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クライストチャーチ行きの機内にて

カンタベリー。
ニュージーランドのカンタベリー。

ラグビーギアのトップブランド(自分はまだそう思っている)の名前にもなっている場所は自分にとって昔からのずっと憧れ、世界一ラグビーが盛んな地域だ。
今日、初めてその場所を訪れる。


学生時代、そして最近再び、南半球最強クラブの地位を取り戻しているクルセイダーズとその選手達。アンドリューマーテンズ、アーロンメイジャー、リッチーマコウ、ワイアットクロケット、アンドリューエリス、そしてダンカーター。
1人1人に特別な思い入れがあるわけではないが、ただただ彼らは間違いなく世界一のプレイヤーであり、遠すぎるお手本だった。
クルセイダーズの本拠地、そしてカンタベリーの中心地であるクライストチャーチにはいつか、でも必ず行きたいと思っていた。


2005年に2011年ラグビーワールドカップの開催国がニュージーランドに決まった。立候補していた日本は敗れ、当時、日本協会と招致委員会の会長だった森元首相は欧州の各協会に対してキレた。それが今年のワールドカップ日本開催に繋がっている。(らしい)
少し、話が逸れるが、森さんは比較的選手側に寄り添う人だと思っている。
色々批判はある人だ。だけどあの人は選手に対してのリスペクトがある。いつかは忘れたけど、花園で選手に対してのスピーチをする時、用意された壇に上がらずグラウンド上で選手に語りかけた。そして、そのスピーチは短く、ただ選手達を労っただけだった。ただのラグビー好きの爺さんの感想でしかなかった。


話を戻すと、2011年ワールドカップのニュージーランド開催が決まり、その頃の自分は「28歳で結婚して新婚旅行でニュージーランドに行ってワールドカップを観たいな」という朧気な人生設計を立てた。
来たる2011年、自分は結婚もせず、当時、彼女もいなかった。あろうことか会社の海外研修で1年間滞在したメキシコのローカルクラブで久しぶりにラグビーをする日々を送っていた。まあ、それなりに充実した日々ではあった。


そんな中、とあるニュースをインターネットで知る。
2011年2月22日、クライストチャーチを大地震が襲ったのだ。
実はずっと憧れていたものの、クルセイダーズとカンタベリー、そしてラグビーに関すること以外はクライストチャーチという街についてあまりよく知らなかった。
それでもクライストチャーチという名前の街で大聖堂が崩壊したという事がその地域や住民の方へ与えたインパクトは相当なものだということは十分に理解できた。
そしてほどなくして、日本では東日本大震災が発生した。クライストチャーチの地震とそれからの復興は他人事ではなかった。

ニュージーランドはその地震に屈せず、自国開催のワールドカップを地震でダメージを受けた当時のクライストチャーチのスタジアム以外、ほぼ計画通り開催した。休暇先から急遽招集した4番手スタンドオフの右足のおかげで久しぶりに優勝することにより、国のアイデンティティを守った。
日本代表は2007年大会からの積み増しが出来ず、カナダと引き分けることしかできなかった。2011年はニュージーランド開催でよかったのだ。


今年、ついに日本でワールドカップが開催される。東日本大震災で大きな被害を受けた釜石市にもスタジアムが完成し、何試合か行われる予定。2015年のワールドカップで日本代表は奇跡を起こしたが、その後のブームを一過性のものにしてしまった。日本のラグビー界にとって人気回復の最後のチャンスだ。


自分はというと、訳あって日本ではなくオーストラリアで暮らしている。
皮肉と言えば皮肉。でもそのおかげで今日、ようやくクライストチャーチに行けるのだった。新婚旅行ではないが妻と一緒だ。予定より8年遅れた。ワールドカップもやっていない。だけど、クルセイダーズは観れる。ワールドカップ後にクボタに加入するライアンクロッティのプレーが観れる。
そしてクライストチャーチの復興がどのようなものかを見てきたい。
また、今年クライストチャーチで再び街のアイデンティティを揺るがす痛ましい事件があった。その場所にも行ってこようと思う。


クライストチャーチの天気予報は晴れ。少し寒いようだ。それはそれでラグビーをするにはいいのかもしれない。

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