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人工知能年表 -人類とAIの、これまでとこれからの歩み-

人工知能年表とは?

 歴史的な技術の発展と共に進んできた人工知能研究について、人類とAIのこれまでの歩み。最新の研究。そしてこれからの未来を俯瞰するためにわかりやすくまとめたものです。

 「人工知能の成り立ち」と「現在の進捗」を改めて眺める際、初心者の方から簡単に振り返りたい専門家の方まで使いやすい年表を目指しています。
(※修正箇所を発見された方はコメントにてご指摘下さい)

 本記事執筆のために英語資料を含めてAI関連史を調べてみると、意外にもAI全史を詳細にまとめた記事は少なかったです。(最も詳細なWikipediaの「人工知能の歴史」ページにも最新の記述が抜けていたため、いくつか追記を行ったほど)

 AI分野はあまりにも発展が早すぎるのでその歴史を追い続けるのは難しいのかもしれません。この記事がその一助となれば何よりです。

 それでは以下より、「人工知能年表 -人類とAIの、これまでとこれからの歩み-」をどうぞ。

前史

紀元前15世紀頃 ギリシャ神話『ピグマリオンの彫像ガラテア』
紀元前15世紀頃 ギリシャ神話『青銅の自動人形タロス』
16世紀 パラケルスス『人造人間ホムンクルス』
1818年 メアリー・シェリー『フランケンシュタイン』
1920年 カレル・チャペック『R.U.R. -ロッサム万能ロボット会社-』
1950年 アイザック・アシモフ『われはロボット』
1965年 ロバート・A・ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』
1993年 エイミー・トムスン『ヴァーチャル・ガール』
etc…
概説
 
神話・伝説・物語上の「人工的な知性」が空想された時代です。
 初期には神秘的な力や生物学的な仕組みで想定されていました。コンピューター誕生以降の1950年代には人工機械の想定が生まれ、1990年代からは「人工知能=コンピューター」ではないソフトウェアとしてのAIが描かれるようになってきています。

個人製作期

紀元前9世紀 周の偃師『千変万化の人形』
12世紀 アラヴ人博学者『アル=ジャザリーのオートマタ』
18世紀 日本の人形細工師『茶運び人形』
etc…
概説
 
個人製作による原初的な機械工学は紀元前から発達しており、農民を含め歯車機械の製作は世界各地で古くから行われていました。真偽に差はあれど「動く人形」を製作した逸話も数多く残されています。18世紀江戸時代の『茶運び人形』については現代にも再現可能な図面が遺されています。

計算機の発達

紀元前24世紀頃 古代バビロニア『そろばん / アバカス』
紀元前3-1世紀頃 古代ギリシャ『アンティキティラ島の歯車機械』
1206年 アル=ジャザリ『城時計』
1642年 パスカル『機械式計算機』
1672年 ライプニッツ『歯車機械式計算機』
1945年 フォン・ノイマン他『ノイマン型コンピュータ草稿』
1946年 アメリカ陸軍『最初期電子計算機 / ENIAC』
1982年 Apple『MacintoshPC / MAC』
1994年 IBM『最初のスマートフォン / Simon』
2007年 Apple『iPhone』
2011年 D-Wave Systems(カナダ)『最初の量子コンピュータ / D-Wave』
概説
 
計算尺などの手計算道具、手動の複雑な計算機、自動計算機、電子計算機、卓上計算機(PC)の順に計算機は進化してきました。
 文明規模の工学の発展を背景に高度化と小型化が進み、1950年代には初期のAI研究に必要な水準の計算機が普及しました。

第一次AIブーム

1943年 マカロック・ピッツモデルとして初期の形式ニューロン研究を発表
(ニューラルネットワーク研究の発祥)
1956年 ジョン・マッカーシーが「Artificial Intelligence(人工知能)」の語をダートマス会議にて提案、新分野として成立
1958年 フランク・ローゼンブラットが「パーセプトロン」を開発
1966年 最初の対話型チャットボットELIZA / イライザがリリース、人間側が単純な応答から人間味を認識するイライザ効果が話題に
1969年 マービン・ミンスキーとシーモア・パパートが単純パーセプトロンは線形分離不可能(ルールやゴールが曖昧)なパターンを識別できない問題を提示
概説
 
1956年に「AI」分野が正式に誕生します。
 2023年現在までにAIブームは三度訪れており、第一次AIブーム(1950年代-60年代)は電子計算機(コンピュータ)の実現により決められたパズルや迷路を解く「推論」と「探索」を中心に研究が始まりました。
 第一次AIブームはルールとゴールが厳密に決まっていない(=線形分離不可能)なパターンを解決できないと判明し、終焉します。

