見出し画像

【U.K.】(1978) スーパーメンバーが結集した70年代プログレの最終ランナー

寒くなりましたね〜。慌ただしい年の瀬には私はプログレッシブ・ロックを聴きたくなります。ロマンチックに浸っていたいのです(^^)
今回は70年代終盤に突如として英国から登場したスーパーバンドを取り上げます。

時はプログレ冬の時代。腕利きばかりが集まって、プログレの底力を見せつけたこのU.K.のデビュー作。その名の如く大英帝国の名を背負った、壮麗な美しさにひれ伏すこと間違いなしの名盤です(^^)

U.K.はプログレの道を歩んできたメンバー4人によるスーパーバンド。これが半端ない経歴の凄腕4人です。

ブリティッシュロック界の渡り鳥とも呼ばれるジョン・ウェットン(Vo, B)、元カーヴド・エアなど参加の天才美青年エディ・ジョブソン(key, vn)、元ソフト・マシーンなどのアラン・ホールズワース(G)、元イエス、キング・クリムゾンのビル・ブラッフォード(Dr)。

特にジョン・ウェットンという人は恐ろしい程のキャリアの持ち主です。
モーガル・スラッシュというサイケ寄りのバンドに始まり、ファミリー、キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック、ユーライア・ヒープ、後にエイジア、ウィッシュボーン・アッシュにも参加。
まさにブリティッシュロックの生き字引でした…(2017年に他界)。

左からウェットン、ホールズワース、
ブラッフォード、ジョブソン

U.K.の中心はウェットンとジョブソンです。二人の接点はおそらくロキシー・ミュージックのライブ盤【ビバ!ロキシー・ミュージック】(75年)での共演だったのだと思います。

ただし始めはウェットン、ブラッフォードがリック・ウェイクマンを誘ったことから出発したようです。しかしこれは頓挫。
そこでジョブソンに要請し、ブラッフォードが自分のソロ作品に参加していたホールズワースに声を掛けて結成しています。

パンクロック全盛期に登場したこのプログレスーパーバンドのデビュー作。その名に恥じない立派な内容です!
1978年という時代に相応しい、価値あるプログレの音を披露していますね。

まず耳を奪うのが、鮮やかなシンセサイザーの音色!
アレンジの軸となるエディ・ジョブソンは、スペイシーで広がりのある音や華麗なフレージングで魅了。得意のエレクトリック・バイオリンも駆使してまさに縦横無尽の大活躍です。
当時22歳。クラシック・コンプレックスに囚われない彼の新しい才能がU.K.サウンドの核となっています。

またウェットン&ジョブソンが書く曲は、抒情性豊かで歌モノとしての魅力も発揮。
そこにブラッフォード&ホールズワースのジャズフュージョン的な即興が融合した本作は二つの要素を纏め上げた奇跡の1枚ではないかと思いますね。

英米での評価はいま一つですが、プログレ好きな日本で人気が高いのも頷けます〜。

ちなみに本作は8曲の収録ですが、厳密には
A-①②③、A-④、B-①②、B-③、B-④の計5つの組曲が収録、と捉えた方が聴きやすいと思います。私自身が戸惑った経験があるので💦


本作の邦題が【憂国の四士】というのがイイですね〜。当時の音楽シーンを憂いた四人がプログレ復権のために立ち上がった!と映ったのでしょうか。彼等にそれ程の気概があったかは分かりませんが、私はこの邦題好きです。インナースリーブ写真。
ポリドール・レコード配給の米国盤。英国はE.G.レコード。レーベルのロゴは安直にイギリスの地形をデザインしたのでしょうか。ダサいなぁ…
インナースリーブ裏も淋しいデザイン。


Side-A
① "In the Dead of Night" 5:38
本作の価値を示す傑作ナンバーです。
ジョブソンのシンセリフに、手数の多いフィルで切り込むブラッフォード。
切迫したメロディを甘いボイスで聴かせるウェットン。力強くも洗練された完璧なプログレサウンドです!
曲のメインは7拍の変拍子。中盤のホールズワースの流麗なギターソロも光り、文句なしの楽曲展開。何度聴いてもシビレますね〜。
この後、静かに幻想世界を漂うA-②、再び主題に戻っていくA-③へと繋がり、長さ13分の組曲構成となっています。

② "By the Light of Day" 4:32

③ "Presto Vivace and Reprise" 2:58

④ "Thirty Years" 8:05
淡くスペイシーなシンセの音像に、アコースティックギターの調べが彩るイントロ。
ウェットンが歌うメロディは抒情的で美しくトロケそうです。
後半は即興パートへ。ジョブソンとホールズワースのフュージョン的なソロが展開。


Side-B
① "Alaska" 4:45

② "Time to Kill" 4:55
前曲はジョブソンの宇宙的シンセのパート。そこからバンドアンサンブルが入り、ウェットンの歌い出しからこの曲(らしい)。
ポップなメロディは後のエイジアぽいかも。後半は変拍子の中、ジョブソンのエレクトリックバイオリンの独壇場〜。


③ "Nevermore" 8:09
最後2曲はホールズワース、ブラッフォードが曲作りに加わったジャズフュージョン寄りのサウンドです。こうして聴いていると、フュージョンもプログレも違いが無くなってきたのがこの時代だったのかもしれませんね。
聞き所は歌より即興演奏。ジョブソンの七色の音を駆使したシンセ、ホールズワースのジャズスケールの速弾き。共にクロスオーバーな雰囲気を盛り上げています。


④ "Mental Medication" 7:24


ツアー終了後、ビル・ブラッフォードとアラン・ホールズワースは脱退。
楽曲の質に重きを置く他の2人とは、方向性の違いが明らかだったのでしょう。
その後はトリオ編成になるU.K.ですが、オリジナルの4人が火花を散らした1枚きりの本作にはプログレ独特の風格があったなぁと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?