歌がヒットしたことのある彼女が66年に発表した作品です。
黒人少年と白人少女の人種間の禁断の恋を歌った内容で、当時は放送禁止の問題ともなった曲。こんな異色カバーのアイデアもジミー・ミラーだったのか?興味深いです。
スプーキーはメランコリックなメロディを荘厳なオルガンをバックに、2人のボーカルが劇的に歌い上げています。



② "Love Really Changed Me" 3:33
一転してブルー・アイド・ソウル風。
曲調は同じアイランド所属のスペンサー・デイヴィス・グループぽい。でもカラフルに彩られたアレンジは初期トラフィック風。気のせいかマイク・ハリソンの声もS.ウィンウッドに似てます。目くるめく万華鏡のようなサイケポップの世界です〜。


③ "Here I Lived So Well" 5:06

④ "Too Much of Nothing" 3:57
本作のハイライトと言えるヘヴィロック。
曲はボブ・ディランがザ・バンドとビッグピンクで録音した【地下室】時代のカバー。
重厚なサイケ&ハードなサウンドが圧倒的!マイクとゲイリーのボーカルも熱く、この時代のブリティッシュロックの熱量に惹き込まれます。シビれる〜!(^^)


⑤ "Sunshine Help Me" 3:02
ソングライティングの中心、ゲイリー・ライト作の彼等のデビュー曲。
クラシカルなハープシコードも彼によるもの。これもサイケ&ハードで迫り来る重厚なノリがカッコいい!


Side-B
① "It's All About a Roundabout" 2:43

② "Tobacco Road"  5:33
後に多数のカバーを生むブルースの古典。
サイケ風味のヘヴィブルースロックにアレンジ。この古臭さ、好きですね〜。マイクの渋い喉が光りますが、正直言って私はゲイリーの裏声は気色悪いと思います…💦
ギターのルーサー・グロヴナーは、後にモット・ザ・フープルに加入。ここではひと味違ったブルージーなギターを披露。
エンディングに一瞬、不自然に次曲のピアノイントロが挿入。スタジオギミックか??


③ "It Hurts You So" 3:03

④ "Forget It, I Got It" 3:26

⑤ "Bubbles" 2:49


バンドはこのあと米国南部志向を強めて、2作目【スプーキー・トゥー】というこれまた素晴らしい作品を発表しています。

各メンバーがその後のキャリアで成功したために、踏み台のようになってしまったスプーキー・トゥースですが、ブリティッシュロックの醍醐味が味わえる、歴史に埋没するにはちょっと勿体ないバンドです(^^)

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