第二次AIブーム

1974年 代表的なエキスパートシステム「MYCIN」の完成
1977年 エドワード・ファイゲンバウムが「知識工学」を提唱
1985年 ジェフリー・ヒントンらが「ボルツマンマシン」を提唱
(後に「制限ボルツマンマシン」としてディープラーニングに採用)
1986年 ジェフリー・ヒントンらが「誤差逆伝播法 / バックプロパゲーション」を再発見(後にディープラーニングに採用)
1988年 「モラベックスのパラドックス」が発見される
1991年 ゼップ・ホッフライターが勾配消失問題を指摘
1995年 ダグラス・レネットが条件付与問題を指摘
概説
 
第二次AIブーム(1970年代-80年代)では「専門家の知識を代行する」知識推論型AIが主流となりました。
 エキスパートシステム(ES)と呼ばれる、通常のプログラムでは困難な膨大な情報量に対し専門的な判断を下すAIシステムが生まれていきます。
 しかし理論面での「正誤の差が学習できないほど小さくなる」勾配消失問題、「全体で見れば間違いなのに局所的にだけ正しい」局所最適解問題、そして「すべての条件を人の手で入力することはできない」という条件付与問題により膨大な「知識」の曖昧さ、矛盾、データ入力の困難さが限界となり終焉しました。

第三次AIブーム(現在)

2005年 レイ・カーツワイルが2045年に技術的特異点 / シンギュラリティが到来すると著作にて発表
2006年 ジェフリー・ヒントンがオートエンコーダによる「ディープラーニング」を発明
2010年 「ビッグデータ」という用語の提唱
2012年 Googleがディープラーニングによる猫画像認識に成功、第三次AIブームの名称が広まる
2016年 Googleの子会社DeepMindのAlphaGoが初めてプロ囲碁棋士に勝利
2020年 自然言語処理モデルである「GPT-3」が公開される
2022年 DALL-E、Midjourney、Stable Diffusion、NovelAIといった画像生成AIが相次いでリリースされる
2022年11月 対話型生成AIの「ChatGPT」がOpenAIより公開される
2023年2月 Microsoftが検索エンジンの「Bing」にAIチャット機能を搭載し、世界初の対話型AIを搭載する検索エンジンとなる
概説
 
第三次AIブーム(2006年-現在)はディープラーニングの時代です。
 オートエンコーダ技術に加え、制限ボルツマンマシンや誤差逆伝播法といった第二次以前の発見、コンピューター性能の継続的向上によってディープラーニングは「AI自身がデータを入力できる」力を手に入れました。
 それによりAIは第三次にてようやく「期待されていた(限界を迎え失望されない)水準に到達した」可能性があります。
 囲碁分野のAlphaGo、イラスト分野のMidjourney、対話分野のChatGPTなどは「人間と同じ分野で多くの人間よりも優秀な結果を出す」ことが可能になりました。また、イラスト分野でAIがこれほどの成果を出すのはもっと先のことになるだろうという予測が一般的でした。

人類とAI、これからの歩み

※AIに関する「起きるかもしれない」予測の例
2020年代 第三次AIブームが何らかの限界により終焉
2030年頃 新たな発見により第四次AIブームが開始
2030年頃 宇宙開発にAIによる完全自動操縦が導入される
2045年  AIが人間を超える「シンギュラリティ / 技術的特異点」が到来
2050年頃 知性あるAIの人権に関して議論が始まる
2050年-2100年頃 AIに人間同様の身体を与える技術の開発
2100年-2200年頃 人間の意識のデータ化が実現し、人間とAIの境界が曖昧になる
2100年頃-2200年頃 AIによる理論の進歩に対し物理的な資源が不足し、宇宙開発が本格化
概説
 
様々なSF作品でも描かれてきたこれらの予測のほとんどは未来のいつかで実現する可能性が高いものの、時期については早くも遅くもなり得ます。
 「現在の第三次AIブームがどこかで限界を迎えるのか、それともこのままシンギュラリティを迎えるのか?」という点が時期を大きく左右します。
 「人間が作り出した人間以上の知性」であるシンギュラリティ以降のAIが(ただし今もまだ、それが永遠に完成しない可能性もゼロではない)どのような存在となっていくかはわかりません。

 「ドラえもん」のような友人となるか、「ターミネーター」のような人類の敵となるのでしょうか?
とはいえAIも人間の在り方と同じく一つ一つ異なるモデルを持つため、もしかすると一概にどちらと言えるものではないのかもしれません。

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