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【Fifth Dimension(霧の5次元)】(1966) The Byrds    フォークロックからサイケへの過渡期

アメリカのロックバンドのルーツを遡っていくとその源流はバーズだとよく言われます。

私はベスト盤CDでバーズを聴くのが大好きなのですが、決まって曲数の多い長時間盤がお気に入りです。
初期のヒット曲の楽しさに加えて、後に彼らが辿っていった音楽性の変遷を聴いてると、まるで1960年代後半の米国ロックを早回しで体感してるような気分に浸れます。

またこのバンドが面白いのは、メンバーそれぞれが次々とソングライターとして成長しては去って行くのに、その後も才能ある人材に恵まれるとこです。節目節目で新しいジャンルの開拓者にもなり、なんだか不思議なバンドです。

本作はバーズの3rdアルバム。1965年にフォークロックのサウンドでデビューした彼らが、後のサイケデリックに繋がる音を聴かせたことで知られる作品です。

・米国盤レコード(ステレオ)

米国コロムビアレコードのUSステレオ盤。

年季が入って見づらいですが、ジャケ上部中央に『STEREO』表記があります。
本作の製作前にジーン・クラークが脱退しているのでジャケに写るメンバーは4人に。

この時代の録音に音質は不問でしょう。生々しくズンズンと迫ってくる音の感触には60年代ロックのエネルギーを感じます。
ステレオミックスがまだ確立されておらず、左右に各楽器を振り分けていますがそれも今となっては味かも知れませんね??

・米国盤レコード(モノラル)

同じく米国コロムビアレコード、こちらはUS
モノラル盤です。
ジャケット上部に表記が無い分、タイトル、写真全体が上に移動してます。

マニアなビートルズファンが、モノラル音源こそビートルズだと言うのを聞きますが、バーズにも同じ事が言えるかと思います。

以前は全く興味の無かったモノラル・ミックスですが、実際にモノラル針で聴いてみると確かに凄い。ステレオに比べて音域は狭いですが迫力あって音も太いのです。
例えば「エイト・マイルズ・ハイ」のイントロで、ベースが真ん中からド〜ンと出てくる感じはなかなかの迫力です。左側だけに振ってしまったステレオミックスとは印象がだいぶ変わってきます。

どちらにも良さはありますが、モノラル中心の時代だけに、全体を配慮した音は意外にスッキリした聴感があり感心させれられます。

【Fifth Dimension】(1966)

A-①「5D」(Fifth Dimension)
 ②「Wild Mountain Thyme」
 ③「Mr. Spaceman」
 ④「I See You」
 ⑤「What's Happening ?!?! 」
 ⑥「I Come and Stand at Every Door 」

B-①「Eight miles High」
 ②「Hey Joe」(Where You Gonna Do)
 ③「Captain Soul」
 ④「John Riley」
 ⑤「2-4-2 Fox Trot」(The Lear Jet Song)

タイトル・トラックA-①は従来のフォークロックっぽくも、やはり以前の清廉な音とは違ったバンドの変化が感じ取れます。スペースロックと評されたようにスケールの大きさを感じます。
アレンジ面では何と言っても(当時ジム)ロジャー・マッギンのリッケンバッカー12弦ギターの音色がこのバンドの肝ですね。後半に聴こえるオルガンはヴァン・ダイク・パークスによる演奏。いいアクセントになってます。

ジーン・クラークが抜けて、俄然本作から才能を発揮したのがデビッド・クロスビーだと思います。カバー曲B-②では激しいボーカルも披露していますが、マッギンと共作したA-④はかなり良い仕上がり。
性急なアップテンポのロックナンバーですが、かなり攻撃的でガレージロックっぽくもあります。カッコいい〜。

そして本作におけるバーズ最大の収穫が、
マッギン=クロスビー=ジーン・クラーク共作のB-①。

イントロの重々しいベースから始まって、不協和音が渦を巻いて行くようなマッギンの12弦ギター!そしてスリルあるコーラスワーク。それまでのロックに無かった不吉な空気が伝わってきますね〜。
サイケデリックの萌芽、ロック史を代表する1曲ではないでしょうか。

マッギンのギターフレーズは、インド音楽やジョン・コルトレーンのサックスプレイを参考にしたそうですが間違いなく発明ですね。

さて初期のバーズには、コーラスワークで全編を歌い上げるフォークカバー曲がよくありますが、本作で一際美しいハーモニーを聴かせるのがA-②。
調べてみるとこの曲とB-④は、原曲が英国のトラッド・フォークでした。

ボブ・ディランやポール・サイモンが渡英した際に、英国のフォークソングやギター奏法から大きな影響を受けたのは有名ですが、バーズにもそんな一面があったようです。

本作はマッギン、クロスビーが健闘したものの、ディランのカバーもなく、楽曲の数が間に合わなかった感があります。やはり脱退したジーン・クラークの穴は大きかったのでしょうね。
またフォークロックから次への一手としても中途半端な印象を受けるアルバムです。

やがて今度はベースのクリス・ヒルマンがライターとして頭角を表すバーズ。音楽性も楽曲もさらに充実していきます。この辺りがこのバンドの面白いところですね。

時代の波に飲み込まれながらも進化していったバーズって、不思議な運と実力を持ったバンドだなと思ってしまいます。

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